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はじまりの報
ざくっ、ざくっ、ざくっ。
余計な力を入れないように鍬の重さで振り下ろす。
ずっと調子がよかったのに、最近畑の実りが悪い。
理由はわかっている。
魔物どもが荒らすからだ。
動物が畑を荒らすこともあるが、
動物の被害は簡単に食い止められる。
畑の周りを柵やワイヤーで囲っておけばいい。
しかし魔物どもは無駄に知能が高く、柵なんぞ簡単に、どうにでもして越えてくる。
実っていたものを食い荒らし、畑をぐちゃぐちゃに踏み荒らす。
畑を耕し直すのはここ数ヶ月で何回めだろうか。
長いため息を吐きながらもザクザクと体を動かしていると、遠くから声が聞こえた。
「魔王が出たぞー!!」
振っていた鍬から腕を離し、腰を伸ばして不穏な曇り空を見た。
ああ、魔物の畑荒らしは魔王登壇の予兆だったのか。
魔王討伐までの苦しく厳しい日々が始まる。