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双子と呪い

成長し大人に近づいてくると、しがみついてくることはなくなったものの、変わらず面は奪われる。





ある時望まぬ追いかけっこをしていると、突然に双子の片方の叫び声が響き渡った。

面を持った方が叫び声に駆け寄り、自然と私も駆けつける形になる。



叫び声をあげたのは、双子の女の方、ズィリンダだった。


腕に鋭く長いひっかき傷ができ、血が流れている。

逃げる魔物の姿があるので、あの魔物に傷つけられたのだろう。

そこまで深い傷ではなさそうだ。




傷から漂う魔力の残滓に漂う呪いの気配。

魔物を倒していないから呪いは解けていない。


魔物を倒すべきか、と動こうとしたところで、双子が何かをしていることに気づく。




双子の男の方、ズィレンデが腕の傷に手をかざしている。

魔力操作を行っているようで、徐々に薄まっていく呪いの気配。



突然のことに私は目を見張った。







魔物を、術者を倒さずに、呪いを解いた。







目を丸くする私には気づかず、双子が顔を見合わせてよかったと息をつく。

次いで傷の手当に入り、下手くそながらも治療を施した。


私はたった今見た光景が信じられない。




拙いにもほどがある魔法技術と、少ないであろう魔力量。

そんな子供が、弱いものではあるがいとも簡単に呪いを解いた。




シュワーゼとともにあれだけ呪いの解き方を探して、それでも見つからなかったものだ。

こんなところで見つかるとは。




「今のはどうやったんだ」


「いまの?」


「どれ?」


「いま呪いを解いただろう。どうやったんだ」


「どうやってる?」


「どうだろうね?」




首をかしげる双子。


からかわれているのかと思ったが、そうではない。

感覚的に行っているため言語化できないようだ。



何とか聞き出したが、広げてざらざらを取るだの、潜って黒いのを捕まえるだの、理解ができない。

村の大人どもに聞けば何かわかるだろうか。




双子に認められてから、大人たちの態度は若干軟化した。


しかし依然壁は存在し、せいぜい軽い雑談が可能になった程度である。

呪いの解き方を聞いて答えが返ってくるかどうかは定かではない。



しかし呪いに関しては久方ぶりの進歩だ。

聞きに行かないという選択肢はなかった。


以前村に話を聞きに行ってからしばらく経っているだろうか。

村の大人たちからも話が聞けるようになっていればいいのだが。








まずは双子の親のところへ行ってみる。


腕に怪我を負い魔物に呪われたが、自分たちで呪いを解いて怪我の治療も行っていたと話すと、満足げにうなずいた。

教えをようやく実現できたと頷いているような、そんな雰囲気。






「この村の者は呪いが解けるのか?」






幾度も言葉を交わして婉曲的に攻める技術は持ち合わせていない。

直球で聞いてみる。



即座に言葉が返ってくることはなく、あるのは値踏みするような視線。





情報を与えてもいいのか、判定されている。


一言二言しか返事がない段階から、他愛もない話はできるようになり、そして今、線引きを緩めるかどうかを考えている。

遅々とした歩みだがきちんと進展している。










「この辺りで暮らすなら、呪いを解けなければ生きていけない」




沈黙ののちに発せられたのは、質問への答え。

より深くに踏み込んでもいいと許可されたようである。




「魔物が出るからか。倒せばいいのではないか?」

「倒すよりも呪いを解くほうが効率がいい。体力的にも魔力的にも」









魔王がいない平和期であっても、魔王城が近いこの辺りでは魔物がたびたび現れる。

弱いものばかりだが、いちいち相手にはしていられない。


とくに成長途中の子供では魔物を倒そうとしても返り討ちにあってしまう可能性がある。

魔物を追いかけて森深くに足を踏み入れ、道がわからなくなることも有り得るだろう。


畑の手入れや食事の準備、洗濯や掃除などに追われている大人は終始子供に構っていられない。




この辺りの魔物は強くない。

かけられる呪いも強くない。



魔王が立ち強い魔物が現れるようになっても、王城の方を目指してこの辺りは素通りするのだ。


反撃の姿勢を見せれば逃げる魔物。

かけられる呪いも弱い。

となれば、簡単な治癒と解呪の魔法を子供に習得させる方が生存確率は上がる。





言葉を話せるようになるとまず、治癒と解呪の魔法を教える。

そうすれば、約束事が守れる年齢になれば放任できるようになる。



村から離れないように。

森深くに入らないように。


それだけは必ず守るように強く強く言い聞かせ、自由に遊ばせる。




それがこの村の状況らしい。

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