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ライジング ブレット  作者: カタルカナ
物語の始まり
9/60

九発目

「おー体が軽い軽い。このマッサージすごいな今までの疲れもさっきまでの痛みもすべて飛んでったぞ……クソ痛かったが」


 俺はイチカのマッサージを受けていた。マッサージに使う弾丸は弾丸は普通に打ち込む分に関しては痛くもなく何も効果も出ないのだが、イチカがちょうどいい角度で打ち込むことで痛みとともに疲れや老廃物を抜き、終わった後には痛みもきれいさっぱり消えるような代物でそれを扱えるのはイチカとほかに数人程度しかいないらしい。


「どうだった私のマッサージ気持ちよかった?」


 イチカが俺の顔を覗き込み訪ねてくる。それに対して俺は笑顔で、


「マッサージ中は気持ちいいなんてものじゃなかったな……アレは地獄だ。痛みしかなかった」

「――え……他のお客さんは……というかハアハアいう人はマッサージ中が一番気持ちいって言ってくれたのに」


 イチカは思った感想と違ったのか少し残念そうに俯いている。


 てか、この店はドⅯしかいないのか! ……いや、ハアハア言う人限定か……感想を参考にする人がずれていると思う……いやずれている!


「でも、マッサージ中はともかく終わった後の爽快感は何とも言えないものがある」

「そ、そう、そうでしょそれが売りのマッサージだからね」


 俯いた顔を急に上げ嬉しそうに声を上ている……もしかしたら、あまり客から直接感想を聞いていないのかもしれない。……まあ、あのマッサージならしょうがない……かもな。


「それで?」

「それでってのは何だ?」

「常連になってくれるの?」


 急に何かと思えば……常連ってのはなってくれと言ってなる物ではないと思うのだが。親方もお得意様は大切にしろと言っているが、たぶん親方はこんな感じには作ってはいないだろう。でも、答えておこうか。


「常連にはなれないけど、年一ぐらいなら通ってもいいかな」

「……毎日来てもいいのに……」

「いや、それは遠慮しておく」

「……遠慮しなくてもいいのに」


 いや、遠慮させてもらう……あの痛いマッサージは、年一ぐらいがちょうどいい。そういえば、


「お前さ、マッサージ中俺の顔をさ、まじまじとみていたけど、ゴミでもついてたのか」

「え、あ、そうだった? あ、あれ、そんなことないと思うけどな」


 なんで、急にたどたどしくなったんだ? 俺としては何となく気になっただけで、そこまで慌てるものだと思っていなかった。せいぜい『マッサージの時はいつもそうだよ』とか、または『あんたの顔がごみ見たいのだったからよ』とか……いや、後者はないな……多分ないと願おう――悲しくなるから。ともかく、こんな反応が返ってくるとは思っていなかった。ということは、何かあるのだろうか……。


「そうなのか、俺はまじまじと見られていたと思うな……じっくりと、しっかりと。それにお前、最初間違えてマッサージに使う弾丸を俺に撃ち込んだ時も見ていたな」

「あれ、そうだったの……いつもはそんなことないのに、何でだろう」

「最後、なんていった」

「え、何でもないよ」


 最後の声は聞こえなかったがまあ、言いたくないのならいいだろう……でも、これだけは、


「……俺の顔がゴミみたいだったから見ていたわけじゃないよな」

「そんなことないよ、本当にそんな顔ならまず見てないし、ここに連れてこないよ……ゴミと間違えて」


 最後の一言を決め顔で言っている。本人的には面白いことを言っているようだがこっちとしてはやめてほしい……連れてこられてよかった。


「……ふぅ」

「あれ、連れてこられてよかったって思った? 大丈夫、冗談だからね」

「ということは、俺の顔は……ゴミ?」


 とどめを刺された気分だ。もう少しで地獄から抜け出せたのに寸でのところから落ちたカンダタの気分だ。カンダタもこんな気分だったのだろうか……助かったと思ったところで突き落とされるという……まあ、俺自身あまり顔の良さにはあまり自信もないし興味もないのだが……ないはずだ! でも、やっぱり自分の見た目をそう言われると少し悲しくなる。親方なら『そんなの気にすんな! 俺なら気にしない!』とか言うだろうし、美人の嫁さんいるし……俺もこんなことでへこたれてるとだめだよな! お、俺の心は折れない!


「あのー、何か固い覚悟を決めた顔をしているジントさん。勘違いはよしてくださいよ」

「……勘違い?」

「自分の顔はゴミ……とか勘違いしているようですが。勘違いしないでくださいジントの顔はそんなんじゃないし、私から見た感想ですけど、かっこいい顔してます」

「ほ、本当?」

「ホントだよ、だからそんな顔しないで笑顔は健康の秘訣! ね、だから笑ってよ。せっかくマッサージもしてあげたんだから」

「……そうだな! こんなくだらないことに時間を割いてれないな」

「そう、それ! いい笑顔――フフッ」


 俺が笑うとイチカも笑い少しの間二人で笑っていた。


 二人で笑い合い、少しした後俺はイチカの部屋で少し休んでいくことにした……というか、イチカに少し休んで行けと言われたからだが、言葉に甘えさせてもらい少し休んでいることにした。イチカはこれから店の準備と親方に依頼されていたものがあるらしくその準備をしていた。暇になった俺は、何となく部屋にある写真を見ていた。その写真にはイチカとそのお婆ちゃんらしき人が写っていた。その時ちょうどイチカが戻ってきて、俺の視線の先を見て言う。


「その写真気になった?」

「少しな、あれはお前の婆ちゃんか」

「そうだよ、少し前まで入院しててね、体の筋肉が固まっていく病気だったの」

「そうか、それは……」


 少しまずいことを聞いてしまったな、少し前まで病気だったってことは今はもう……。


「……ご愁傷様です」

「……誰に行ってるの? いきなりご愁傷様なんて」


 イチカは不思議そうに首をかしげる。


「……お前の婆ちゃん死んだんじゃ……」

「何言ってんの? 今は元気にそこら辺のゲーセンを回り歩いているよ」

「……え?」

「……あ、そうか! 私の言い方が悪かったね、ゴメンゴメン」

「……何で元気になってんだよ」


 そう言うと『それはね』と、話し始めた。


「……お婆ちゃんに私が施術したらさ、筋肉がほぐれてね、治ったのその病気が」

「良くそれで治ったな! ……そして、よくお前の婆ちゃんショック死しなかったな」

「最後の方、なんか言った?」

「いや、何でもない」


 イチカの一言!


「マッサージってすごいね」

「……そうだな」


 俺はそう返すしかなかった。



 少しした後俺は気になったことを聞いていた。


「そう言えば、親方から依頼が来てたって言っていたけどなんの依頼なんだ?」

「それはね、私の注文する弾丸に使う材料を集める依頼だよ」

「自分で取りにいかないのか親方は」


 俺がため息混じりにそういう。


「そんな、私も作ってもらってるわけだし、親方の方も忙しいんでしょすぐ終わるし問題ないよ」

「まあ、親方はいつも忙しいからな」

「だから私も協力しようかなって」

「ありがとうな」

「なんでジントがいうの?」

「俺の親代わりの親方を手伝ってくれてるし、俺も親方から材料をもらって練習してるからな。一応お前が採ってくれている物も使ってるだろうし」

「そうなの――どういたしまして――エヘヘッ」


 照れ交じりなこの、数刻で何度も見た笑顔をまた眺めていると、親方から連絡が来たようだ。


 ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーガシャッ。


「もしもし、親方ですか」

「おう、ジントか頼まれてくれるか」

「なんですか急に。まあ、いつもの事ですね、何が目的ですか?」


 連絡が来るかもと言っていたしこれがそうなのだろう。


「なんで俺を身代金の要求をする犯罪者みたいに聞くんだ」

「俺はそう言ってません。早く要求を」

「お前面白がってるだろ」

「……いません」


 ……ほんと、何の話でしょうかね。


「まあいいや、お前の近くにイチカは居るか」

「いますけど」

「……じゃあ、告白しろ」


 ――ガシャッ。


 ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーガシャッ。


「ふざけないでください」

「……お前だって」

「……また切りますよ」


 ……次からは出ない……。


「まあ、待て待て。冗談はさておき、イチカに依頼の追加だ」

「分かりました。変わりますか」

「いや、いい。お前が伝えてくれ」


 そういえばイチカとも連絡先交換してんだよな親方は、直接連絡しないからそれも当然か。


「分かりました」

「あと、お前もその依頼について行け」

「それは何で?」

「面白いものが見れる」

「それは楽しみですね」


 親方はたまに適当なことを言うけどたまに本当だったりするからな楽しみにしてて損はないだろう。ということでイチカについて行ってみるか。


「そうだろう、ということで依頼は〈ゴリラ〉だ。それでイチカには伝わる」

「分かりました伝えておきます」

「……じゃあ最後に」

「……………………」

「――告白し……」


 ――ガシャッ。……今日のところはもう出ない。


「誰からだったの?」


 気になるのかイチカが質問してくる。


「親方から依頼の追加の連絡〈ゴリラ〉って言えば伝わるって言っていた。そして俺もついて行けだって」

「依頼の追加は分かったけど、ジントは……ついてくるの? 島の外だよ」

「そうするつもりだよ。でも、島の外を移動する装備はさっきの事故で壊れた。そのおかげで俺は擦り傷で済んだけどな」

「……ごめん」

「謝ることじゃない。もう気にしていないから、でもついていくにはなぁ……このままじゃ島の外には行けないし」


 イチカは少し悩んだような後、口を開いた。


「……私のスクーターに乗せてあげる」

「いいのか」

「二人乗りできるから大丈夫。初めてだけど」

「そ、それは大丈夫なのか」

「事故については大丈夫だけど……」

「俺は事故の方が恐ろしいがな」


 俺はそう言うものの、イチカには聞こえていないらしく一人でぶつぶつ喋り出した。


「……男ってのは恐ろしい生き物だって言うし、お婆ちゃんからは『男を背後に置いておくにはお前は若すぎる。男を背後に置くときは襲われてもいいときだけだ』とも言われているし、私も男に人となんか付き合ったこともないし…………ブツブツブツ……」


 その後もイチカは独り言の様にブツブツと言っている。俺は信用できないのだろうか……今日初めて会ったばかりではあるから仕方がないか。しょうがない……あれなら大丈夫だろう……俺の負担は大きいが。


「おい、イチカ」

「ブツブツブツ……」

「イチカ!」

「は、はい!」


 イチカは驚いて返事の声が裏返っているが、気づいてくれたようだ。


「二人乗りしようという提案はありがたいが無理する必要はないぞイチカ」

「じゃあどうすれば……」

「俺に考えがある」



 徐々に人は目覚める……だが、まだ少ない。もう少しと言ったところだ。

投稿遅れてすいません。

次の投稿は二日後です。

その後からはまた三日ずつの投稿になります。

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