五発目
諸事情により今回の投稿が遅れてしまいました。
「弾丸」とは、世界中の人が使うツールの一つで実に九十九%の人が所持している。使い方というと、その弾丸を単発式の銃に込め撃つ出すだけというものだ。最近は連発できるものも開発されているようだが、一発ごとの弾丸の効果が半減してしまうということで実際に使っている人はいない。その弾丸の効果だが実に多彩で、実生活で使うものから軍隊が使うものまである。そして親方は、世界でも数少ない数多くの種類の弾丸を生み出せる人であった。
「この弾丸は、俺が作ることのできないものだ。この世でこれを作れるのは誰もいないだろう」
親方が真剣な顔で言う。この世にあるどんな弾丸でも作り出せる親方が誰も作れないというのならそうなんだろう。
「だから聞いている。どこから持ってきた」
こんな顔をする親方を見たのは初めてだった。どこか昔を思い出して怒っているような……懐かしんでいるような……。これはどう説明したらいいのかわからなかった……だから俺は体験したことをそのまま親方に話すことにした。
「……信じてもらえないだろうけど神様にもらったんだ」
「……」
親方は、俺の話す信じられないような話を黙って聞く。……顔色一つ変えずに。
「夢……なのかどうかわからなかったけれど、そんな感じの雰囲気で、よくわからない場所で神様と自称する奴と話したんだ。そして、朝起きると俺のベルトに入っていたんだ」
「……そうか」
親方は最後までこの話を聞いてくれた。でも、信じてもらえないだろうと思う。そりゃ、いきなり神様とか言われても誰も信じる人はいないだろう。そう思いながら俺は親方の言葉を待つ。
「……分かった。そういうことならお前が大切に持っていろ」
豪快な笑顔を見せながら親方はガシガシと俺の頭をなでそう言った。
「……俺の言葉を信じてくれたんですか。……信じられない話しなのに」
「何言ってんだ!」
豪快な笑顔を見せながら親方は胸を張って言う。
「俺の息子が正直に話していることなんて親ならすぐわかる。俺が心配していたのはお前がどこかから盗んできたんじゃないかと思ったからだ。まあ、俺よりも腕の立つ弾丸屋なんて聞いたことはないがな。でもお前は盗んでいない」
「なんでそう信じられるんだ。俺が嘘を言っているかもしれないのに」
「いや、それはない」
「なんで断言できるんだ」
「俺は信じているからだ。お前を、ジントという人間を」
信じているか……信じていたら裏切られたくなくて俺は信じることはできていないと思う。今まで会ったことのある人やこの優しい両親でさえ……。だから、俺は嘘をつかないようにしている……正直に話していれば裏切られても自分への被害が少なくなると思うから。それがどうしてももどかしくなる時もある。
「信じる? なんで、俺をそこまで信じられる」
俺は少し不愛想に答えてしまった。自分を信じてくれている人でさえ疑っている自分に嫌気がさして……。
「どうして、お前がそんな顔をしているのかは俺は分からんが、聞きたいならその理由を教えよう」
「……」
「信じるってのは、そいつを見定めることだ。そいつが本当のことを言っているかどうか、本当に言った通り動くのかを」
「……どういうことだ」
「つまりだ、簡単に言うと、相手が嘘をつかないと、言った通り動くと思わないことだ」
「……それは、信じるということじゃないんじゃないのか」
「それは違う。信じるには相手を見定めるって言っただろ、要するに相手が嘘をつくかもしれないという前提で話を聞き、自分で嘘をついているかついていないかを判断して自分で信じる方を決める」
「……それで嘘だったら」
「それは俺が悪い。そいつの事を分かっていなかった……信じ切れていなかったってことかな」
「よくわからないな」
「ああ、俺も言っててよく分からなくなったしな、アハハハハハ。でも、俺はお前を信じるって決めたそれでいいんだ」
親方は、そう言い豪快に笑った。
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親方との話が弾丸からずれていたが有意義な時間だったと思う。その話が終わって俺と親方は外へ行く。この神様からもらった弾丸が本当に打てないのか確かめるためだ。親方にこの弾丸が「俺に好きな人ができないと撃てない」と言ったら「俺に孫の顔を見せるために頑張れよ」と茶化してきた。生きてきて一度も彼女に恵まれていない俺に神様も大変なことを――というか、弾丸を渡しただけだが――させようとしたものだ。
パスッパスッ……気持ちの良くない音が銃からなり、親方も俺も困惑する。その弾丸は見た目は撃てそうなのに撃てなかった。
「やっぱり撃てなかったか。親方この弾丸問題はないですよね」
「ああ、問題はないな」
親方は、俺から銃を受け取り弾丸を確認しながらそう言う。
「親方、神様の言う通り……親方どうしたんですか」
「……さすがだな……」
「……? 今なんて?」
「なんでもない。ああそうだ、お前の話はこれくらいにして配達をしてもらいたいものがあるんだが、頼まれてくれるか」
「いいですよ」
「おお、よかった。それじゃあこの弾丸をここのイチカという人に届けてくれ」
「分かりました、これをですね。他にはありますか」
「ないな、追加があったら連絡する」
「分かりました。行ってきます」
そう言うと俺は、親方の工房から飛び降りた。
次回はこの世界についての説明が入ります。
親方の信じるの補足です
親方が言ったことは、最初から裏切られないという前提で人を信じるなということです。裏切られると怒ったりする人がいますが(私の独断ですが)、それは裏切るかもしれないことを分かったうえで信じていれば、そんなことに怒ることもなくそれを利用することもできるということです。
(私の考えが少し補足に混ざったかもしれません)
私自身上手く信じるについて語れませんが、これはあくまでも私の考えなので「そうなんだ~」というふうに見て下されば幸いです。