第二話
遡って十時三十分 ロモーシ町
ロモーシ町は、カーマン宇宙港の北、電車で四十分ぐらいに位置している町である。
カーマンでは大きな方で、三十万人程度の人口である。
そのロモーシ町の裏通りの廃屋ビルの地下室にマッカル人が三十四人集まっていた。そして、最後の三十五人目が来た。
「遅いぞ」
リーダーのロンが言った。
「すみません」
「全員集まったな」
人数を数え始める。
「昨日、各々の役割を話した。A班の二十五人は車で宇宙港へ行き、決められた各所に爆弾を仕掛けてから事を起こす。B班の十人は、アーマードバトルスーツで所定の場所へ行き、合図があったら事を起こす」
ロンはニヤリとして言った。メンバーは全員相槌を打つ。
「よもや自分の役割を忘れた奴はいないな」
ロンは、ギロリと一人一人の目を見て行く。
「お前ら、わかっているな。これは我々マッカル人から富を奪う地球人と、その仲間にお灸をすえる為にするんだ。悪は奴らだ」
「おー!」
「俺たちは正義だ」
「おー!」
「怖気づいた奴はいるかー」
「ブー!」
「いくぞー」
「おー!」
「お前らいくぞー」
「おー!」
A班は武器や爆弾の入ったスーツケースを大型バスに積み込む。B班はマイクロバスに乗り込むとさっさと出発する。
マッカル人達は、宇宙港を襲撃し、定期便の宇宙船強奪を企てていた。その計画は次の通りだ。
十一時に、A班は武器や爆弾を積み込み大型バスでロモーシを出発。B班はアーマードバトルスーツでロモーシ外れの廃工場を出発。
十三時に、A班は宇宙港ターミナルビルに到着、ターミナルビルに爆弾を設置開始。
十四時に、A班ターミナルビルジャック開始。B班ターミナル警備のアーマードバトルスーツに攻撃を開始。
十四時十分に、宇宙港全体を制圧。
十四時三十分に、到着する定期便を奪取、宇宙へ逃走後、宇宙港を破壊。
大型バスに武器や爆弾を詰め込むとA班は出発する。一方、B班はロモーシの外れにある廃工場へ到着していた。
その廃工場は超大型の農業用ロボットの生産工場だった為、大きなスペースがあった。そのスペースに、体長十八メートル程度の人型ロボットが十機置いてあった。そのロボットこそ人間が搭乗し操作する戦闘ロボット、アーマードバトルスーツである。
マッカル人達のアーマードバトルスーツは、パワー重視のマッカル人用でドドリアンと言う。
「どうした。準備終わったのか?」
B班の班長ギャギがボーとしているメンバーの一人、ランバに聞いた。
「いいえ、ですが、宇宙港を本当に爆破していいのかと」
ギャギはランバを殴る。
「ここに来て怖気づいたか!」
「マッカル人の富をだまし取る、地球人を殺すのは何とも思いません。でも我々の同胞のマッカル人まで巻き添えになる」
宇宙港で働く職員は地球人より、マッカル人の方が圧倒的に多い。ランバの言い分ももっともである。
「少々の犠牲は止むを得ない」
「ですが、地球人に鉄槌を下すだけなら、他の施設を狙えば良いじゃないですか」
「リーダーを信じろ。考えるな。俺達の未来はロンの導く先にあるんだ」
カーマンは、先住のマッカル人によって開拓された惑星である。しかし、工業も経済も開発が遅れ、貧しい惑星だった。
そこに新風を入れたのは地球人だった。
地球人はまず、豊作で余った農作物を購入することから始めた。
マッカル人は、どうせ腐らせるぐらいならと思い、地球人に売った。
地球人は買った農作物を他の惑星で売り、お金に換えた。そのお金で他の惑星で売れそうな農作物を作ってもらえるように、農家のマッカル人に依頼し、作ってもらう。それをまた、他の惑星に売りに出して……
これを繰り返し、地球人は先住のマッカル人から信頼を受け富を築いた。一方、先住マッカル人にとっても、カーマン内で売るよりも利益が出る。地球人がカーマンのインフラ開発も進めてくれるので、当然地球人との取引を歓迎した。
そこに現れたのが、移住組のマッカル人だ。
近くの惑星の戦争で傭兵として雇われていたが、終戦と同時にお払い箱になったのだ。
徐々にインフラ整備が進み、将来性があるとされているが、まだ貧乏惑星にすぎない。その貧乏惑星に大勢のマッカル人が移住してきた。初めは受け入れていたが、キリがない上に、元より余裕もそれほどなかった。
その上、元軍人の能力を利用して犯罪に手を染める者まで現れ始めた。先住組にとって、移住組は疎ましい存在に変わっていく。それを感じ取った移住組は地球人に八つ当たりし始めた。そのとばっちりで、地球人と先住組の間までキグシャクし始める。
ここで地球人に去られると『折角発展しかけたカーマンがまた元の貧乏惑星になりかねない』と感じた先住組がいた。その為、新たな移住の受け入れを拒否したり、移住組の一部を惑星外追放したりし始めた。
この三十五人は、その移住組のマッカル人であった。
ランバは言い含められて、ドドリアンに乗り込んだ。
再び十三時 宇宙港バスターミナル
マッカル人達A班は、宇宙港バスターミナルに到着した。メンバーはぞくぞくと大型バスから大きなスーツケースを持って降りる。そして、ターミナルビルへと入っていく。
リーダーのロンが指を鳴らす。
「ようし。はじめるぞ」
A班はターミナルビル内に入っていくと自分の役割を果たす為に散らばって行く。
バスターミナルからの入口傍のトイレに一人のメンバーが入っていく。大便用の個室に入るとスーツケースを開ける。スーツケースの中には六つのビニール袋と、機関銃一丁と拳銃三丁入っていた。ビニール袋を取りだすと、目立たない場所に置いて、スーツケースを閉じる。
ビニール袋には遠隔操作で爆発させる事ができる爆弾が入っているのだ。
男はそのままトイレを出て行く。
十三時三十五分 ミーティングポイント
クッマイアはエルとエムと別れた後、ミーティングポイントでノートパソコンをインターネットにつないで調べ物をしていた。
にも関らず、マッカル人が一人入ってくる。
「姉ちゃん。いつまで占領しているんだよ。邪魔だどけ」
クッマイアは上目遣いで、マッカル人を見る。
「そのスーツケースの中にある爆弾を仕掛ける為にですか」
「なに」
マッカル人は懐から拳銃を取り出し構えようとする。しかし、クッマイアはそれよりも速く剣を取り出した。そして、マッカル人の胸を貫き、壁に縫い付ける。
「ば、ばかな。さっきまで丸腰だったはずなのに」
「ワザと急所を外しています。でも、少しでも動くと大量出血しますよ」
クッマイアはパソコンをシャットダウンする。
「貴様は何者だ」
「これでも魔術師です。そうですね~。今はクッマイアと名乗っています」
クッマイアはパソコンの電源が落ちたのを確認すると右手をパソコンに手を当てる。するとパソコンは消えてなくなる。
「パソコンが消えた」
マッカル人はそれを見て驚き言った。
「消えたわけじゃないですよ。しまっただけです」
「その魔術で剣をだしたのか」
クッマイアは、マッカル人が持ってきたスーツケースからビニール袋を二つ取り出す。さらにビニール袋から爆弾を取りだした。
するといつの間にか出した工具で、起爆装置を解除し始める。
「どうして俺達が爆弾を持っている事を知った」
「どうしても何も、私は危険を見破る特殊能力があるんです。なにぶん長生きしているといろいろありまして。これでも、あなたが想像できるよりも長い時を生きてますので」
クッマイアはあっさりと二つの爆弾の起爆装置を解除してしまった。
「俺をどうするつもりだ」
「それはあなた次第です。あなた達の目的、仲間の人数、設置予定の爆弾の数と位置。洗いざらい話してくれるなら助けてあげましょう」
「ふざけ……」
マッカル人が動いた為、傷口から血が噴き出す。
「無茶すると本当に死にますよ。科学的医療ではあなたは絶対に死にます。生きたければ、魔術による治療が必要ですが、治癒魔術が使える仲間でもいますか?」
マッカル人は絶望した表情になる。
「私の治癒魔法なら死なずに済みますが、どうしますか?」
「仲間を売るもんか!」
そう叫んだ所で傷口から血が噴き出す。口の端からも血が滴りだす。
「仕方ない、苦しみを長引かすのも可哀想ですね」
そう言うとクッマイアは躊躇なく剣を引き抜く。するとミーティングポイントは血の雨が降り、床は血の海になった。
「このままでは戦いづらい。姿を変えますか」
胸元が開いた黒いドレスを纏った雰囲気のある美女だったはずが、スーツ姿の若い男に姿が変わっていた。
「さて、鬼退治に行きますか」
十四時 管制室
ロンは五人の手下と管制室まで来ていた。管制室の入り口に、二人のウルクス人の警備員がいた。
ロンはサイレンサー付拳銃で二人の警備員を撃ち殺した。ウルクス人の肌の色は緑色であり、血の色も緑色であった。その緑色の血が床に広がる。
管制室の扉を開けると、一気にロンを含めた六人が入り込む。
「な、何者だ!」
サイレンサー付拳銃で声を出した職員をロンは撃ち殺した。そしてターミナルビル内放送用マイクのスイッチを切る。
「我々の許可なしに動くな。勝手に動いたら殺す。こいつのようにな」
ロンが言った。
管制室には、二人のマッカル人と四人のウルクス人がいた。その内一人のマッカル人がロンの凶弾で死んだ。
「警備室の方はどうだ」
携帯電話で連絡取っている男が、親指を立てて返事した。
「よし。予定通りだ。アーマードバトルスーツ部隊に合図だ」
別のメンバーが管制室の無線を使い、アーマードバトルスーツ班のギャギに連絡を入れた。
十四時 ターミナルビル三キロ北
警備のアーマードバトルスーツは、タルラントであった。手に十メートル程の巨大なライフル銃を持って、三機立っている。
タルラントはウルクス人用の機体だ。機動力、火力共にそこそこ、燃費が非常に良い為、警備などの任務に適している。
「所属不明の機体。ここから先はカーマン宇宙港だ。アーマードバトルスーツでの侵入は許可されていない。引き返されよ」
タルラントの一機が、宇宙港に近づくアーマードバトルスーツ、ドドリアン十機に警告した。
「どうします? 班長」
ランバがギャギに聞く。
「かまうこたねえ。そろそろ合図があるはずだ」
ギャギが歩くのを止めないので、仲間も止まらず歩き続ける。
「管制塔。不審なアーマードバトルスーツ十機が制止を聞かず、近づいてきます。発砲の許可をください」
警備兵の一人が管制塔に許可を無線で求める。しかし返事はなかった。
そこにギャギの元へ無線連絡が「大将からヤレってさ」と入る。
「野郎ども。ヤレ!」
装備は、ドドリアンよりタルラントの方が良かった。しかし管制塔の指示がなかったこと、三対十であること、奇襲であることが重なって、タルラントはあっさり全滅した。
ギャギは、倒したタルラントが持っていたライフルを拾う。
「野郎ども、いくぞ」
十機のドドリアンはターミナルへと入って行く。
十四時 待合ロビー
変な館内放送でハチベイが問い合わせる為に近くの窓口へ行こうとする。
「ターミナルビル内は危険です。外へお逃げなさい」
男姿のクッマイアが突然現れて言った。
「さっきは女だったのに、今は男になっているなんて、忙しいのね」
ミトは驚く様子もなく言った。
「さっきは女だったってどういう事ですか?」
カクが尋ねる。
「知り合いみたいだが何者なんだ。俺に気配を感じさせずにここまで近づくとは、ただもんじゃないだろ」
ハチベイが問い合わせに行くのを中断して聞いた。
「クッマイア様どうしてここに」
「同時に複数の質問をされても回答は一つずつしかできません。
忙しい理由は、このターミナルビルに爆弾が仕掛けられているから。
さっき女で今男なのは、私に変身能力があり、女より男の方が戦闘向きだから。
私がただ者じゃないのは、神官エルフのOGだから」
「え、それじゃあ、長老様じゃなかった、クッマイア様は女の子だったのー」
エルとエムが驚く。
「驚くところはそこじゃないだろ」
クッマイアが突っ込む。
ちなみに神官エルフは例外なく全員女である。だから性別不明のクッマイアの性別が初めて判明したことになる。
「なぜ、神官エルフのOGが私を助けるのです?」
ミトが尋ねた。ミトには、神官エルフがミトを助けることに違和感がある。
「神官エルフは、父上を助けても私を助けたりはしないはず」
「それについては、この危機を切り抜けてからお答えしましょう」
「そんなことより、なぜこのターミナルビルに爆弾が仕掛けられているんだよ」
脱線しがちな会話にハチベイが重要な事を質問する。
「理由まではわかりませんので、犯人に聞いてください。残念なことに、見つけた一人は殺してしまいました。二人目を見つけるしかありませんね。居ればの話ですが」
「つまりその一人目は、少なくとも爆弾を仕掛けていたと言うんだな」
「ええ。間違いなく」
突然ロビー全体に銃声が響く。
「手遅れのようです」
すると突然クッマイアは消える……
「き、消えた」
カクが驚き言った。
「ち、あいつ銃声の方へ行きやがった」
ハチベイが言った。
「良くクッマイア様の行き先がわかりましたね」
エムが感心して言った。
「メルドネル人ならあの位の速さで動ける奴は少なくない。地球人では稀だろうがな」
「たしかに、クッマイア様のように動ける魔法戦士は稀です。でも、体術の専門家ならクッマイア様より速く動けるエルフは少なくありませんよ」
数秒後、激しい銃声があり沈黙した。
「もう片付いたみたいです。とりあえず、ターミナルビルを出ましょう」
エルが言った。
「出るって、何処にだ」
「ミト様を守るのはあなたの役目でしょ」
「ミトを導く片割れを守るのがお前の仕事だろ。あのトロそうな奴を守れるのかよ」
「エルはああ見えて神官エルフなのよ。死に難さについては私以上なの。あの程度の武器なら死なないわ。爆弾も直撃でもしない限り死ぬ心配はなさそう」
「どうしてそんな事わかる」
エムはハチベイに写真を見せる。
「これが犯人グループの爆弾みたい。起爆装置は遠隔操作で行うタイプみたい。写真のこれは解除してあるけど」
「どうしてこんな写真が?」
「クッマイア様がくれたの」
「い、いつの間に」
「ミト様。どこに逃げます?」
エルがミトにまったく緊張感のない様子で聞く。
「ターミナルビル中に爆弾が仕掛けられているのなら、宇宙船を停泊しているドックが良いでしょう」
「それでは、善は急げです。エムちゃん頼める?」
そう言うとエルがニッコリする。
「人使い荒いなあ。で、場所はどこ?」
エムはハチベイに場所を聞く。
「三十一番ゲートを抜けた先にある五十八番ドックだ」
一行はエムを先頭、ハチベイをしんがりに走り始める。
「地球人死ね」
マッカル人がミト達の前に立ちはだかり、機関銃の引鉄を引いた。
機関銃の弾がエムの肩に当たり、肩から血飛沫があがる。エムはそのダメージに怯むことなく銃を撃つ。その一発がマッカル人の額を撃ち抜く。
「大丈夫か?」
「普通人なら重傷ですが、エルフには掠り傷です」
「そうか……お前、魔法戦士じゃなかったのかよ。銃なんて使うなんてよ」
「この銃は魔法銃よ。魔法戦士ならではの武器なんだから」
「やっぱりお前達とは気が合わなさそうだ」
「それは同感です」
メルドネル人は、銃を使うのは銃士、近接武器しか使わないのが戦士として区別している。そしてそれぞれがプライドを持っている。
それに対して、エルフはあまり区別しない。その為、戦士と名乗っていても銃器を使うのに躊躇がなかった。
一行は三十一番ゲートに到着した。船が停泊中のミト達は、本来ならハチベイの持つカードキーで通過できる。しかし、電源が落ちている為、ゲートが開かず通れなかった。
「ど、どうしましょう。ハチベイ様」
カクが動揺している。
「魔法でどうにかならないか?」
ハチベイがエムに聞いた。
エムは肯き、呪文を詠唱し始める。
激しい爆発音とともにゲートが全壊する。
「もっとスマートな方法はなかったのかよ」
ハチベイが怒る。
「これが一番早い」
ハチベイは、プルプル震えながら怒りを鎮める。
「俺は、ターミナルビルに戻って、犯人グループの様子を見て来る。ミト達をドックへ頼む」
その時、ターミナルビルの外から爆発音が響く。宇宙船が大破した爆発音であったが、ミト達にその音の正体を知る術がなかった。
「外からみたいだけど。ビルじゃなくて、ドックへ行って状況確認した方が良いんじゃない?」
ハチベイは、肩をプルプル震えさせる。
「えーい」
ハチベイはドックへ走る。
十四時十分 ターミナル内
アーマードバトルスーツのドドリアン十機が、ターミナル内に侵入する。
個人宇宙船が宇宙へ飛び出そうとしていた。しかし管制塔からの指示がなく、ずっと待ちぼうけ状態だった。さすがに異常に気付き、発進し始めたが、手遅れだった。
ギャギのドドリアンが、警備のタルラントから回収したライフルで宇宙船を撃ち抜いた。
激しい爆発音を上げ大破した。
「リーダー。聞こえているかい。ターミナルも制圧したぜ」
ギャギは無線で管制室に連絡する
『よくやった。計画通りだ』
「次の作業にうつるぜ」
『任せたぜ』
ドドリアン部隊の半分は、新たに巨大な爆弾をターミナルビルの外壁に設置し始めた。
そして残りの半分は、他の警備アーマードバトルスーツを倒しに行く。
十四時十分 管制室
管制室からターミナル内を見ると、ドドリアンが十機入って来たのが見える。
発進準備をしている宇宙船をドドリアンがライフルで撃ち激しく爆発する。
『聞こえているかい。ターミナルも制圧したぜ』
無線係がロンに伝えるとロンは無線機に近寄り、「よくやった。計画通りだ」と言った。
『次の作業にうつるぜ』
「任せた」
ロンは無線機を置く。
「おい、ターミナルビル内の制圧状況はどうなっている。警備室に問い合わせろ」
警備室からの回答は、ほぼ制圧したであった。ロンは直接指示するため、警備室に電話する。
「まだ制圧できていないのは何処だ。そこに人員を集めろ」
ロンが指示する。
『しかし、もう五人も殺されている。一箇所に集めたら、手が回らない場所が出てくるぜ』
警備室のメンバーが言った。
「いつの間に五人もか! なぜだ」
『一人やたらと強い地球人がいる。五人の内三人は、そいつにやられている』
実際には四人がクッマイアにやられていた。しかし、一人は警備室を制圧する前にやられている。その為、ロン達は誰に殺されたのか知ることができなかった。
「爆弾を爆発させて、館内放送で降伏を呼び掛ければどうだ」
管制室にいるメンバーがロンに助言した。ロンはニヤリとして答える。
「おい、奴の近くにある爆弾の番号を教えろ」
警備室にロンが言った。
しばらく間があってから、警備室から答えがあった。
「聞いていたな」
管制室でノートパソコンを広げているメンバーに言った。
「遠慮なくいくぜ」
ノートパソコンのキーを叩くと、ターミナルビル中に響く爆発音、軋む衝撃が走る。
「警備室。どうだ」
『監視カメラもいかれちまって、どうなったかなんてわからねえ』
爆弾を爆発させるように進言したメンバーがロンに殴られる。
「殴るなら降伏を呼び掛けてからにしてくれよ」
ロンはターミナルビル内への放送用マイクのスイッチを入れる。
「今の爆発は我々が仕掛けた爆弾のものだ。同じモノをターミナルビル中に仕掛けた。死にたくなければ降伏し、武器を捨てて待合ロビーに集まれ」
ロンはそこでマイクのスイッチを切る。
「警備室に連絡を取って、奴を探させろ」
しばらく待ったが、警備室からは見つけたと言う報告は来なかった。
「近くにいるメンバーに死体を捜させろ」
十四時十二分 待合ロビー近くの通路
メンバーの一人がロンからの携帯電話でクッマイアの死体を探しに行く。
さっきまでクッマイアが戦っていた場所である。
「誰もいないじゃないか」
小石が転がる音がする。急いで振り向き銃を構えると、そこに襲撃メンバーの一人が立っていた。
「驚かすなよ。敵かと思っただろ」
メンバーが味方だと思い近づくと、剣でメンバーを貫いた。
「な、なぜだ」
すると目の前のマッカル人が徐々に地球人に変わっていく。正体はクッマイアだった。
「わるかったな。人違いだ」
無念そうな表情で死んでいった。
その時、携帯電話が鳴った。クッマイアは携帯電話を手の平に出すと通話する。
「もしもし」