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ライジング ブレット  作者: カタルカナ
物語の始まり
49/60

四十九発目

お待たせしました四十九発目投稿です。

「イチカちゃんを守ってやれよ」


 ノイズを走らせながら聞こえる親方の声。ブラウン管テレビには仁王立ちしているその姿が上半身だけ映し出されている。


「これを見ているのがジント以外なのなら忘れてくれ。ジントなら心に刻んでおくことだ」


 開口一番、いや二番目にこの言い方だ。最後の方の言葉だけを強調するような言い方、もともと俺に聞かせるつもりだったのか?


「それでだ。いきなりで悪いが、ジントは俺を連れ去る連中から狙われている」


 本当に急だな。でも、今の俺はそれどころじゃないから驚かないぞ。


「理由は簡単、死人シリーズ〈究極〉を使えるから、だ」


 まあ、だろうな。言っとくが驚かないぞ。ていうか、それはあんたが使わせて……


「奴らはジントの記憶を狙っている」


 ……!? 何で、「使える」からといって「俺の記憶を狙う」につながるんだ? 一応言うが驚いてはいない。そもそも〈究極〉を使ったのだってごく最近だし……それに、奴らって?


「まあ、その疑問も当然だろう。奴らが狙ってる記憶というものは今まで生きてきた記憶のことを指すのではなく、ジントという存在に含まれている記憶のことだからな」


 ……親方のやつ、どう思うのかも予測済みかよ。驚きを通り越して呆れるわ! 驚いてはいない。


「過去の世界、過去の人間が持っていた記憶がどこに行くのか気になったことはないか?」


 ……ぽっかりと抜け落ちている自分の過去なら。


「俺は、俺なりにその答えを出した。記憶はなくならないもので、形を変えてこの世界に存在し続ける」


 ……そうか『なくならない』か。俺の記憶もどこかに……


「それで、俺は〈記憶〉を作った。俺が作ったものは、ただ記憶を閲覧できるようにするものだったんだがな、同時に記憶に干渉できるようにもなったんだ。それを奴らが利用しない手はない。随分と悪趣味なものを作っているだろうな」


 ……イチカのあれは親方が……いや、違うものか……

 確かに、随分と悪趣味なものにされたな。


「それを使って俺は自分の記憶を見た。言っとくが、この弾丸を使ったら過去の記憶が自分の物のように思い出されるというものではないからな。あくまで閲覧するだけだ。それに加えて記憶は滅茶苦茶にぐちゃぐちゃだ。さらに過去の記憶は殆んどが虫食いのように欠けてる」


 記憶のカケラから記憶が戻っても混乱することはないだろうか……


「それでも何とか一人の記憶の一部だけまともに読み取れるまでになったんだ」


 ほう、それはどんな。


「俺の前世は死にたがりの神様だったらしい」


 ……!? 別に驚いてはいない。じゃあ、親方の技術も……


「勘違いするなよ! 俺にある弾丸屋の技術は前世がどうとか関係ないからな。その神様の記憶も俺の一部に過ぎないんだ。探しゃあどこにでも転がっている珍しくもない記憶だ」


 なんか食い気味に遮られた。

 うん、さっきから親方と会話しているような気がする。これは親方が記録したもののはずだが……もしかして後ろに……ないな。


「俺が持っていた記憶で分かったことだが、死人シリーズはその神が作ったらしい。それも今の世界にある〈究極〉〈武神〉〈変態〉だけではなくもっと多くあったようだ。苦労なく試練を通過し、自分のもとへ来させるためだとか。だが、今はその三つで全部だ。その他のは、失われた」


 「失われた」……何か引っかかるなその言い方。そういえばさっき「記憶はなくならない」と言っていた。だが、「失われた」の一言はそれすらも含んでいるような言い方だった。

 テレビの中、下卑た笑みを浮かべる。


「さっき『記憶はなくならない、形を変えて存在する』と言ったが、言葉の通りその三つ以外の死人シリーズの記憶は失われた。俺の言い方で分かっただろう」


 いや、あんたは分からせたんだろ。ほんと何者だよ。やっぱり驚くよりも呆れるわ。


「何だその訝しむような眼は? まあ、もう少しこのおじさんの言葉を聞いてくれよ」


 訝しんでるんじゃねぇよ。呆れているんだ。


「試練がクリアされ、神が死んだ」


 何度か会ってみて思うが、あれって死ぬのか?


「それで、過去の死人シリーズは失われたんだ。これは神様の正体が、この世界の記憶の全て、それが意志を持った存在だからだ」


 ……ふむ、驚……! ちょっとついていけない。


「この神様ってのは、存在自体が世界と同義に見なせるんだ。だから、神様が死んで世界が崩壊して記憶が抜け落ちた。無くなったのは死人シリーズだけじゃないだろうな」


 ……それは、俺の……


「退屈だったんだろう。神様は世界の全ての記憶を持っている。意志をもって存在していても全部分かっているからなんにも面白くない。死にたくもなるか。でも最後の瞬間は楽しかったようだが」



「それで神を殺した人間が次の神になった」



「さて、おじさんの昔話はどうだったかな? 少し俺の想像も入っているが気に入ってくれたかだろうか……さて、本題に戻ろう」


 ああ、俺が狙われている事か。ここは決して驚くところではない。


「ジントが狙われているのは、過去の〈究極〉使用者の記憶を持っているからってわけだ。だが俺と同じく、その記憶があるから絶対に使えるようになるとかそういうことではない。その記憶を持っていたのが引き金となったとはいえ、()()()の見立て通り〈究極〉が使えたのは、ジントだからこそだ」


 だからこそ俺が狙われると。


「で、奴らは〈究極〉を使用できるジントをみすみす見逃すわけがないとそういうことだ。それに奴らは研究者。答えに近づき〈究極〉を利用するためとなればどこまでも調べ尽くす」


 だろうな……って、なんだよ親方その顔は。


「それにな、俺の覚えている限り死人シリーズと記憶の関係は知らないはずだったんだ……まあ、奴らも成長しているんだろうな」


 さっきの頬を膨らませて目を見開いた表情は何だったんだ? それはさておき、死人シリーズと言えばモリちゃんがされていた実験もそうだよな。


「ジントの記憶を利用しても〈究極〉を利用することはそうやすやすとはいかない。だから奴らはどんな可能性も試してくる。それはジント以外にも及ぶ。だからこその最初の言葉だ」


 その忠告はもう遅いよ、親方。


「メインの目的は俺の捕獲だろうから、何か手違いがあればジントは見逃されるだろう……って、さっきから『奴ら』って何者だって顔してるな。では、説明してやろうか」


 それももう遅いよ。とうの前から思ってたから。


「説明と言ったが、いたってシンプル。一言で済む」


『世界をよりよく快適に、世界中の人々のためこの身を懸ける』


「と、そんなことをモットーにしている奴らだ。この身とか言っているが、懸けているのはお前らの身では……何? よく分からないと……では仕方ない。奴らの『組織』その名を教えてやろう。まあ、聞いたところで意味はないだろうけどな」


 芝居がかった様子で話す親方が妙にしっくりしている。うん、なぜ寄り目になる?


「その名は『ブランク』特に良い名も浮かばなかったし、考える気もなかったからな」


 情報量がある一文だな。


「まあ、この名を知ったところでその名を名乗るような奴らでもないからな。聞いたところで意味がないと言ったのもそのせいだ。奴らを象徴するものは何一つない。そもそも証拠を残すようなことはしない奴らだ。表舞台に出るつもりもない」


 さすが「人々のため」と謳っているだけはある。チヤホヤされる気はないらしいな。


「ん、なんだなんだ、このメッセージを残しているのなら話はジントのことを伝えるだけじゃないんだろう、って?」


 言ってないし、思ってない。


「ああ、そうだよ」


 話は勝手に進むらしい……あ、そういえばこれ記録されたものだった。驚愕した。俺はただでは驚かない。


「端的に言えば、俺を助けてほしいってことだ。ブランクに連れ去られる俺は稀代の天才だ」


 お、急に自分を稀代の天才とか言い出したぞ……ってか自分で言うのかよ。


「おっと……ここで、自分で言うのかよ、っていうツッコミはナシだ。事実を述べているだけだからな」


 うん、特に言うことないな。


「稀代の天才である俺は、ちょっくら知り合い(かみさま)のツテを借りてジントに一つの弾丸を持たせている。あいつはそいつにもらったものを大切にしてるみたいでな。少し前にそいつにもらった弾丸を肌身離さず大切にしているんだ。それが何かまでは分からなかったが……まあ、その話だが、今はいい。つまり、そのツテを借りて渡した俺の作った弾丸、それこそが俺を助けるために必要な弾丸だ」


 この〈捜索〉のことか。もともとこいつのために俺はここにいる。


「だからと言ってすぐに助け出してくれとは言わない。何年かかろうが別に構わないが、できることならすぐがいいな。奴らのところの空気っていうか、雰囲気ってのがあんまり合わないんでな」


 ああ、そのつもりはないさ。すぐには行かない。


「ということで……っと、忘れるとこだった。俺の髪を残しておく。なっ! 気持ち悪いとか言うな! ちゃんと袋に入れてるから! 使うときに触らなくていいようにも配慮してるから! ちゃんとジントに渡しとけよ!」


 もうそれ捨て台詞だな。威厳はどこかに捨ててきたか?


「と、心に傷がついたところで、稀代の天才おじさんの昔話とその他もろもろのメッセージはここに終了する」


 お、雰囲気が変わった。そこらで威厳は拾ってきたらしい。そんな威厳が溢れている中、どこか子供が悪だくみをした時のようなそんな顔に。


「何かあるんならそれを全部片付けろ。そして、」


 豪快に笑って。


「必ず助けに来い」


 色々ありすぎて俺も壊れたらしい。何でか知らんが不意に口角が上がってしまう。別に止めるつもりもないから俺はさぞ豪快に笑っているだろう。


 ああ、もとよりそのつもりだ。

ご精読ありがとうございました。

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