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女神は世界を救いたい  作者: 香草(カオリグサ)
8/9

1 初めての譲渡6

 ブラックドッグは群れることがない

 これは明らかに異変だ

 ダルクはそう思いながら冷や汗をかいていた

 手に持つ剣は汗でぬれている

 手汗で獲り落とさないようタオルでぬぐい、ブラックドッグに向き直る

 相手は威嚇するように唸っていた

 眼は血走り、こちらを獲物としてしか見ていない

 

 ブラックドッグは走り出した

 統率されたかのように一糸乱れぬ動きに冒険者たちはたじろいでいる

 だが、街を守るため彼らは自らを奮い立たせた

 誰も逃げない、正面から群れを迎え撃つ

 先陣であるダルクと群れの先頭がぶつかった

 

 ダルクは一薙ぎで一体目のブラックドッグの首を落とした

 そんなダルクに複数のブラックドッグが襲い掛かるが、彼の仲間がそれをさせない

 パーティメンバーの一人である大斧使いのガンブルがとびかかるブラックドッグを真っ二つにした

 もう一人のメンバーカナナが魔法で防御結界を張り、ブラックドッグを食い止める

 そこをダルクが斬りつけ倒す

 Sランクである彼らは楽々とブラックドッグを退けていた

 しかし、Bランク以下の冒険者たちは苦戦しているようだ

 すでに何人かがその牙と爪の餌食となり死んでいる

 

強い、Bランクではかなわんか…


 ダルクは周りを見回し不安になる

 Sランクではあるが、この多さではいずれ飲まれ殺されるだろう

 徐々にだが疲弊もしてきている

 

 焦っていると、ダルクの横を何か小さなものが通りぬけた

 それは恐ろしいほどのスピードでブラックドッグを薙ぎ払っていく

 あっという間に目の前にブラックドッグの死体の山が築かれる

 その山の上に立つのはウルハだった

 一瞬で数十体を切り刻んだのだ


これが、勇者の力か…


 驚くダルク

 周囲の冒険者たちもあまりの衝撃に固まっていた

 そんな彼らを尻目にウルハは次々とブラックドッグを倒していった

 プリシラもそれに続き魔法を行使していく

 傷ついた者を上位の癒し魔法で完全回復させると同時に攻撃魔法であっという間に100体以上を屠ってしまった

 

「たった二人の子供が…これが神に選ばれた勇者と聖女なのか…」


 圧倒的に実力が違う

 身体能力もさることながら、力だけに頼らず実力がちゃんと伴っている

 天才的なセンスとたゆまぬ努力によって身に着けたウルハの力はSランクを凌駕しているといってもいい

 ダルクたち冒険者は素直に感心した


 それから数分ですべてのブラックドッグは打ち倒された

 冒険者側も死者は出たが被害は最小限と言っていい

 ウルハ達がいなければ全滅もありえたのだ

 

 休んでいるウルハにダルクが近づく

 そして跪いた

 

「勇者様、ありがとうございました」

 

 突然のことにウルハは固まる


「え?あの」


「あなたのおかげで我らは救われた。皆感謝しております」


 心からの感謝だった

 街に被害は一切出ていない

 数十名の冒険者は亡くなったが、あの数のブラックドッグ相手にこれだけしか被害が出ていないのは驚きだった


「私は、勇者として役割を果たせたでしょうか?」


 そんなウルハの疑問にダルクは力強くうなずいた

 

「あなたのおかげでこれだけの被害で済んだのです」


「でも、私たちがもっと早く参戦していれば」


「いえ、そう判断したのは私の過信によるものです。決してあなたのせいではありません」


 自らを攻めようとするウルハの言葉を遮ってダルクは否定する

 彼女たちに感謝はすれど恨む理由などない

 それは死んでいった冒険者も同じだろう


 無事デュクーレの街は守り通せた

 たった一時間ほどの戦闘だったが、非常に濃密な一時間だっただろう

 生き残った者たちはみな肩を組み喜び合っていた

 街の住人達も彼らに感謝する

 

 ウルハ達は情報を手に入れ、次を目指す

 目指すは国境、その先にある魔王の一人、アロダロイトが治めるアロダロイト領だ

 この魔王は人間に攻撃を仕掛けてはこない

 その真意は分からないが、手を出してこないので人間たちも国境に防衛線を張るだけであまり気にしていない

 アロダロイトはこれまで人間と敵対したこともないため警戒されてはいないのだ

 実際彼はちょくちょく出歩く姿が目撃されているのだが、彼を見かけた者の情報によると、ただ散歩しているだけだったようだ

 景色を楽しみ伸びをし、空を見上げて陽光を楽しんでいるようだったという

 見た目は角の生えたジェントルマンといったいで立ちなのだが、魔王と呼ばれるだけあって威圧感はある

 しかし魔力などは自らで抑えているのでぱっと見優し気な男にしか見えないらしい


 魔王、人類の脅威となりえる魔族の王、その一角である男にこれから会いに行くのだ

 ウルハ達は気を引き締めて国境へと向かった


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