【小話】ジングルベル
クリスマス小話になります。
本編でお出掛けの途中なのに。ですが。
…………なんとか間に合った。
「ジングルベールジングルベールっすっずっがーなるぅー」
「………」
「すっずのーりずっむーに光っのわーがまうっ」
「……エレン?それ、なんの歌?」
「ジングール…え?」
「そんな歌、聞いたことないんだけど、何の歌?」
「Jingle Bellsの歌」
「じん…何だって?」
「Jingle Bells(めっちゃ発音いい)の歌」
「…うん。もういいや。で、何でその歌 歌ってるの?」
「クリスマスだから?」
え?この歌クリスマスの歌だよね?
「うん。今日はクリスマスだよね。で、その歌どこで覚えたの?」
何処って……あ。
「え、えっとぉ…遠い異国?」
間違ってないよね?
「エレン。国外に出たことなんてないよね?」
「の、本のような気がします」
「ふーーん」
オリビエさんの笑顔が怖いです。
「まぁいいや。その曲、リズムが好きだから、全部歌ってみてよ」
「え?あぁ、うん。任せて」
そして、私は意気揚々に歌った。
*
私はその日、夢を見た。
遠い、遠い昔の夢。
「ただいまーっ…て」
「私以外誰もいないんだけどね」
今日はクリスマス。
家族や友人、恋人と暖かい部屋でゆっくり過ごす日。
まぁ、毎年仕事なんですけどね。
一人暮らししてるから、両親は遠くにいるし、友人は自分の家族と一緒に過ごしてるから無理。恋人なんて、いない。年の数=彼氏いない歴である。
「まぁ、いいや。今年はコレがあるもんねー」
私は最近ハマった乙女ゲームを取り出した。
「このゲームのキャラ達とクリスマス過ごすからいいもんねー」
誰だ。寂しいやつって言ったの。
私は寂しくなんてないぞ。
『メリークリスマス。今日はクリスマスだね。…二人で何して過ごそうか』
画面の向こうの彼が喋る。
私を見て、喋ってくれる。
だから、寂しくなんてないもん。
『…今日は、家で、ゆっくり二人で過ごそうか』
『俺がずっと抱きしめて温めてあげる』
『大丈夫。一人じゃないよ』
このセリフを言ってくれたのは、誰だっけ?
クリスマスと全く関係ない言葉。
でも、その時私が一番欲しかった言葉。
そこで私は目を覚ました。
「…あら?エレンちゃん おはよう」
目の前には麗しのお母様が。
あぁ、私、ソファーで寝てたのか。
「エレン。お歌歌って疲れちゃった?」
オリビエもこちらを見てきた。
「エレン おはよう? これからクリスマスパーティーだよ」
お父様が優しく笑う。
「エレノア。起きたならこっち手伝え」
兄様が私を呼ぶ。
あぁ、わたしの周り、人がいっぱいだ。
『大丈夫。一人じゃないよ』
うん。そうだね。今の私は一人じゃないね。
…でも久しぶりに見たな。前の夢。
でも、何であんな夢見たんだろう。
Jingle Bells 歌ったからかな。
「エレノア?」
「あ、ごめん。今行く!」
私はソファーを飛び降りた。
これはエレノアが攻略対象達に会う、少し前のお話。
クリスマスあんまり関係ない……?