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女神は世界を救いたい  作者: 香草(カオリグサ)
9/9

1 初めての譲渡7

 アロダロイトは勇者の接近に気づいていた

 彼としては勇者とお近づきになりいろいろと話したいと思っていた

 興味はあるし話してみたかったのだが、相手がどう出るのかわからない

 勇者は自分が相手をしよう、それよりももう一つの気配だ

 彼は眉をひそめる


いざとなれば我が領の国民だけは必ず守らなければならない

であるからして、何としても境界線で打つ必要がある


 そんなことを考えながらアロダロイトは自分の城から飛び上がった

 ウルハ達に会うために



 ウルハとプリシラは国境線前に立っていた

 高い壁がアロダロイト領とトラキニス領を隔ててそびえている

 アロダロイトが一人で築いたもので、その壁は境界線を丸々囲っていた

 一応トラキニスとは同盟を組んでいるためお互い友好な関係なのだが、これはアロダロイト領から魔物たちがトラキニスに流れ出ないよう防ぐためであった


 その壁には大きな門があり、強力な護衛の付いた行商人たちが時たま出入国している

 護衛はアロダロイトの魔人たちが行っており、そこいらの魔物程度なら問題ならない強さを誇っているため行商人は安全に取引ができていた


 ウルハはプリシラと共に門をくぐる

 勇者である証拠を提示するとあっさり通してくれた

 それだけ勇者は信頼されており、また、待ち望まれていた


 門をくぐると濃い魔素が満ちているのがわかる

 街道には魔素を通さない結界がはってあるので人間でも問題なく歩けるようだ

 ウルハは歩みを進める

 その時何かが急速に接近してくるのがプリシラの神眼に映った

 強大な魔力を持ったそれは一瞬のうちに近づき、目の前に降り立った

 土煙が晴れるとそこには紳士的ないでたちの男が立っていた

 捻じれた角が人間ではないことを告げている

 

「勇者殿とそのお仲間とお見受けするが、間違いはないかね?」


「は、はい」


 急にそう聞かれたじろぎながらも答える

 プリシラは平然と彼を見定めているようだ

 いかに強力な魔王だろうとプリシラが本気を出せばどうということはない

 歯牙にもかけないだろう

 それほどに実力差がある


「私はアロダロイト、この領地の王をしている。一応魔王などと呼ばれている者だ」


「私はウルハ、勇者、です。こちらはフェリシア、聖女です」


 二人は簡単に自分たちの自己紹介を済ませた


「あなたが、魔王様なのですか?」


 プリシラは分かっていたが一応聞いてみた

 なぜなら彼女からすればどれだけ強かろうがこの世界の住人は大した違いがないのだ

 勇者を除いてだが


「私の城に招きたいのだがよろしいかね?」


 彼からは敵意は全く感じられない

 警戒はしているようだが、本来魔王と勇者は対立する関係にあるのだ

 警戒されるのも当然といえる


「はい、ご招待感謝いたします」


 ウルハは招きに応じると判断したようだ

 もし罠ならば制限を解除してウルハを守ろうと考えているプリシラ

 しかしそれは杞憂に終わる


 飛び上がるアロダロイト、プリシラもフライと唱え、魔法でウルハと自分の体を浮かせてついて行った


 魔王の城は白と呼ぶには小さい、屋敷としてなら少し大きめの建物だった

 彼は国民を第一に考えているので自らは贅沢をしない

 しかし威厳を保たなければならないので部下に言われ城だけは建てていた

 彼は小屋でもよかったのだがそれは部下が許してくれなかったのだ


 彼の私室へと案内される二人

 

「さて、ここならば誰にも話は聞かれないから安心するといい」

「あなたは一体どういう目的で勇者殿と旅をしておられるのですかな?」


 ウルハは疑問に思った

 彼は自分ではなくプリシラを見据えているのだ


「何を言っているのか分かりませんが?」


 プリシラは答える

 そして彼に対する警戒を強めた


「私の目はごまかせませんぞ、神よ」


「え!?フェリシアちゃんが?神?」


 驚くウルハ

 

「その少女に勇者としての力を与えたのもあなたでしょう?」


 プリシラは驚いた

 こんな低位の次元に正確に自分の力を見抜くものがいるとは思わなかった

 

「フェリシアちゃん、どういうことなの?」


「はぁ、やってくれますね、魔王」

「この子の前で私の正体をばらしてくれるとは」


 プリシラは魔王に向き直ると少しだけ力を解放した


「ぐ、お、これほどの力を持つ神とは…」


「あなたの想像通り、私は女神プリシラ」

「この子の守護をする者です」


 正体はばれても問題はない

 あとでウルハの記憶を書き換えればいい

 しかしこの魔王をどうすべきか迷った

 障害となるのならば自分が消せばいいのだが、彼からは全く敵意を感じないのだ

 神は世界の住人を守るために存在している

 この魔王も言うなればこの世界に暮らす愛しい住人なのだ

 

 プリシラは力を抑える


「ふぅ、感謝します神よ」

「そのあなたの力の前にまともに立つこともままならない状態でしたので」


「えぇ、あなたはどうやら信頼できそうですね」

「現在この世界は邪神にむしばまれているようですが、あなたは何か知っているのですか?」


 その問いにアロダロイトはゆっくりと口を開いた

 邪神について…


ばれても問題ないんです

記憶を消せばいいんです

アハハ、アハハハハハ

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