睡魔による邪魔
「後ろの子も?同じところから?」
「違う。あっち、…かな」
指さす方向がより西に移る。
魔王城もある方向である。
この森まで来るには、どう足掻いても魔王城と王城を結んだ直線上、魔物が一番多く出現する地帯を通らざるを得ない。
この幼い子供が。
2人だけで?
「そうなんだ。友達なのか?仲いいんだね。いつからこの森に?子供だけで大変だったでしょう」
「んん。別に。そん」
褐色肌の子が返答をしている後ろで、面を付けた子が突然がくりと体を揺らした。
背中から振動が伝わったのだろう、俊敏に反応し、褐色肌の子は面の子の体を支える。
「疲れてるんだろう。子供には辛い時間だ。この中は安全だからゆっくり休むといい」
結界を張った主かのように、男が子供らに声をかける。
面の子が今にも閉じそうな目をこすった。
肉を全て食い切って櫛を火にくべると、褐色肌の子が「そうする」と一言。
面の子の手を引っ張って、火の熱を感じれる程度に端に離れる。
2人は猫のように丸まり、引っ付いた体制で寝入った。
1人寝が寂しいから引っ付いているようにも、こちらを警戒しているようにも見える。
男は微笑ましいものを見る目で子供を見つめ、新たに焼けた肉を手に取った。
睡魔に邪魔され情報を得られなかったマーツェがこちらに近づいてくる。
「ゲルハルトはどう思う?同族なのかな。あの異形の人たちと」
「外見だけで判断するならそう思える。しかしあいつらが来たと言っていた方角は異なるな」
「あの村以外は存在しないのか?村の外にいるんでしょう?褐色肌の協力者。協力者の方の一族とか」
「ユーゲンの例もあるからな。褐色肌の方はその可能性もある。でもあっちの面の方は無理だろう。町じゃ生きていけない」
褐色肌の背に隠れ、顔を見られないように食事をしていた。
手も足も肌を晒さない服装。
面の子はほぼ確実に異形の子だと思われる。
面を付けていれば注目される。
面を付けて生活している者など通常見ないからだ。
私だって面を付けているときには視線を感じているのだ。
あんな怪しい恰好で注目を浴びないわけがない。
噂だって経つはずであり、調査であらゆる範囲を調べている私とマーツェの耳にその噂が入らないなどあり得ないだろう。
ならば、私たちが足を踏み入れているはずの地図に載っている村々で生活していなかったことになる。
余計に異形である線が濃厚だ。
声を潜めて話し合う私たちに男が入りたがったが、「何でもないよ。もう寝よう。私たちも体を休めなきゃ。村まで重い肉を運ばなきゃいけないし」とマーツェが話を終わらせた。
火の番を3交代ですることにし、先にマーツェと男が寝ることになった。
木の根や石で平らではない地面に、各自寝やすい体勢で寝転がる。
私は座って揺らめく炎を眺めながらぼんやりと考える。
魔力の質を見れば子供らが異形の一族かどうか判断できるだろうか。
しかしまだ魔物の魔力と人間の魔力が明確に別物かどうかもわかっていない。
事例が足りない。
どうせ魔物退治や治癒はまだまだ続くのだ。
勝手に魔力を見させてもらおう。




