1 初めての譲渡4
プリシラは正直ウルハのことを低く見積もりすぎていたと思う
街道は魔物がしょっちゅう出没し、並みの冒険者では歩くこともままならないだろう
そんな街道を子供二人で進んでいけているのだ
プリシラの魔法も強力だが、ウルハの亜空断絶は理不尽と言っていい
大型の強力な魔物が時折襲ってくるのだが、そんな魔物がなすすべもなく撃破されていく
プリシラの譲渡はその相手に見合った能力が完全ランダムで付与されるのだが、どうやらウルハは大当たりを引いたようである
「フェリシアちゃん、もうすぐ街につくよ」
一瞬自分で偽名を名乗っていたのを忘れていた
ウルハの戦闘力の高さに目を丸くさせていたが、そう声をかけられて我に返る
「う、うん、それにしても勇者様、強いですね」
女神も驚きの強さ、戦闘経験は皆無なはずなのにどうしてだろうと疑問がわく
「ウルハでいいよ、実は私、冒険者になるために訓練してたんだ」
「よく村に来てくれてたSランク冒険者のダイガさんに稽古をつけてもらってたの」
Sランク冒険者とはこの世界の基準で最上位に位置する冒険者だ
当然その数は少なく、世界に10人程度しかいない
その下にA~Fランクの冒険者がおり、Aランクともなれば大概の魔物に負けることはない
ただこの世界には邪神が作り出したとされる邪竜が跋扈しており、それらはAランクが複数でかかってようやく倒せるもの、そんな邪竜を単独で撃破できるのがSランクだ
ウルハの実力は既にSランクと言っても差し支えないだろう
「そうなんですか、ならば私も負けていられません!もっと役に立って見せます!」
プリシラは聖女という役割で顕現している
ウルハほどではないにしろ彼女自身も強力な力を持っている
もちろん、本来の力は比べるのもおこがましいほどではあるが…
プリシラ自身もここではAランク上位に食い込むだろう
ただ、この世界の魔法は詠唱が必要なので単独では戦えない
勇者と共に戦うことで安心して魔法を行使できた
「あ、町についたよ」
堅牢な壁に囲まれた大きな町、皇都トラキニスほどではないが、それなりに大きな町である
ディクーレというその町は冒険者の集う街で、様々な情報も集まっていた
今現在魔物の増えた理由についての情報もあり、また、邪神や魔王といった悪影響の元凶とも思える者たちの情報も集まっているらしい
アイゼルにそう聞いていたウルハはプリシラにそう説明した
まずはここで情報収集を行うらしい
「というわけでフェリシアちゃんは宿で待ってて、私、組合に行って情報集めてくるから」
「いえ、私もお供します」
「でも、組合には荒くれの冒険者もいるらしいから危ないよ?」
「問題ないです。こう見えて人間相手ならば負けることはありませんから」
「人間相手?」
「あ、いえ、魔物ではないなら怖くないって意味です」
危うく自分が人ではないことがばれそうになった
発言には気を付けようと思うプリシラ
プリシラが組合に行きたいのには理由がある
邪神についてだ
仮にも神とついている者に興味があった
神を名乗るからにはそれなりの力があると思われる
それにプリシラは許せなかった
神は人々を守り導く存在と考える彼女は、邪神のような人々を虐げる存在を許さない
自分が何としても制裁を加えなければと使命感に燃えた