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行楽スタイル

それからは頻繁に、手土産を片手に少女はやってくるようになった。

ミートパイやチョコパイなどのパイ系や、ベイクドチーズケーキや軽めのクッキーなど。

籠のバスケットを持って森をうろうろする少女の姿からは、ピクニックでもしてるかのような暢気さが漂う。


魔王が現れてそれどころじゃないはずなんだがな。

魔王登壇の報など聞いていないかのような行動。


そのうちまた魔物にやられそうな気がするが、まあどうでもいいことだ。

それよりも少女に餌付けされているかのような現状が気に食わない。


来るな邪魔だと言っても聞かず、毎日森の違う場所で行動しているにも関わらず少女は現れる。

少女の顔を見るとイラッとするのだが、今日は何を持ってきたと甘味を出されては無視も拒否もできなかった。

少女の持ってくるものはどれも素晴らしい味で、どんどん虜になっていくのだ。


差し出される極上の甘味をもう手放せない。

だんだんとノーラの登場を待ちわびるようになっていた。


「こんにちは」

「ノーラか。今日はなんだ」


最近強くなってきた日射し対策にか、大きな麦わら帽子を被っていて完璧なる行楽スタイルのノーラ。

籠のバスケットを私に見せるように持ち上げる。


「今日はスコーンだよ。喉乾くだろうからハーブティーも持ってきた」

「随分とお気楽な格好だな」


私の指摘に、眉尻を下げて肩をすくめた。


「お母さんは私が村の近くの小川で遊んでると思ってるみたいだから」


私の根城を隠している森とノーラの住む村とは、少しばかり土地が離れている。

子どもの足で歩いたら往復2時間ほどかかるだろうか。

そのうえ、私が森のどこにいるかは定まっていないので、私に辿り着くまでに結構な距離を歩いているはずだ。

そんな遠くへ子ども一人で足を運んでいるとは考えないだろう。


スコーンを取り出しハーブティーをコップにつぎ、としている少女の足にふと引っ掻き傷を見つける。

葉っぱや枝で引っ掻くよりも、もっと鋭く長い傷痕。

かすかに感じる魔力の残り香。


「…魔物か」

「え?」


私の呟きに顔を上げた。


「ああ、足の傷か。小さいのに威嚇されただけだよ」


けろりと何でもないことのように言う。

本当にこいつ、魔物やらを全く怖がらないな。


近頃は私もちらほらと魔物を見かけるようになっていた。

そのうちに人里でも現れるようになるだろう。

人の少ない森や山から魔物は出始め、だんだんと人の住む村などにも出現地は広がっていく。


「はいどうぞ」


スコーンとハーブティーを乗せた小さいトレイを差し出された。

食べやすいように小さい皿やフォークなどをノーラは持ってくるようになり、最近は私も食べやすいように小さいテーブルを用意するようになっていた。


スコーンを口に入れると、ほろりとした軽い口当たり。

甘さ控えめながらバターがいい風味を出している。


うん。今日も最高に美味しい。


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