表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/201

呪いについての共有

使用人に飲み物と菓子を持ってくるようにシュワーゼは伝え、場所を移動した。



生を得てまだ4年の子供の部屋とは思えない広さの自室。

大の大人でも広々と寝れる寝具に、数人でお茶ができるテーブルに椅子、執務机に棚も揃っている。


大人仕様の部屋だな。




「ガキの自室にしては大層な部屋だな。親と寝たいお年頃なんじゃないのか」


「ガキってやめてよ。本来の年頃はそうだろうけどさ。中身は大人だよ。むしろ老人。

この家では世話係と相室になるのが通例だけどやめてもらった。自由に動き回りたいし。そもそも必要ないからね。“子供”じゃなくて“大人”として扱ってもらえるように孤軍奮闘したんだよ」






頼まれた茶と菓子を速やかに持ってきた使用人は、テーブルに準備を整える。


ティーポットから注がれて、蒸気とともに気品ある香りを届ける紅茶。

複数色があり味が違うと思われるスコーンに、付け合わせのクリームや蜜。



準備を終えて出ていく使用人にシュワーゼは礼を言い、椅子によじ登る。

私は反対側の席に座り、シュワーゼと向き合う形になった。




「じゃあ始めようか。お茶飲みながらでも。扉を閉めてれば声はまず聞こえない。安心してね。まずはぼくの話をしていいか?」

「ああ」




遠慮なく菓子に手を伸ばして返事をする。


上質なバターを使ってある香しい匂いがする。

さすが金持ち。




シュワーゼは紅茶を一口飲み、頭の中を整理するように一呼吸おいてから言葉を紡いだ。











「ぼくの最初の、本当の名前はルター。


王族の護衛をしてた。魔王を倒したのは40半ばだったかな。数年後に死んで、生まれ変わって…。



始めは普通に過ごしてたんだよね。出所のわからない記憶が頭の中にあったけど。夢物語だと思ってた。


呪いに気づいたのは…、自分の孫に会ったから。



驚いたな。夢物語じゃなく現実だって。自分の経験だったんだって。そこから呪いについて調べるようにもなった。


今までで知識はだいぶついたけど、魔王の呪いについては全然だな。死んでは生まれ変わって、を繰り返して今に至るよ」






「生まれ変わる期間は決まってるのか」


「いいや、規則性はないね。10年ぽっちのときもあるし、100年くらいかかったこともあった」




スコーンにたっぷりのクリームと少しの蜜をつけて、そのまま飲み込むかのように胃に素早く送るシュワーゼ。


こいつちゃんと噛んでいるんだろうか。

まだ1つ目のスコーンの半分も消化していない私は新たに蜜をつける。




「ゲルハルトの話も聞いていいか?」

「…ああ、そうだな」




紅茶で口を湿らせる。



軽く1000年は越える私の年齢。

それだけ生きてきても、呪いについて他者に話すのは初めてだ。

柄にもなく緊張しているらしい。



再び紅茶に口をつけた。










「私が…、私は、お前の1つ前の代の魔王を倒した。そのときに不死の呪いがかけられた。ゆっくりとだが、一応老いていっている。…が、普通の人間からしたら変わらなく見える。不振に思われるから根城にこもってずっと過ごしていた」




「ずっと?何百年もあそこでずっと?」


「そう。ずっとだ」








代り映えのない毎日。

気が遠くなるような時間。


止まっているのか、進んでいるのか、それすらもわからなくなるような。









「そっか。それは…、想像もつかないな。…不死っていうのは、どう分かったんだ?老いるのが遅いだけっていう可能性もあるでしょう?」


「助かる見込みのない致命傷を負ったことがある。それでも生きていた」






死にたくなるほどの痛みと、それでも死ねない絶望。

死体としか言えない状況になってもなお、変わらず動く心臓。

自身ですらおぞましく気持ち悪いと思う、あの有り様。








「なるほどね。あの伝説はどこまでが本当なんだ?ハンナって女の人が言ってたこと」


「話半分に聞いてたから詳しく覚えてないが…、大筋としては合ってる気もしたな。脚色はすごかったが」




「単独で魔王を倒した?」


「途中何度か共闘したが、最後は一人だったな」


「輝く魔法陣と魔法技術は納得できるな。突如消息不明になったっていうのは?」


「さあな。それは知らない。討伐後デルアンファに戻って数年暮らした。住民からの煙たそうな視線と態度で、むしろ追い出されたと言っていい」


「ふうん。それはだいぶ印象が違うな。腕の魔法陣は?自分で彫ったのか?」


「いいや。師匠に彫ってもらった。これのおかげで私は魔法を制御できるようになったんだ」


「へえ。魔法制御のためなんだ。その時代って魔法陣はぜんぜん世に出てなかったよね。どうやって術を身に着けたのかな。そのお師匠さんは。何もないところから開発した?うーん。…お師匠さんの出身地は?どのあたり?」


「どこだったかな…。一般区の、王都から遠い地区だと言っていた気がする」




「王都から遠い、ね」





何か含みのある言い方。



「何かあるのか」






飲み干したカップに新たに紅茶を注ぎながら、子供らしからぬ笑みを浮かべる。









「数十年前までは全然だったんだよね。王都での魔具研究。今は王都でも研究盛んだけど。でもそれも、魔具が出てきてだいぶ経ってからだ。国や王族の威厳を考えると、早々に積極的に研究してていいと思うんだよね。…なにかありそうじゃない?」









魔具研究へ乗り出すのが遅れた王都。

制御の魔法陣を作り出した師匠は王都から離れた一般区出身。

これらは関係があるのか、否か。




「まあ調べるとしても後々かな。今は王城に入れないし。現状、ぼくはほぼ特区しか動けない。特区中心に調べていくよ。ゲルハルトには外部の情報収集を頼みたい。それで随時、情報共有していこう」




異論はなかったのでうなずく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ