質問責めランチタイム
トマトやアボカド、レタスなどが挟まれた色鮮やかなサンドイッチを食べながら、ノーラはべらべらと喋る。
「ゲルハルトは魔法研究とか鍛練とかはしてないのか?自宅に書物を持ってたりとかは?」
「私は師に教わっただけだ。それを極めて今の魔法がある」
「魔法学校には行かなかったのか?それだけであの技術が?」
「学校には行ってないし書物を集めて研究なども行っていない」
「ならどうして私が持ってきた本が嘘だって言えるんだ?」
「体感と魔法使い間の常識。限界まで走り込んだところで人間は死なないだろう。同じように、魔力を限界まで使いきったところで大したことはない」
ゆっくりとサンドイッチを味わいたいのに、ノーラに質問責めにされる。
「なるほどね。魔物の毒素を抜いたり骨くっつけたり、治癒魔法が得意みたいだけど、他には何が使えるんだ?」
「…話ながらよくそんな早く食べられるな」
延々と続きそうな気配に若干うんざりする。
話ながらだというのに、ノーラの早食いには陰りが見られない。
「こんな話ができるの久しぶりなんだ。嬉しくて」
そう言いながら、残りのサンドイッチをばくりと口に納める。
話に一区切りついたかと思いきや、ふと思い出したようにつらつらと口が回りだす。
「そうだ、書物を借りてきてくれるなら、できたら魔物に関する書物がいいな。それか人物史とか。魔法に関するものも読みたい…、魔法に関する書物はないんだったか?」
期待するなと言ったものの効果はないようだ。
あれが読みたいこれが読みたいと思いを馳せている。
「…ノーラも行くか?」
「いいのか!?」
ただでさえ浮かれていた顔に、喜色の輝きが満ちる。
「蔵書の無さをその目で確かめるといい」
「うんうん!読みたい本は自分で探す!」
その後も図書館への期待と共に話続けるノーラを適当にあしらいつつ昼食を終える。
ミニテーブルや薪、木の実などを根城へ転移させて片付ける。
ノーラのバスケットに入っているであろう甘味は少しお預けだ。
隣町は一山越えた先にある。
徒歩なら半日は軽くかかる距離だ。
魔法を行使しようとして、ふと気づく。
「ノーラ、転移の経験はあるか」
転移の魔法は、術者に触れていれさえすれば簡単に同時移動できる。
しかし術者に付随して転移する者には、術者本人よりも“転移酔い”という負担が体にかかりやすい。
転移酔いに耐性がないと、転移直後は目が回って歩けなかったり、胃の中身を全てぶちまける結果になる。
「この体では初めて」
手を伸ばして私の手を掴みながらノーラが言う。
「けど今までに酔った経験はないし、たぶん平気だ」
「サンドイッチ吐くなよ」
「おうよ」