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師匠との出会い

生まれて数年の、幼いころ。

まだ世界から楽しいを享受できていたころ。





学校の成績は良かった。

教師からは褒められ、同級生からは羨望の眼差し。


家では味のしないご飯を食べて凍ったような時間を過ごしていたが、学校は楽しかった。

文字を覚え、基礎魔法を覚え。







ある日、休憩時間に同級生と魔法で遊んでいたら怪我をさせた。

私が使う基礎魔法は同年代の子よりも明らかに威力が強かった。

田舎のその町では起こり得ない出来事だった。







私が"人の子"ではなくなった瞬間。







急激に世界から色が失せていく。


白。黒。辛うじて茶色。

つまらない世界。

心が、死んで。



このころはつまらないよりも寂しかった。

物陰などの隅でひっそりと涙を流した。



寂しかった。

悲しかった。

悔しかった。


魔法を使って、森で動物たちをいじめたりもした。



しかし感情の昂ぶりが原因か、身体の成長が原因か、威力は強くても制御はへたくそだった。

時折、自らの魔法で怪我をして。


氷や炎で皮膚がただれる。

風で切れる。水で打撲になる。


それが余計に感情を荒ぶらせて、さらに制御ができなくなって。






ああ、このころだ。

このころに師匠と出会った。








突然、視界いっぱいにじいさんの顔が入ってくる。


真っ白い髪の毛にしわしわの肌。

好奇心旺盛な緑がかった灰色の瞳が、白黒の世界でやけに鮮やかに映った。


どう見たってじいさんで、足も引きずってよぼよぼ。

なのに笑う顔はいたずらっ子のようだった。






氷魔法が暴発して右手が肘まで凍ってしまった俺は、その重さに立っていられず寝転がって空を見ていた。




「おめさん、何やっとる」

「…何も」




横目にちらと見てそっけなく答える。

凍った俺の腕を見て、じいさんは目を輝かせた。


自らの魔法を制御できていないことを笑われたように感じて、「なんだよ」とけんか腰に睨む。






「そのちみっこい体でそげな魔法を使えるなんてなあ、おめさんすげえなあ」






違った。

馬鹿にされてなかった。


むしろなんか、宝物でも見つけたかのような。




「おめさんそのまんまじゃあ腕が駄目になんぞ。ちょいとわしゃに任せえ」







独特な話し方。

じいさんの癖になれなれしく、なんだか子供っぽい。


そばに腰を下ろして、俺の右腕に手を当てる。

冷たさも痺れも感じなくなっていた腕に、じんわりと届く暖かさ。

すぐに氷は溶けて水となって滴る。






「…ありがとう」

「おめさん、一人で練習かえ。誰かに見てもらったほうがえんじゃねえか」

「見てくれるやつなんかいねえよ!」



怪我をさせちまってから、みんな、俺のことは危ないやつ扱いだ。





わざとじゃない。

傷つけるつもりなんてこれっぽっちも。

ほんの少しだってなかったのに。



自由になった右腕を見る。

自分自身さえも傷つける、制御しきれない魔法。






危ないやつ、で間違ってないのか。







「ならわしゃが見てやろう」

「え?」

「おめさん魔力が強いみてえだからな。きっとすんげえ魔法使いになれんぞ。わしゃが保証する」

「本当か!?」




思いもかけない言葉に勢いよく食い付いた。


練習すればするほどに魔法の威力が上がっていて、ますます制御ができなくなる。



俺は駄目なんだ。

駄目なやつなんだ。



その思いばかりが膨らんでいた。






人として真っ当に見てくれる。

いい魔法使いになれると希望をくれる。


じいさんに懐く理由はそれだけで十分だった。







それからは、毎日のようにじいさんに会いに行く日々。


休みがちだった学校も本格的に行かなくなり、教師ではなくじいさんから教わっていく。

魔法はもちろん、数字、国の成り立ち、魔法を生かせる仕事に料理や掃除。

あらゆることを教わった。






ああ、なんて楽しい。






聞けば答えてくれる。

わからないことは一緒に悩んでくれる。


いつのまにか白黒ではなくなった世界。


家にも帰らなくなり、じいさんの家に入り浸るようになった。



親が全てじゃない。

学校が全てじゃない。


あいつらなんてくそくらえだ。

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