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情報収集の日々

転移をして様々な土地で情報を集めては、特区へ行きシュワーゼと情報交換をする日々。



教師という名目上、魔法訓練も行っている。


しばらくは進歩もなく、魔法が発現しかけては霧散する有様。

しかし近頃は、少しではあるが変化がみられるようになった。

魔力の流れが改善されており、魔法の発現率も少し上がった。



シュワーゼ曰く、他人の魔力だと思って操作するようにしたら操作しやすくなった、だそうだ。

訓練を続けていけば、普通に扱えるようになる日もくるかもしれない。






シュワーゼの兄とあの女教師は、飽きもせずに勝負を挑んでくる。

面倒なので対面しないように立ち回り、ほとんどを回避している。


が、転移のできない屋敷の中だ。

逃げきれないときもある。



仕方なく勝負するときには容赦なく実力を見せつける。

実力差を理解して諦めてもらいたいのだが、期待通りには動いてくれない。

しかも最近は、実力をつけてきた兄自身からも勝負を挑まれる。


厄介ごとが増えた。






シュワーゼは特区内図書館での調査・魔法訓練のほかに、門兵の訓練にも顔を出しているようだ。


あの犬のような兵士に助言しているうちに、ほかの兵士からも頼まれるようになったらしい。


体が成長し、十分に動けるようになってくると、シュワーゼ自身も兵士の訓練に参加するようになった。

年齢にそぐわない戦闘感性を見せつけ、神童説を強固にしている。



学校へ通う年になると、「自由に動ける時間が減る」とぶつくさ言いつつ登校している。

不満をこぼしているが、教師から話を聞いたりと有効に活用しているようだ。





集めた情報は紙にまとめて、最終的に私の手元で管理している。

シュワーゼが保管した場合、不慮の事故や病気でシュワーゼが死亡したら情報が断絶する可能性があるからだ。

私が保管していれば、私が紛失させない限りは永久だ。



いまだ根城に置いていたノーラのノートを見せたら、シュワーゼはいたく感激していた。




「すごいね!ノーラだから200年くらい前か?取っておいてくれてありがとう!今までは必至に頭に詰め込んでたんだ。死んだら持ち物は引き継げないからね。これからはゲルハルトに預けておけば安心だね」




互いが持ちうる知識、新しく集めてきた情報、覚えている限りを詰め込んで紙に書きだしている。

流通している情報がすべて正しいとは限らず、たびたび矛盾を整理しては情報を精査する。




シュワーゼと情報収集を始めてから、飛躍的に情報が集まるようになった。



にも拘わらず、魔王によってかけられた呪いに関する情報は皆無と言っていい。




「魔法研究は進むけど魔王の呪いはさっぱりだね」






本当に呪いを解く方法があるのか、疑いたくなるほどである。



「もっと調べる範囲を広げる必要があるかもね。“呪い”や“魔法”に限定しないで」






シュワーゼの学校卒業もあと1年。

幼児からはとっくに脱却して少年の姿へと成長したシュワーゼ。


技術・知識ともに圧倒的な好成績を収め、今やシュワーゼの行動を咎める者はいないに等しい。






「範囲を広げて何を調べるんだ。呪いとは関係ないだろう」



異を唱える私にシュワーゼは真剣に答える。





「意外と繋がっているものだよ。ゲルハルト。特に人類史は大事だ。ぼくは人類史を調べていて呪い仲間がいるかもって思ったからね」


「どういうことだ」


「死亡の確認が取れてない勇者がいるんだよ。勇者はある意味、王よりも重要な存在だ。記録として残りやすい。いつ魔王を倒したか。どんな人柄か。どういう戦闘をするか。…どう死亡したか」







確かにそうだ。


事実かどうかはさて置いて、伝聞としてもよく残される。

学校や親、村の老人などから、勇者についての話を聞く機会は多い。



かの勇者は巨大蛇のような魔王を倒し、魔王の血毒に侵されて数年後に死んだ。

かの勇者は軟体で捉えづらい魔王を倒したが、人間の戦争に巻き込まれて死んだ。


幾つか私も聞いたことがある。






「ぼくのことも残ってた。一番始めの、ルターのときのこと。でも途中から記録がなくなる勇者がいるんだよね。ゲルハルトもそうだった。死亡が確認されてないのは、死んでないからじゃないのか。それに、ゲルハルトは疑問に思ったことはないか?魔物たちはなぜ王都を狙うのか」






魔王が立つと、魔物の数が歴然と増える。

それはそこらに生息しているわけではなく、魔王城から攻めてくるものが多い。


魔王城から出てきた魔物たちが目指すのは王城だ。

魔王城と王城を結んだ線上に位置する地域は治癒師や結界師が常駐し魔物に備える。




「敵対する団体の長を標的とするのは定石じゃないのか」


「それはそうだけど、考えてみて。

どの魔王も、変わらず、常に、だ。


仮に王を倒せたとしてもすぐに代わりは立つ。油断してる地域から襲ったっていい。数に言わせて人類を絶滅に追い込むことだって可能かもしれない。他の方法を取る魔王がいたって不思議じゃないはずだ。


それでも、狙われるのは王城。

王族だ。


ぼくには、対人間というよりも対王族を感じる」









魔物たち、魔王が敵対しているのは人間ではなく、“王族”。









「それは、王族が魔物に対して何かしたということか?」


「現状はわからない。何か根拠があるわけでもない。単なる推測だ。そもそも、どうして魔物と人間は対立しているのか。何か事由があったのか。ぼくは知りたいと思う。呪いとは関係なしに」




生まれたときから、いや、生まれる前から対立していた。


なぜ対立しているのか、疑問に思ったこともあったかもしれない。

しかし、いつしかそれは当然のものとなり、疑問も立ち消え、受け入れていた。



対立することになった原因が、何かあるのだろうか。







「…それは私も気になるな」



同意を得られたことに口角を上げてシュワーゼはうなずく。





「じゃあ決まりだね。あらゆることを調べていこう。裾野を広く。視野を広く」




こうして、調べる範囲が増え、知識はかなり集まるものの、たいした進歩はなく時間が過ぎていく。




シュワーゼは学校を卒業し、官吏見習いとして働くようになった。


晴れて王城へ出入りできる権利を得たわけである。

ただし自由に動き回れるわけではない。


見習いという立場のため、傍には指南役が常に居る。

今はとにかく成果をあげて立場を上げることを考えているようだ。



魔物対人間ではなく、魔物対王族だと睨むシュワーゼは、王城で管理されている資料に重要な情報が秘匿されているのではと考えている。

仕事を任せられるようになり、成人して王城の機密部分を動けるようになるまではもうしばらくかかる。




特区では神童と呼ばれ自由に動いていたシュワーゼも、王城ではそううまくはいかないようだ。

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