表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/4

第一話

 銀河帝国歴三八四三年五月十日


 地球人の女神ミト。地球人発祥の惑星である地球の遺跡に封印されていた。そこから解放されたのが、ほんの二日前の事である。地球の遺跡に封印されていたのは、ミトを含む四人の女神であった。

 女神達の解放には、遺跡発掘の監督を司る役所、歴史遺産・遺跡管理局が加わっていた。しかも局長のハチベイこと、ハツィイヴェーイルシュラインが直々にである。

 それにも関らず、女神達を解放した者たちは、自分達の思惑だけで四人の女神をそれぞれ分けあって連れ去った。それでハチベイの元に残ったのは末娘のミトだった。

 昨日、ミトを連れ地球を出発し、宇宙船の燃料が残り少ない事に今朝気付いた。その時、もっとも近くにあった惑星がカーマンであった。


 惑星カーマン カーマン宇宙港


 カーマンの主要産業は農業で、開発が遅れていた。それで宇宙港もたったの一つ、カーマン宇宙港しかない。その為、ハチベイたちの宇宙船は、必然的にカーマン宇宙港に停泊することになった。

 ハチベイは到着したら、すぐに燃料を入れずに、宇宙船を検査してもらうことにした。まだ燃料が無くなるには早すぎるので、宇宙船の調子が悪い可能性があると、ハチベイが判断したからだ。

 その検査の間、暇を持て余していたミトがとても邪魔だった。それで地球人エルフ種の学者二人を付けて、ターミナルビル内のレストランに行かせる。


 十三時 レストラン、ハネヤスメ


 二人の少女とそれに付き添うようにおっさん二人がいた。そのおっさん二人は、ミトの付添いである地球人エルフ種のカクとスケタである。カクは真面目そうな中年男、スケタはオシャレなナイスミドル風の男だった。エルフ種と言っても普通の地球人と外見上の違いは全くない。

「いいなあ。わたしも大人になったら、宇宙旅行して、かっこいい人と出会いたい」

 フリルの付いたカラフルなドレスを着こなしている少女が、遠くを見ながら言った。この少女は、宇宙港に着いてから知りあって友達になったマチコだった。

「マチコは、ロマンチストだのう~」

 白いドレスを身に纏い、長い黒髪の人形のような少女には似合わない言葉遣いだ。この少女こそ女神ミトだ。

「ミトちゃんは、かっこいい人と会ったことないの?」

「そもそも人間とあまり会っていないからのう。かっこいい奴など会うはずがない」

 ミトは食べ物を口に放り込みながら言った。

「ミトちゃんみたいに、専用宇宙船だと出会いはないのね。金持ちの贅沢な悩みね」

「わらわは別に金持ちなんかじゃないぞ。あの船はハチベイの船じゃ。わらわの物じゃないしのう」

「あのメルドネル人の?」

「そうじゃ」

「ミトちゃん。メルドネル人をお供にしているなんてすごい~」

 メルドネル人の体のパーツは、地球人と見かけ上のそれと殆ど変わらない。しかし、身長が二百三十メートル前後あり、彼らの方が全体的に大きく、身体能力も高かった。銀河帝国の支配者階級にある種族だ。

 ミトは料理を食べ終わると、さらに注文しようとする。

「食べすぎはお体に良くないですよ」

 カクは注文を止める。

「わらわはまだ空腹なのだ」

 カクはミトをたしなめてレストランを出る。ミト一人で大人十人分は食べている。どうみても五、六歳程度の子供である、ミトが一人で食べたとは信じられない量だ。

 一緒に食事をしていたマチコはお子様食一食分も食べきれていない。

「ごちそうさまです。カクさん。美味しかったです」

 マチコは、六歳とは思えないしっかりしたお嬢さんだった。


 同時刻十三時 ミーティングポイント


 一人の男と二人の美女がいた。

 男は地球人エルフ種の若者風で端正な顔つきをしている。二人の美女も地球人エルフ種の少女で一人は白いドレスを着ており、もう一人は運動しやすそうなスーツ姿だ。

「では、おさらいしましょう。エル。君の使命は何だね?」

 男が尋ねる。

「私の使命は、女神ミト様が正しい道を選べるように教え導く事です」

 白いドレスを着た少女エルが答えた。

「正しい道とは?」

「女神ミト様が選ぶ道です」

 男はニッコリする。

「では、エム。君の使命は何だね?」

 男はスーツ姿の少女エムに尋ねる。

「エルを護衛することです」

「では、女神ミト様が襲撃を受けたら、お前は何とする?」

 エムは考え込む。

「ミト様を守るのは私の使命ではありません」

 男はニッコリする。

「正解です」

「ありがとうございます。長老様」

「二人とも長老ではありません。今はクッマイアです」

 そう言うと男は、なぜか胸元が開いた黒いドレスを纏った雰囲気のある美女に変身していた。

「あなた達が行動をしやすいように少し工作してきます」

 そう言うとクッマイアは去って言った。


 同時刻十三時 土産物屋、ヤスカロウ


 ピンクのミニスカートメイド服を着た二人が売り子をしていた。

 二人も売り子が居ても全く暇そうである。それもそのはず、宇宙港自体に人が少ないのだから。

「あ~。暇」

 地球人の少女ピィが愚痴る。

「楽してバイト代出るんだから良いじゃない」

 ネバーラン人の少女チーデスが試食品用のお菓子を食べながら言った。

「あんたは本当に呑気ねえ。商品が売れてボーナスが出るように頑張ろうと思わないの?」

「でも、この店の店長に商才がないって言ったのはピィじゃない」

 別にピィに商才があって言っている訳じゃない。ピィにはまともな知能と判断力があるだけである。

「普通商品は、売れそうな分だけ仕入れるでしょ? あの店長そう言うのお構いなしじゃない」

「そうなの?」

 チーデスの答えにピィは呆れる。

「おーい。バイト二人こっち来い」

 店長のマッカル人が呼ぶ。

 マッカル人は、身長百三十センチメートル前後でずんぐりした体形で、皮膚は真っ赤だ。アゴの犬歯が尖っているのが特徴だ。

 二人は店長の元へ行く。

 店長の話は、メルドネル人用のお菓子を五十箱仕入れた事。そして、一箱は試食用に使っても良いから全部売れと言う事だった。

「四十九箱も売れるか!」

 ピィは怒る。

「メルドネル人が来ているって言っても、二人だけだもんね。確かに四十九箱は売れないわね。別の種族に売っちゃえば。例えば地球人とか」

 チーデスが言う。

「売れるわけないでしょ」

「でも、メルドネル人の食べ物は地球人も食べられるんでしょ」

「毒じゃないけど、カロリー高すぎ。これ一個二千キロカロリーもあるのよ。これ一個で成人男子が一日で摂取するカロリーなんだから」

「つまり食べるととっても太っちゃうって事?」

 ピィは沈黙で肯定する。

「大変だね。これは何がなんでもメルドネル人に売り付けないとね」

 チーデスが悪戯っぽく笑う。

「でも、どうやって」

「あいつらの仲間に地球人の子供がいたじゃない。その子供を利用するのよ」

「だからどうやって」

「あたしがどうにかするから、ピィは周りにいる大人をどうにかしてよ」

「トラブルは起こさないでよね」

「わかっているって」

 二人は持ち場にもどる。


 十三時十五分 待合ロビー


「マチコ」

 ナイスミドルの男性と優しそうな女性が呼んだ。マチコの両親だ。

 マチコは両親に手を振る。

「それじゃあ、ミトちゃん。ごきげんよう」

 そう言うとマチコは両親の元へ行く。

「さよならだ」

 ミトはマチコを見送る。

「わらわも父上に会いたいのう」

 ミトがポツリと言った。

「そのミト様のお父さんはどこにいるのですか?」

 カクが尋ねる。

「もし、そこの人」

 広く胸元の開いたドレスを着た美女が話しかけた。その為、カクの質問は中断させられる。

「なんですか。お嬢さん」

 スケタが美女に駆け寄り、見えそうで見えない胸元を覗きこむ。

「あなた方は不思議な運命にありますね。今なら無料で占ってあげましょう」

「それは嬉しいねえ。占ってくれよ」

 思い切り鼻の下を伸ばしてスケタが言った。

「やめておけ、そんなのインチキに決まっている」

「当たるも八卦、はずれるも八卦です。近いうちに二人のエルフ少女が現れます。そしたら、そこの少女に必ず引き合わせるのです」

「エルフの少女ですか?」

「二人は神官エルフです。きっとあなた達の進むべき未来を指し示すでしょう」

「神官エルフだって。地球人の叡智を秘密裏に伝承していると言う神官エルフですか?」

 さっきまで無関心だったカクが急に興味を示した。スケタはそれをウザそうに見る。

「未来の事を知りすぎるとかえって不安になります。近いうちに起こることですから」

 そう言うと黒いドレスを着た美女クッマイアは立ち去る。

「ああ~。残念」

 スケタは悔しがる。

「神官エルフに早く会いたーい」

 カクもスケタもエルフだが、神官エルフには会った事がなかった。神官エルフは神を守護する為に生み出された特殊なエルフだ。知識や戦闘力など、特定の能力を強化されて生み出される。歴史研究家カクにとっては、研究対象であった。

 ミト達は土産物屋ヤスカロウの前を通り掛る。

 ビダン

 ミトは何もないところで転んだ。

「だ、だれじゃ、こんな所に物を置いた奴は」

 ミトの額が真っ赤になっており、打った衝撃の強さを物語っている。

「物を置いたと申されましても、何もありませんが」

 カクがクソまじめに言った。

「強いてあげると、タイルとタイルの境目の0.1ミリの段差があるなあ」

 スケタが笑いを堪えながら言った。

「誰じゃ、こんな所にタイルの段差を作ったのは」

 ミトの癇癪にスケタは耐えられず噴き出す。その様子を見てさらにミトがヒートアップする。

 そこにピンクのミニスカートメイド服姿の店員チーデスがやって来た。

「さあ、これでもいかがですか?」

 ボーナスがでるメルドネル人用のお菓子を、チーデスはニッコリしながらミトにさし出す。ミトは何も考えずに口に運ぶ。

「うまいぞー」

 ミトの雄叫びが宇宙港中に響く。

 チーデスは予想外の展開に面白そうに笑う。

「これはあちらで販売しております」

 チーデスがもう一人のメイド服姿の店員ピィのいる方を手で指し示す。

「いらっしゃいませ~。土産物屋ヤスカロウです」

 ピィは営業スマイルで言った。

 スケタの目が光る。するといつの間にかピィの手を取り、視線を胸元に運ぶ。

 ピィはスケタの手をさりげなくはずし、気持ち悪い視線を我慢する。

「地球人用のお菓子も多数取り揃えておりますよ」

 ピィは地球人用のお菓子を指差しで教える。

「このお菓子を買おう」

 ミトが言った。

 ピィはマニュアル通り、メルドネル人用のお菓子である事を説明しようとする。するとチーデスは止める。

 グー。

 ミトの腹の虫が鳴った。カクもスケタも驚く。

「どんだけ食えば満足するんだ!」

「お腹が減っておるからすぐいただくぞ」

 ミトは包装紙をビリビリ破ると、一気に食べ始める。そしてあっと言う間に全部たいらげる。

「はや」

 カクが目を点にして言った。

「そこにあるのを全部くれ」

 ミトが調子に乗って言った。

「ミト様、食べすぎは体に毒です」

 カクがたしなめる。

「全部ですね」

 チーデスはニッコリしながら答える。ピィはスケタの嫌らしい視線に耐えながら、営業スマイルを続ける。

「いいじゃないか。こんな可愛い店員さんが販売しているんだし。全部ちょうだいよ」

 スケタが言った。スケタは、太っ腹であるところを見せたがっている。

「ありがとうございます」

 ピィは営業スマイルを絶やさず言った。バイトの鏡である。

「先ほどの一箱と追加分を加えて、全部で四十九箱。三百九十二バーグです」

 カクがジト眼でスケタを見る。

「大丈夫だよ。食費は必要経費だから」

 スケタはそっぽを向きながら言った。


 十三時三十分 ミーティングポイント


 クッマイアが、戻って来た。

「もう済みました。自分の任務を果たしにいってらっしゃい」

 クッマイアはニッコリしながら言った。

 エルとエムは、元気に返事をする。しかし、クッマイアは浮かない顔をする。

「悪い風がこの宇宙港に吹き込んでいます。早めに接触してください」

「は、はい」

 宇宙港内には全然風など吹いていないので、二人は不思議に思うが、ミトの元へと急ぐ。


 十三時四十五分 待合ロビー


 ミトとカクとスケタの三人は、待合ロビーのベンチに座っていた。ハチベイと合流する為に待っているのだ。ハチベイはロビーにきて、それを見つけるとミト達の傍まで行く。

「ハチベイ様。準備できましたか?」

 カクが尋ねた。

「燃料漏れが起きているそうだ。どこから漏れているのか検査にもうしばらくかかる。修理はそれからだ」

 ハチベイが答えた。

 こんなわけで、ミト一行は宇宙港で足止めを食うことになった。

「ところでオウグィン様はどちらへ?」

 カクが尋ねる。

 オウグィンとは、ハチベイの秘書のオウグィンニィのことである。

「燃料漏れの原因が人為的なものでないか、宇宙船の監視モニターのチェックをしてもらっている」

「それならすぐには戻ってこられないんじゃないですか?」

「なんでも何とかって言うソフトを使用すると数時間でチェックできるそうだ」

「はあ、そうなんですか」

 一行が話しこんでいると、神官エルフのエルとエムが近づいてきた。

「何者だ」

 ミトの前に立ちはだかるようにハチベイがすごみながら言った。

「神官エルフのエル」

「同じく神官エルフのエムです」

「さっきの占い師の先生が言った通りだ」

 カクが二人の神官エルフを見て嬉々として言った。

「そんなのさっきの占い師とグルかも知れないぞ」

 ミトが後ろでお菓子を食べながら言った。

「ミト様。その空腹が治まらない理由が知りたくはありませんか?」

 エルがのんびりした口調で言った。

 二人の美少女の登場でもう一人の男スケタも嬉々とした。

「お嬢さん。あの食いしん坊をどうにかできるのですか?」

 スケタはそう言いながら、突然二人の元にやって来てエルの手を握ろうとする。

 ピシッ!

 エムがスケタの手を叩いた。

「俺を無視して話を進めようとするな。なんの目的があるのか知らないが、なぜミトに近づく」

「私は、ミト様が正しい道を選択できるように導くのが使命です」

 エルが答える。

「正しい道とはなんだ」

「ミト様が選ぶ道です」

 エルの答えに、ハチベイは首を傾げる。

「ミトが選ぶ道が正しい道なら、お前が導く必要はないだろう?」

「ミト様が本来の力を発揮できる状態なら問題ないでしょう。でも今の状態で正しい道を選べるでしょうか?」

「それでは、正しい道を選べるようにできると言うのか?」

 エルは肯く。

「ではそちらは?」

 ハチベイはエムに尋ねる。

「私の使命はエルの護衛です」

「え。ミト様の護衛ではなくですか?」

 カクが突っ込む。

「ミト様は我々よりはるかに強いのに、なぜ護衛する必要があるのでしょうか」

 エルとエム以外は、考えられない回答に、理解が追い付かず、思考が停止する。

「良く分かっておるじゃないか。神を良く理解しておる娘じゃ」

 自分より年上に見えるエムに、ミトが言った。

「とにかく、お前達が神官エルフとやらである証拠はない」

 ハチベイは二人を認めようとしない。

「二人は、ミト様の空腹が治まらない理由を知っているみたいだ。どうでしょう。ミト様の空腹を解消できたら、神官エルフと認めては」

 スケタが珍しくまともな事を言った。ハチベイやカクは肯く。

「ねえ、エムちゃん。アレをするとミト様の空腹が治まるかなあ」

 エルがエムに聞く。

「アレの後そのメルドネル人用のお菓子を食べれば、少しは腹の足しになるんじゃない」

 エムはあまり真剣に考えた感じではない。

「ちょっと待て、ミトが食べているその菓子メルドネル人用じゃないか?」

 ハチベイは、エムのセリフでミトがメルドネル人用の菓子を食べている事に気づく。

「本人が上手いって言っているんだから大丈夫じゃないか」

 スケタは関心なさげに言う。

「大丈夫じゃないだろ。メルドネル人用の食品は人間にはカロリー過多だろ」

 ハチベイが焦りながら言った。

「今のミト様ならその程度のカロリー、魔法力に変換してしまうから問題ないです」

 エムが断言する。

「それじゃあ、そろそろミト様をパワーアップしますね」

 エルはミトの元に近付くと、ハンカチを出しお菓子で汚れた口のまわりを拭く。

「ごめんなさい」

 エルはそう言うとミトの口に物を押し込む。おっとりしているようで大胆にやった。

「まずー!」

 ミトの悲鳴が響く。

「な、何を喰わせた」

 ハチベイが驚き慌てる。しかし、ミトが急に激しい光を放ち。あたりにいた者全員が視界を奪われた。

「な、なにをした」

 ハチベイが戦闘態勢を取る。それに呼応するようにエムも戦闘態勢をとる。

「もう少し美味しい物はなかったのですか?」

 声はミトの声であったが、口調は全然違った。

「それしかなかったんです。次からは蜂蜜つけましょうか?」

 エルが聞いた。

「そうしてください」

 ミトとエルが穏やかな空気に包まれているのに、それとは対照的に、ハチベイとエムはピリピリした空気で張り詰めていた。

「何が起きたんだ。ミト」

 ハチベイが聞く。

「レディを呼び捨てにするべきじゃありませんわ。ハチベイさん」

「レディー」

 ハチベイ、カク、スケタの三人の声が揃う。

「慌てる必要はありません。セーフティモードからパワーセーブモードに移行しただけです」

「なんだ、そのセーフティモードからパワーセーブモードに移行したって」

 ハチベイが突っ込む。

 ミトは口調こそ大人っぽくなったが、大食いは変わっていないらしく、メルドネル人用の菓子を食べている。

「これだけ食べても全然お腹の足しになりません。お腹の足しになるものないかしら」

 ミトはハチベイの突っ込みをスルーした。

「パワーセーブモードでは、食べ物の七十パーセントが口内で魔法力に変換されます。もっとカロリーの高い物を食べたらどうかしら」

 エルののんびりした口調から信じられない単語が並ぶ。

「そうしましょう」

「まだ食うんかい」

 カクとスケタが突っ込む。

「だから、パワーセーブモードってなんだー」

 しつこくハチベイが突っ込む。

「ミト様の基礎代謝は二十万キロカロリー。地球人成人男性の百倍食べ続けないと飢え死にしてしまいます」

 ミトの代わりにエルが、のんびりした口調で説明する。

「大食の俺達メルドネル人でも一日あたり、一万キロカロリーなのにか!」

 ハチベイが驚きながら言った。

「その膨大な基礎代謝を抑える為に、いくつかのモードがあるんです」

 ミトには以下の五モードある。


 ・通常モード

 ・エコモード

 ・パワーセーブモード

 ・セイフティモード

 ・スリープモード


 通常モードは、ミトの本来の能力を思う存分使用できるモードである。基礎代謝は二十万キロカロリーとなる。

 エコモードは、本来の六十パーセントの能力しか使えないモードである。基礎代謝が十二万キロカロリーとなる。

 パワーセーブモードは、本来の三十パーセントの能力しか使えないモードである。基礎代謝は六万キロカロリーとなる。

 セイフティモードは、活動が可能な最低限のモードで、普通の少女なみの能力になる。その代わり、基礎代謝は二千キロカロリーとなる。

 スリープモードは、生命維持する為のモードで仮死状態になる。基礎代謝はほぼゼロに近いカロリーとなる。


「ミト様にそんな機能があるとは知りませんでした」

 カクはエルの長い説明に感服している。

「機能とは人聞き悪い。わたしはロボットではありませんよ」

 少し不機嫌そうに、ミトは言った。

『な、何者だ!』

 館内放送がそこで途切れる。

「なんでしょう。今の放送は?」

 スケタが誰に聞いたのか分からないが言った。

「確かに気になるな。一応、問い合わせてみよう」

 ハチベイが言った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ