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ショートショート4月~

ぶつ、ぶつ、ぶつ。

作者: たかさば

僕は今日も、指先でつぶやく。


スマホ画面に向かって指でつぶやく。


ぶつ、ぶつ、ぶつ。


ぶつ、ぶつ、ぶつ。


ぶつ、ぶつ、ぶつ。


今日も、かなりつぶやいた。


指先が疲れたな。

ああ、爪を切っておかないと。


パチン、パチン、パチン。


無言で爪を切っていく。


指先でつぶやくたびに、スマホ画面が、カツ、カツ、カツと鳴っていたけれど、それは今日まで。

無音で、心おきなく、つぶやける、この幸せ。


ぶつ、ぶつ、ぶつ。


再び指先が騒ぎ出す。




朝から晩まで、


ぶつ、ぶつ、ぶつ。


夜中の三時に、


ぶつ、ぶつ、ぶつ。


朝一番に、


ぶつ、ぶつ、ぶつ。


夢の中でも、


ぶつ、ぶつ、ぶつ。


夢から覚めたら、夢の中の出来事を、


ぶつ、ぶつ、ぶつ。




おしゃべりな指先とは裏腹に、僕の口は閉じられたまま。


そういえば、食事をしてない。


開いた口の中に、焼き立てパンを放り込む。


もぐ、もぐ、もぐ。


ぶつ、ぶつ、ぶつ。


もぐ、もぐ、もぐ。


ぶつ、ぶつ、ぶつ。




大丈夫、僕の口は、ちゃんと役目をこなしている。


食べ物を、食べている。




ぶつ、ぶつ、ぶつ。


ぶつ、ぶつ、ぶつ。


おしゃべりな指先とは裏腹に、僕の口は閉じられたまま。


そういえば、声を出していない。


「ぶつ、ぶつ、ぶつ。」


大丈夫、僕の声は、ちゃんと出る。




ぶつ、ぶつ、ぶつ。


強気な僕の指先は、かなりおしゃべり。


ぶつ、ぶつ、ぶつ。


ぶつ、ぶつ、ぶつ。




僕の口は、今日、ぶつ、ぶつ、ぶつ、と、呟いた。


恥ずかしがり屋の僕に、ちょうどいい。


六文字くらいで、ちょうどいい。


明日も同じだけ、呟けばいい。




ぶつ、ぶつ、ぶつ。


ぶつ、ぶつ、ぶつ。


こんなにコミュニケーションは取れているというのに。


なぜか、胸騒ぎがする。


ぶつ、ぶつ、ぶつ。


不安を指で、つぶいやいた。


瞬く間に返ってくる、優しい言葉。


ぶつ、ぶつ、ぶつ。


感謝の気持ちを込めて、


ぶつ、ぶつ、ぶつ。


大丈夫だ。


ぶつ、ぶつ、ぶつ。


僕はここに、存在している。


ぶつ、ぶつ、ぶつ。


確かにスマホの中に、存在している。


ぶつぶつぶつ。

ぶつぶつぶつ。

ぶつぶつぶつ。


ぶつぶつぶつ。


ぶつ、ぶつ、ぶつ。


あ。


充電、切れた。





僕の指は、いきなり、静かになった。


「静寂の奏、今ここに、極まれり。」


代わりに僕の口が、騒ぎ出した。


「ああそうだ、新聞縛らないと。」

「ヤバイ、歯磨き粉ないんだった。」

「散歩はどこに行こうかな!」

「げげ、靴下穴開いてんじゃん!」

「ちょ!このパソコン、おもっ!!!」

「はーれたそらーっ!!」

「ひゃっほうひゃっほうひゃっほほーい」


今からしばらく、独り言の宴が開かれる。

誰もいないこの部屋で、僕一人の宴は開かれた。



僕は結局、呟かずには、いられない。


充電完了まであとわずか。


僕は自分の口で、思うまま、気ままに、呟き続ける。


返事のない呟きを、たった一人で、ぶつぶつぶつ。


ぶつぶつぶつ。


ぶつぶつぶつ…



ついってると、たまにおかしなテンションになりがちですな(´▽`;)ゞ

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