異形たちの村
「話をつけてきます。少し待っていてください」
布と袋を抱えて、結界が張ってあるのであろう方向へ走っていく。
「ゲルハルト、よかったな」
静かに見守っていたバウムからの言葉。
「ああ、ありがとう。バウムが口添えをしてくれたおかげだ」
「私は、聞かれた、から、答えたまでだ。ゲルハルトが、勝ち取った信頼、だろう」
バウムの言葉か、私の行動か、半面が何で判断をしたのかはわからない。
けれど、村に入れてもいいと思われるだけの信頼は獲得した。
半面以外からも話を聞ける。
何か、新たな情報が出てくるといい。
しばらくして戻ってきた半面に連れられて移動をする。
バウムから離れたところで周囲を入念に見回したかと思うと、太い木の根元にもぐりこんだ。
太い幹に大きな洞がある。
大の大人でもかがめば何とか入れる大きさ。
半面はそこに潜り込んだのだ。
続いてその洞に入ると、視界が開けた。
木の洞に入り込んだのだ、通常なら木の壁にぶつかるはずである。
その洞は、結界の出入口だった。
開けた視界から飛び込んでくる情報に唖然とする。
目に入るのは隠れた村の住民たち。
口元だけが異形であった半面など、可愛いものだ。
頭部は完全に獣だが、そのほかは人間である者。
獣の手足をしているが人間の顔で二足歩行をしている者。
上半身は人間、下半身は獣という、手足が6本生えている者もいる。
ああ、これは確かに、外では生きていけないな。
面や衣服で隠せる範囲を超えた異形。
居住を持ち、衣服を着て、人間と同じような生活をしているのが不思議にも思えてくる。
自分の中に形成されていた世界にひびでも入ったような感覚だ。
世界認識なのか、常識なのか、今見ている現実に対して齟齬が生じる。
何が原因でこのような見た目の者が産まれるのだろう。
「ゲルハルトと、言っていましたね。こちらに来てください」
「ああ」
1000年以上生きて、異形の姿を持つ者に会ったのはバウムが初めてだった。
呪いによって異形となったバウム。
自らと同じく魔王の呪いに侵されている者。
納得できる事由もあり、さほど驚くことはなかった。
しかし半面たちはどうだろう。
呪いではなく、生まれながらだという異形の姿。
半面の犬のような口元にも、ひっそりと心臓が飛び跳ねたというのに、それを上回る者たちが集まった村。
腕に鳥肌が立っている気がする。




