一
「どうしたものだろうか」
「俺には理解できんな、男が男を追っかけるなんて」
「だからこそ困ってるんだろう」
局長室で胡坐をかき、茶菓子をつまみながら話しているのは、泣く子も黙る新選組局長近藤勇と、土方歳三。
血も涙も無い人斬りと言われるが、今はむしろ人間臭さを漂わせるしかめ面だ。
ふすまが軽く叩かれ、沖田です、という涼やかな声がした。
「総司か、入れ」
「何の話してるんです?」
「男色だ、男色!」
軽い口調で尋ねた沖田に、土方は吐き捨てるように言った。
近藤の方も、いかつい顔に苦渋をにじませている。
沖田は納得の表情を浮かべ、ああと呟いた。
「士道不覚悟にはなりませんしね」
「始末できんだろう」
「ふふ、土方さんは何でも始末ですねえ」
「んなこたァどーだっていい。問題はこれをどうするかだろ」
「欲が溜まってるんじゃないか」
「は?妾がいるだろ」
「俺達幹部はそうだ。だが平隊士には、そんな余裕だってないだろう」
いい齢になって、自分の欲求をコントロールできないとは。
しかもそれを、同性にぶつけるからたちが悪い。
近藤は眉をしかめた。
「いい考えがありますよ」
沖田は相変わらず、快活である。
そう言う事に淡白だ、と皆から囁かれているが、それは事実だ。
島原にも滅多に行かない。
そんな沖田のいい考えと言うのは、あまり信用できたものでは無かった。
「この屯所に女を住まわせたらいいんです」
「はあ?」
突拍子も無い案に、近藤と土方は声をそろえた。