褐色肌の村との関係
「もういいだろう。関係性を話してくれないか」
再度先を促して、ようやく目的の話を聞けた。
「同族の村です。見た目が人間と同等の者は結界外で暮らし、怪しい者が出た際の伝達や他者を欺く役割を果たしています」
隠れた村も褐色肌の村も、同じ一族。
その中で、人間とは異なる容姿を生まれ持ったものは隠れた村へ、人間と違わぬ容姿で生まれたものは褐色肌の村で過ごす。
褐色肌の村では細々と生活を営みつつ、外部の情報を得る。
近頃魔物が多い。
森のある一部で果物がよく取れる。
付近で外部の人間がうろついている。
そういった情報は、定時の連絡で済ませることもあれば、警戒態勢を取るようすぐさま伝達することもある。
また、物資調達にどうしても外部の村へ出向かないといけないときがある。
面やフードで顔を覆う者は目立つ。
あの変わった風貌の者は大量の荷物を持ってどこへ帰るのか。
腕に自信のある傍迷惑な者が、後をつけてこないとも限らない。
後を付けられた状態で隠れた村に戻るわけにはいかないため、目くらましで褐色肌の村へと入るらしい。
そうして、傍迷惑な者が姿を消すのを確認してから、隠れた村へと戻るのだそうだ。
もしや西地域の新しい地図が登場したのは、その傍迷惑な奴が現れたからなのだろうか。
真相はわからないが、有り得る話だ。
それにしても。
「結界外で暮らしてる者が物資調達に行ったほうが遥かに安全じゃないか?」
「それはそうなのですが、畑の手入れに精一杯で村を離れる余裕がありません」
褐色肌の村で育てている作物で、隠れた村と褐色肌の村、2つの村を賄っている。
量を収穫するためにそれなりの広さを畑にしており、畑の世話をするだけで手一杯。
1人2人だとしても、畑を放って外出してしまえば手が回らなくなる。
それで収穫量が減ったり、最悪畑が駄目になってしまえば、餓死者が出る可能性だってある。
多少の危険を冒しても、隠れた村の者が物資調達に行った方がいいのだ。
「ふうん。なるほどな」
双子がまだ小さかったときに感じた、褐色肌の村での排他的な態度。
私を外部の怪しい者とみなし、緊急連絡を隠れた村に飛ばしていたのかもしれない。
「では、約束していた話はよろしいですか」
「ああ。充分に聞けた。感謝する」
そうだ。
重要なことを伝えていなかった。
「魔法陣と欠片を使って結界を張る方法だが、おおよそ2歩で欠片一掴み分だと考えろ。今ある結界を含めて重ね掛けすれば、村を隠した状態のまま結界範囲を広げられるだろう」
「わかりました」
魔法陣の布と結晶の欠片が入った袋を抱きしめて、頷くように半面は首を引く。
できれば隠れた村に足を踏み入れる理由が欲しいところだが、思いつかないな。
用件は終わってしまった。
今回の補助魔法は、おそらく2年くらい持続するだろうか。
徐々に結晶の欠片は朽ちていくはずだ。
2年後のために結晶の欠片を集めて持ってくる約束を取り付けてもいいが、待つ必要が出てくる。
隠れた村に入れるとも限らないしな。
「…あの」
考えあぐねていると、半面が口を開いた。
「なんだ」
「村で、魔法について教えてくれませんか」
その申し出はこちらの望むところだった。
隠れた村の者は極力結界の外へ出ない。
つまり、教えるためには私が結界の中に入る必要が出てくる。
村に入れる。
「我々の知識が遅れているのはわかっていましたが、ここまでとは思っていませんでした。バウム様から聞きました。あなたは技術も知識も相当の腕だと。我々に知識を与えてくれませんか」
「村に入ってもいいということか」
「誓いを立ててもらいましたし、バウム様も信頼しているようです。我々の平穏を脅かさないと信じましょう」
バウム様様だな。




