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出立と私

1人でココにいてもしかたない。

3日程泣いたりぼんやりして私はやっとここから動く決意をした。

生まれて12年、愛着しかないこの家から…出る!


色んな思い出のあるこの家。

木造建てのボロ家は暴風時なんかは隙間風が酷かったな。

そんなボロな家でも笑ったり泣いたり燥いだり、楽しい思い出沢山だ。


あと、謎の勉強をいっぱいしたなぁ。

私は本当は裏庭に作っていた畑のお手伝いの仕方とか、

薪割りの仕方とかそーゆーのを学びたかったのに、

母ミレーは絶対に過度な力仕事をさせてくれなかった。


その変わり色んな事を学ばされた。

綺麗にご飯を食べる方法とか

目上の人への挨拶の仕方とか

ダンスのしかたとか。。

もうほんとこんなの勉強してどーする?

って事を沢山教えられた。

今生きていく上で全く役に立たないそれを

不貞腐れながら学ぶ私に、よく母は笑いながら

「いつか…使うかもしれないから…ね?」と

そう決まり文句のように言って教えていった。


こんな事になるんなら

こんな早くに1人になるんなら

サバイバル方法でも教えて欲しかった。

生きる術すらわからない。

それさえ知ってればこの場所にずっといることだって可能だったのに。


母をなんとか…そりゃまあ大変努力をして

家の後ろに埋葬した。

力仕事なんてしてなかったから

とてつもない作業だった。


母を埋葬するにあたり

気がついた、、と言うかここ数ヶ月病気の母の看病をしてて、

ほらね?季節感とかあんまり気にしてなかったのだけど…うん、ここはアレね。


「まごうことなき雪山ですね…」


もうね?びっくりするくらいの雪。

そしてどー見ても山。人の気配ゼロ!


知ってはねいたんです。そりゃ住んでいますから。

でもね?…ほんと今まで生活って生活を母に任せて私はお手伝い程度だったからね!

あんまり深く考えてなかったんだけど、今は早急に考えないといけない気がする。


食料は残り3日分くらい。

干し肉とか根菜類がちょびっと。

母がこの雪山でどーやって食べ物を仕入れて来てたのかは謎。。

ここに籠城してもいいけど、食べ物がなくなったら直ぐに私も召されてしまいそう。

死ぬのは別に怖くはないんだけども

私の生を気にして亡くなった母に申し訳ないので、できる限りの奮闘をしたい所ではある。


「一かバチかに掛けるしかないかぁ」


独り言ちならが私は出立の支度をする。

家にある服を着込むだけきこみ

私はモコモコになりながらカバンにいろんな物を詰め込んで、数日天候を伺って家をでた。


―――――――

―――


雪山をこんな装備で歩いていていいのだろうか。

いや、ダメなんだろうな…


右も左もわからぬまま私は下山を始めた。

吹雪ではない今日が下山のチャンスだと思う。

空は灰色だけどバラバラと雪が降ってるけども!昨日よりはマシだ。

昨日はゴーゴーの吹雪だったしね。


灰色の空からはゆっくりと雪が降る。

見上げるとそれは幻想的で綺麗なんだけど

かれこれ数時間歩いた私の足元は雪が侵入し

冷たい水となり足先の感覚なんてとうになくなっていて

景色を楽しんでる場合じゃなかった。


家のあった場所から下だってきてるはずなのに

全くと言っていいほど景色は変わらない。

葉の落ちた木々が寂しげに佇み、その合間に白い雪が落ちる。そんな光景が絶え間なく続いている。

もう何時間歩いていているんだろうか。

本当は立ち止まって休憩したいのだが

立ち止まったら最後、動けなくなりそうなのだ。

足先の感覚がなくなり、肩に積もった雪がとけ服が濡れとても寒い。

防寒服なんてなかったから着込むことで

寒さ対策としたけれど、服が水を吸い込んでずっしりと重くなってきている。

足を前にだして進むだけで、体力がどんどん消費されているのがわかる。


命の万策が尽きるのも時間の問題だ。


希望が乏しいなぁ…なんて考えていたら

目の端に切りだった崖が見えた。

あそこまで行けば私が今どの辺を歩いているかわかるかも!

そう思い、足を踏み出したその時だった。


ガキン!!そんな音がしたと思ったら

私の足は鉄製の罠に掛かり

「あぁああああああ!!!!」

余りの痛みに絶叫していた。


なんで?なんでこんな所に罠?

仕掛けたのなら回収してけよ!!!

恐らく夏頃に兎でも捕まえようと狩人が仕掛けたのを回収し損ねたのだろう。にしても…

なんでこんなタイミングで罠にかかるかな私!


痛みを堪えて確認すると、

白い雪を真っ赤に染めながら

鉄の刃が私の足首にくい込んでいた。

渾身の力を込めて刃をを引っ張り

罠からは脱出出来たが、この足ではもう…


痛みを堪えて立ち上がり

ヨロヨロと足を引きずりながら歩く。

足首から血が流れ出るのも気にしていられない。1歩でも…1歩でも前に…

雪道を真っ赤に染めながら私は渾身の力を振り絞り歩いていった。


しかし、体力の限界を迎えていた私に

足の怪我がトドメを刺した。

暫く歩くと足がもつれ…私は無様に崩れ落ちる。


あーあ…ここまでか…。


私は雪の上に大の字に寝転ぶと

ケラケラと笑いだした。

「ごめんね?母さん、私もうダメみたい」

笑いながらそう告げて私は静かに目を閉じた。

足首から痛みがあったがそれも気にならなくなってきた。体の冷たさももう感じない。


あぁ、私は死ぬのだなと…そう、感じた。


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