旅の再開
男を村まで送り届け、同行者の増えた旅が再開される。
「ねえ君たち名前は?名前を教えて。私はマーツェ。こっちはゲルハルト」
行先を決めるのはマーツェだ。
マーツェの後ろを私が歩き、更に私の後ろについて子供らが歩く。
半ば後ろ歩きのようになりながらマーツェは問いかけた。
「ヘフテ」
「…ダモン」
褐色肌の方がヘフテ、フードと面の方がダモンと言った。
手を繋いで歩くヘフテとダモン。
ヘフテの方がダモンよりも二回りほど体が小さいが、言動からはヘフテの方が年上に見える。
褐色肌であることを考えると、通常よりも身長が小さいという特徴が表れているのかもしれない。
「2人はどう出会ったんだ?違う村から来たんでしょ?旅で知り合ったのか?」
「ううん。村の外。遊んでて、偶然会った」
新たな魔王が立って十数年。
幼い子供が村の、家の外で遊べる情勢ではない。
魔物被害が比較的起こりにくい地域だとしても、親が家の外には出さないはずだ。
親の目を盗んで外に出て、しかも運よく魔物に襲われることなく、2人は遭遇したということなのか。
どんな奇跡だ。
いやしかし、子供2人で大きな怪我もなく旅をしていた事実を鑑みるとあり得るのか。
一般的な事柄から外れすぎていて頭が混乱する。
「危険じゃなかったのか?親が止めるでしょう。村の外で遊ぶなんて。魔物に襲われるよ。怪我をするよ」
「ううん。平気」
ヘフテが首を振ったところで、突如茂みから巨体の魔物が現れた。
すぐにマーツェが剣を構え、私はヘフテとダモンに防御壁を張りつつ右手に魔力を圧縮させる。
魔物は五つの目玉で私たちを捉え、一目見て弱いとわかるヘフテとダモンを狙ってきた。
すかさずマーツェがそれを阻止しようと魔物の後ろ足を切り付け、うまいこと足の腱を断ったらしい。
動かなくなった自らの足に蹴躓き、前のめりに倒れる魔物。
マーツェは魔物に飛び乗るように上から剣を振りかぶり、首の後ろ、神経が集中している部分にに剣を突き立てる。
しばしの間魔物の体は動こうと足掻いているように見えたが、すぐに息絶えた。
動かなくなったのを確認してから、マーツェは突き立てた剣を引っこ抜く。
食料にするため、毒抜きを行いながらの解体作業だ。
作業を横目にヘフテとダモンは何かを小声で話し合っている。
魔物が現れた瞬間、2人に防御壁を張りながら様子を見たが、特に変化がなかった。
怖がるでもなく、身構えるでもなく、ただ平然と目の前の状況を見つめる2人。
腕に自信があるのか、守ってもらえる立場だと安心しているのか、いずれにせよ奇妙だ。




