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ライジング ブレット  作者: カタルカナ
物語の始まり
19/60

十九発目

午前中に投稿すると前回言っておりましたが遅れてしまいました。

 町は復興へと向かっている。


 壊れた島や建物などは、新しいものが多く見られた。派手に戦闘しすぎたせいで動物たちの返り血や肉片がこびりついてどうにもできなくなっていた家が多くあり、その家の多くがこの機会に立て直してしまおうということで町には建築ブームが訪れ、それに関わる会社はガッポガッポと儲かっているという。そしてその業者が使う弾丸の発注が家の店に来ることによってうちの店も大繁盛! 風が吹けば桶屋が儲かるとはこのことだった。


 そして、心や体が傷ついた人へのケアが行われ町は本当の意味での活気が戻ってきた。それでも動物たちの襲撃が町に出した被害は甚大であった。確かに町としての損失は大きかったようだが、先ほども言ったようにそのおかげで一部の市場には大きな利益が出ていたりする上手くいけば襲撃前より町が潤うかもしれないという人までいる。


 そういえば、俺と親方はなぜか表彰を受けることになった。町長が「町を守ってくれた英雄に贈る」とか言っていた。俺があの巨大ゴリラやその他と戦っているのを見ている人が少なからずいたらしい。表彰されるとき親方は「この町を救った英雄が営む弾丸屋をどうか御贔屓に!」と宣伝は欠かせない。親父に続いて俺も賞状を受け取ることになるが、俺はあまり受け取りたくはなかった……お俺が災害を連れてきたようなものだから……そんな事を考えていながらも、結局受け取ったが受け取ったところでなにをもらうわけではないのであまり罪悪感はなかった。受け取った後の賞状は大切に封印され、もう俺の功績を見ることはないだろう……。


「ジント、一人でなにブツブツ喋ってんの?」


 俺の隣で愛嬌を振りまいている彼女、イチカは常にあふれ出しているその愛嬌を隠そうともしていない。その勘違いを誘発させるようなオーラを纏いながら彼女は俺の顔を覗き込んでくる。


「……この町を見ているとな」

「そうだね……あの時よりずいぶんときれいになったよね」

「……そうだ。あの時というと……家にいたあの侵入者とは何してたんだ?」

「侵入者? ……ああ、あの人達の事かな。その人たちは私の店の常連さんだよ」

「常連? なんでまた……」

「それはね……」


 イチカが言うにはこうだ、イチカはマッサージを受けたいと言えばどこにいるときもしてあげていたという。それで、イチカの店に行っても開いておらずマッサージを受けられなかった客達がどうしても受けたいからとイチカを探していたらしい。……それって、


「イチカのせいじゃねーか!」

「そう! ここまでして受けに来てくれるお客さんがいる程のマッサージ屋ってことだね!」


 パアっと笑顔を花開かされるイチカはやはりかわいい。でも、侵入者については悪気もなにもないらしい。……侵入者の方も人の家に押し入るときはドアとか窓とか壊さずに入ってください……って、侵入者はどのように入っても許さないから! 入るなら店が開いているときにしてください! この前の侵入者は、不法侵入と器物破損で任せるところに任せたが……そういや母さんもその時イチカといたよな。


「イチカ、あの時母さんもお前と一緒にいたけど、母さんはマッサージ出来ないはずだが何してたんだ?」

「お母さんはね私が施術しているとき動かないように踏んでもらっていたんだよ」


 うん……動かないようにまでは分かる……なぜ踏む!


「私が施術するときはいつも気持ちよさそうな顔をして受けてくれる人達なんだけどその時はなぜか撃つたびに動き回っちゃってね、私がお母さんに抑えてって頼んだの」

「……そうなのか」

「でもね、それでも動き回っちゃって、どうしたらいい? って聞いてみると「はぁ……はぁ……踏んで……はぁ……その美しい脚で……はぁ……嗜虐的に……踏んで……はぁ……」って言われたの」


 イチカは聞いたセリフをそのままいっただけだろうが、その声は演技っぽくなくてイチカの声でイチカではない人がセリフを言っているように聞こえた……声優にでもなれるんじゃないだろうか。てか、イチカの客ってやっぱドⅯじゃねーか!


「それでね、お母さんが恐る恐る踏んでみるとね、ピタリと動きが止まって静かにマッサージを受けてくれたの」

「……そうか」

「お母さんも慣れてきたのか最後の方はとてもいい笑顔だったな……むしろお母さんのせいで動いていたぐらいだし」


 母さんも乗ってきてるじゃねーか! これで母さんが嗜虐的な遊びを覚えたらどうすんだ! 多分ターゲットにされるのは親方だが……なら問題ない。


 そうして話は終わった。二人にの間には無言が続く。それでも二人は隣り合い歩調を合わせ進む。その歩みには特に意味はなく、二人でいることも完全にではないが特に意味はない。二人の間に流れる無言を破っったのはイチカだった。イチカは俺の方を向き、いつもより少し小さく少し落ち着かない声音で話しかけてくる。


「ねえ、ジント。手繋がない?」


 それもそうだと思う。いつも通りの自然な感じではなく改まってしまうだろう。イチカを見てもいつもよりおしゃれに着飾っている。少し大げさに言ってしまっている気がするが今俺とイチカは只今デート中だ。


―------------------------


 時はイチカが引きこもった時まで遡る。


 イチカに脱がされた俺はただいまパンツ一丁で廊下を這っている。それもそのはず今の俺は筋肉痛で動けなくなるところだからだ。これを直すにはイチカのマッサージしかないと思うのだが、そのイチカが部屋に閉じこもってしまった。その部屋に今向かっているのだが体が痛すぎてうまく進めない。ほふく前進したり転がってみたりジャンプなんてしようもんなら死ぬほど痛かった。やっとのことで部屋につくと俺の存在に気づいたのかイチカが声をかけてくる。


「なんですか! 邪魔しないでください! 私は一人でいます!」

「……なん口調が変わっていないか?」


 痛む体を起き上がらせ扉に寄りかかりイチカに話しかける。


「そんなことありません! 私はいたって正常です! さっきから言うように邪魔しないでください私は匂いを嗅ぐのに忙しいのです!」


 こんなことを言ってイチカは恥ずかしくないのだろうか……しかも嗅がれるのは俺のシャツだからかなぜか俺が恥ずかしくなってくる。


「ジントさん。あなたは幸福です! こんなに可愛い私に匂いをかがれていることなんてそうそうあることではありません! 世界の中心で喜びを叫んでいいほどです」 

「自分で言うのかよ!」

「これはジントさんが私に言ったことです! 少なくともあなたから見れば私は可愛いということになります。それならあなたの前でなら自分で可愛いと言うことは何らおかしいことではないです!」

「確かに言ったけど! それ……アグッ」

「どうしましたか? 私を誘い出すための演技でしょうか?」

「ちげーよ。さっき使った弾丸で全身筋肉痛でもう動けないんだよ! ……ああ、声を出すのもつらい」

「…………それでどうしたんですか?」


 なんだかイチカの声のトーンが上がったような……。


「お前のマッサージを受けたいと思ってな。……全身筋肉痛にも効くのかイチカのマッサージ」


 ――バタンっ……扉が激しく開き寄っかかっていた俺は吹き飛ばされる。数メートル飛ばされそこから二回三回と縦に回転する。とてつもない衝撃と筋肉痛により俺は声にもならない自分でも驚くようなうめき声をあげていた。


「こんなに筋肉が固まっちゃって……って、その額の出血は何! ジント誰にやられたの!」

「お前だよ! イチカ!」


 俺はその叫びごと意識が飛んで行った。


―-----------------------------


 目が覚めると俺はベットの上にいた。さっきまであった体中の痛みはなくなりいつも以上に体が軽いように思えた。……イチカがマッサージをしてくれたんだろう。そのおかげか知らないが、ひどい夢を見た。それは人の言葉では言い表せられないような残酷なものだった……でも夢だからほとんど覚えていない……夢でよかった夢で……これは! ……俺の手元にはぷにぷにとした感触があり……うん、まだ夢の中のようだ……よし! 寝よう!


 そうして夢から覚めようと寝に入るとすぐに夢から覚まされた……というか夢じゃなかった。


「ジント起きたね。疲れてたからかだいぶうなさててるようだったから心配してたよ」


 ベットの横からするなら分かるが、眠たげなイチカの声は布団の中から聞こえた。


「……イチカ……なんでそこに居る?」

「なんでって言われてもなぁ……うなされてたから親方さんにどうすればいいのか聞いたら「添い寝してやるといいぞ」って言うから」

「それで……なんでその恰好なんだ」

「私は寝るときいつもこうだよ」


 今のイチカの姿は、なんというか……生まれたままの姿だった……言い換えるなら裸だった……正確に言うとお腹には冷やさないためか恥ずかしいからなのか何かが巻かれていた……それなら一応パジャマぐらい来てほしい。……てか俺もパンツ一丁だ! いやそれよりイチカだ。


「なんでほぼ裸なんだよ!」

「パジャマ着てみたけどやっぱり苦しくてね」

「じゃあ腹のはなんだ!」

「これを外せっていうの……私をそんなに辱めたいの?」


 両手でお腹を隠し、顔を赤らめてこっちっを見るイチカだが、お腹以外は隠しきれておらず……というかもともと隠す気はないようで胸やらなんやらはオープンである。それに、お腹を隠そうとするから腕がさらに胸を強調し、もうとんでもないことになっていたので、俺は布団をイチカに被せる。


「腹を見られて恥ずかしいのなら、それ以外のところを見られても恥ずかしがれよ!」

「なんで?」


 本当に分からないと言った顔をしている。イチカの感覚はやはり……というかずれてる。


「何でじゃねーよ! 目のやり場に困るだろうが!」

「ジント困ってないよね、ずっと私を見て話してくれてるし」

「……まあそうだが、でも他の奴のところで簡単に裸になんなよ。それに添い寝もやめとけ変に欲情されたらお前も困るだろう」


 イチカは少し考えるような仕草をする。


「分かった、覚えておくよ。……でもそう言うならジントはどうなの?」

「俺は、そんなことにはならないかな?」

「なんで疑問形?」

「さあな。でもそんなことはいいんだよ。ちゃんと気をつけておけよ」

「ジント以外に裸を見せなきゃいいってことだね」

「そう言うことじゃないんだけどな」


 そう言うと俺とイチカは各々着替えてキッチンに向かった。窓を見ると日が差し今は朝食の時間だったようだったからだ。最近もといここ数日いろんなことがありすぎて時間の感覚がおかしくなっているようだ俺の感覚では夕飯時だと思ってたがこの通り朝食だった。


「朝食出来てるわよ、イチカちゃんも遠慮せずにいっぱい食べてね」

「お母さんありがとう遠慮なくいただきます」


 母さんとイチカのツーショットを見ていると本当の親子のように思えてくる。


「うちに娘が出来たみたいだな」


 俺の隣で仁王立ちしている親方がそう言う。


「そうですね、いい親子のように見えますね」


 それに対して俺も素直に答える。


「それでジント……どうだった?」

「どうだったってなんですか? 親方」


 親方は急に小声になり耳元に話しかけてくる。一応俺も小声になり会話を続ける。


「添い寝だよ、そ・い・ね。俺もちゃんと考えてアドバイスしたんだぞ」

「ちゃんと考えてそれですか」

「うなされてる人をそれからは助けられないが、人に触れて安心させてやることはできると思ってな」

「……まあ、考えてくれていたことにはありがとうと言っておきます」

「おう、どういたしましてだ!」

「それは、イチカが裸で寝る人だと分かって言ったんですか」


 ――ズキューン……親方に衝撃が走ったような効果音が聞こえたような気がする。


「……まさかお前見たのか……裸を」

「しょうがないじゃないですか……起きるとその光景が目に入って来たんですから」

「……どうだった、見た感想は……どうだったんだ!」


 親方は小声のまま叫び、俺をブンブンと揺らす。


「揺らさないでください……そうですね、きれいな肌をしてました」

「……本当にそれだけか……触りたいとか舐めたいとか抱きたいとか思わなかったのか!」

「なんですか、親方はそう思うんですか」

「当たり前だろ!」


 即答の断言だった。


「じゃあなにか、イチカちゃんに魅力がなかったのか?」

「親方も見て分かるでしょう。断じてそんなことありませんよ……ていうかもうその話はやめにしません」

「まさか……もうイチカに飽きたのか」

「何の話ですか! ていうかあんたあんなに綺麗な奥さんがいるのにイチカに欲情しないでください」

「何を言っているんだジントは。これは……男の本能だ!」


 親方は遠くを見据えて凛々しくそう言う。


「じゃあ母さんに報告しますね」


 ――ずざっ……親方は母さんとイチカに見えない物陰に瞬間移動すると見事な土下座をしていた。


「それだけはやめてくれ、あれはもう嫌なんだ」

「分かりましたお母さんには言いませんから」

「本当だな! 本当なんだな!」

「いいませんから安心してください」

「分かった信じよう」


 親方はまだ少し震えている。途中途中少しにやけているところもあるが、一昔前までこんなことはなかった。最近何かあったのだろうか……もしかして母さん……目覚めちゃった? 

 この前の一軒で母さんはとてつもないものに目覚めたようだ。親方はもう嫌だと言っていたが、にやけてもいることから……何だろうここからはもう考えないようにした方がいい気がする。


 親方も復活し俺と母さんとイチカと親方と食卓を囲み楽しく食事をしていると、ニュースでこの前の森の事が放送されていた。


『……森から来た動物たちは、人を襲うものの英雄たちに退治され大半は逃げ、町は救われました。ですが動物たちの動きにはおかしなところが見受けられておりその謎を来てくださった先生方に解説してもらいます。早速ですが動物たちは女性服のようなもの……』


「あの動物たちはなにしに来たのかしらね」


 口の中の者を飲み込んでから母さんはそういう。


「さあな、分からねーな。俺が見ていた動物も何かくわえていたからな」


 親方もそれに答える。……親方、口に物を入れて話さないでくださいよ、母さんを見習ってください。


「俺には襲うというか何かを探すような選んでいる用な奴もいた気がします。まあ俺の周りでは〈囮〉のおかげで俺ばかり襲ってきたんで遠くの奴らがそう見えただけですけどね」


 俺がそう言うと、箸を止めていたイチカがボソッとつぶやき俺に話しかけてくる。


「私たちが連れてきたようなものだから私たちで解決したいな……ジントもそう思わない」

「まあ確かになんで森からここまで追ってきたのか気になるけどな」


 俺がそう話すと親方が割り込んできた。


「なら俺が依頼しよう! 「森の動物の不審な動きの謎を解決する」という感じでどうだ!」

「親方急にそんなこと言ったってイチカは店を持って……」


 営業日は知らないが、イチカはこの前から店を開いていないだろう。イチカも生活があるんだから親方もそこを考えて……。


「報酬は六か月分でそれとマッサージ屋を一時的にここでやらせてください」


 ……え?


「いや三か月分だそしてマッサージ屋の利益の一部を食事代としてうちに収めること。あと、手伝いとしてジントをつける……これでどうだ」

「はいっ、その依頼承りました!」


 いつもこんな感じでイチカは依頼を受けているのだろうかというほどスムーズに依頼は決まった。……ちゃっかり仕事をする許可までもらっているし……そして俺はついでの景品のように扱うのはやめてほしいです。


「ジントもいいよなっ!」


 親方が遅くも俺に確認を取ってきた。……イチカの手伝いをするなら俺にも何かあってもいいだろう。ということで、


「イチカ、今度デートに行こう」

「……え」


 イチカは急に言われたことに頭がついっていっていないようで、呆然としている。


「一緒に依頼を達成するために動くんだろならデートをしてお互いのことを知った方がいいだろ。あと、可愛くして来いよ」


 笑顔で俺がそう言うと呆然としながらも、イチカは少し嬉しそうな表情を見せ、


「……はい」


 と短く答えた。


 親方は冷やかしもせず母さんと微笑ましいという顔で俺たちの事を見ていた。

読んでくれてありがとうございます。

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