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楽しんじゃった私

この場を適度に打開すべく、

私は鉄剣を握りしめるとマルコル小隊長を見据えた。


力は抑えて、人並みの力で。

力は抑えて、人並みの力で。


よし、大丈夫!、、なはず!!


「では、参ります」

私は静かにそう言うとマルコル小隊長と対峙し

右へ踏み込み振り下ろした。

カン!!

と音がして周りが息を飲む。


ふぃー、壊れなかった!

この力でいいのかな?

ならば、左っ!


カン!!

小隊長が薄く笑ったのがわかった。

あ!これでいいんだ!あってるんだ!


カンカン!!

右っ左!

カンカンカンカン!!

右左っ右左っ!


カンカンカン

カンカンカン

カンカンカン

なんだかっ楽しくなってきた!

そうそう、こんな打ち合いがしたかった。

リズムよく鳴る音が心地いい



カンカンカンカンカンカン!!

カンカンカンカンカンカン!!

「くっ…」


ん?一瞬小隊長の声が聞こえたような?


カンカンカン

カンカンカンカンカンカンカンカンカン


その時、私は楽しくて楽しくて

冷静になって打ち合いのスピードを鑑みるとか

最初の一撃よりちょっと力が入ってるとか

スッポリ忘れて、リズムよく奏でる刃音に身を任せていた。


刃と刃が合わさる瞬間の

衝撃が気持ち良かった。

振り下ろす時の風にが

頬を掠めるその瞬間にゾクゾクした。

あぁ、皆はこれを味わう為に日々の鍛錬を怠らないのね…


恍惚のままに打ち合う私は…周りを全く見てなかった。


呆然と皆が私達を見ていたことを。

その剣速が、か弱い女の子が出せるスピードではなかった事を。

対峙じしている小隊長のこめかみから

大粒の汗が流れていた事を。


私は確認を忘れて、只々楽しんでいたのだ。


「おい!来てやったぞ!!洗濯補助員のアルカードだっっ!」


無遠慮な声が鳴り響く、

その声を聞いてハッとする。

やっと大切な事を…思い出した。


洗濯しなくちゃ!!!!


私は少し腰を落とし強めに左の止めの一撃を入れると、「スッキリしました!小隊長ありがとうございました!」そう言ってぺこりと礼をして

「アルカード様っお休みの所すみません!」

そう言ってバタバタとその場を離れたのだった。


だから知る由もなかったのだ。

私がいなくなった後の会話など。

今日の打ち合いが初めから私の為に用意されていたなんて!



***********************************

*****************

******



スノーレイが立ち去るのを確認し、

「小隊長…ど、、どうでした?」

皆が息を飲む中、口火を切ったのはライコットだった。

深く息を吸い、呼吸を整えながらマルコル小隊長はゆっくりと語り出す。

「…初撃は、多分少し力を抜いて掛かった様に思う。…木刀での一撃よりは軽いものだった」

「木刀の一撃、、重かったですよ。なんたって粉砕されましたからね」

まだ少し手が痺れてますと空笑いながらライコットが言う。

「力を少し抜いて、2回打ち込んでー楽しくなったのだろうな。スピードがどんどん早くなっていった。」

「早くて目で追うの大変でしたよ。」

「それからは私も防戦一方だ。気を抜いたら、ついていけなくなった打撃が腕に入る…そう思って必死に打ち返した。まさかこれ程とは思わなかった」

「…俺もこんな凄いなんて…ちょっとした提案だったんですが…」


そうこの茶番を企画したのはライコットだった。飛んできた剣を掴みとったこと、

怪我人などの発見が異様に早いこと。

この子はとてもいい目を持っているのではないか?そう思ったのだ。

だから、自分と打ち合わせて、速度を調節し、スノーはこんなにも早く打ち返せるんですよ!と見せるつもりだったのだ。

それなのに自分は一撃でリタイアとは…情けない。


「いや、ライコット。良くぞ見つけた。よもや剣聖になれるんではないかと思うような実力者だ。それがまさか飯を作って洗濯をしてたとはな…誰も思うまい。」

「剣聖ってそんな…おおげさな…?」

「いや、あの子はもう少し早く打ち抜く事も出来たはずだ。途中で水がさされなければー速度が上がり、私は打ち返せなくなっていただろうな。」

そんな、そんなに…?小隊長であるマルコルは若き実力者である。でなければ小隊長にはなれない、その彼がスノーが自分より強いと言っているのだ。

「我ら3番小隊が見つけた原石だ。洗濯係で終わらせてはならない。わかったな!」


「「「はい、小隊長!!」」」


「ライコット、お前は着いてこい。隊長の所へいく。」

「はっ、承知いたしました。」


まさかこんな事になるとは…ちょっとした提案が大事になりそうな、そんな予感がする。

しかし、ライコットは暖かい気持ちだった。

これからスノーに提案される事は彼女にとって良いことであるのは間違いないから。


孤児である彼女の未来が開けますように…


ライコットはそう思いながら

隊長へ大袈裟に報告するんだと息巻いていた。

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