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ライジング ブレット  作者: カタルカナ
物語の始まり
18/60

十八発目

 ただ今の天気――快晴ときどき獣の群れ又は血の雨の恐れあり……うん、これは天気予報にあらず。これは未来予知……この光景を見る前だったら……。


 快晴は快晴なのだが、辺りは血のゲリラ豪雨が襲い血や肉片やらが島にへばりつき、骨が刺さりひび割れている。それに加えあの巨大ゴリラのお土産のおかげで……ここら一帯は進入禁止エリアにした方がいい……いや、ほんとマジで。

 

 そう言えばあの巨大ゴリラのその後は、俺の一撃で沈んだ後居なくなっていた……いやそれは間違いかもしれない。ともかく、あの巨大なゴリラは居なくなっていた。その近くにバラバラになっているゴリラの死体があったのを見た。……多分その死体がそのゴリラだったのだと思う……イチカとの狩りに時にあのサイズのゴリラは居なかったから……森の動物というのは巨大化できるのだろうか……。


 そんな事を考えている俺の思考は隣(正しくは十数メートル先)にいる親方の一言にかき消された。


「おい、ジントそういえば」


 親方が俺に話しかけてくる。何か面白いことを思い出した時のようににやけている……なんだろう殴りたい……あ、間違えた! いやな予感がする……ん? それなら殴った方がいいかな?


「お前さん、『好きな女にかける言葉も俺が決める!』とか言ってやがったな……もしかしているのか好きな子が」

「な! そんなのいねーよ……てかそんなセリフいちいち覚えてんのかよ」

「後でいじれそうだったからな」


 やっぱり殴ってた方がよかったか!? ……でも今の俺じゃ軽く動くことしかできないからな……この全身筋肉痛あと十分くらいしか動けなさそうだ。〈究極〉の代償はきついな……何かおかしい……そうか〈究極〉を使った人は良くて死ぬ悪くて死ぬ奇跡が起きて全身筋肉痛の代物だよな……奇跡が起きてきついとか贅沢な気もする……なんで俺こんな弾丸使ったんだっけ? まあ、親方が何とか使えるようにしてくれたんだよな……多分? ……記憶障害……これも代償か!


「どうしたジント急にそんな顔して」


 親方が急に黙り込んだ俺を心配したのかしてないのか分からない表情で覗いてくる……そして少しバカにしたような笑みを浮かべていやがる……今度殴っておこう! そうしよう!


「何でもない」


 そう俺が端的に答えると「そうか」と一言。またさっきの話を続けるようだ。親方はそんなことをして楽しいのだろうか……楽しいからやってるんだろうな……さて、どうしたものか。


「俺が最初に言ったキーワードは『俺はイチカが大好きだ―!』で、それにお前はさっきも言ったが『好きな女にかける言葉も俺が決める!』って言ったよな。あれれ~これじゃあイチカが好きですって言ってるようなものだね~」


 親方は体をくねらせながらイントネーションをつけて俺を冷やかすようにそう言う……ほんと気持ち悪いんでやめてもらえませんか親方……こんな描写誰も求めてません! 俺もそんな親方の姿求めてません! 本当にダレトクですか! ……ああ、どこかに精神から全て掃除してくれるお店はないのだろうか……いやそれで親方が変わったとしても前の親方は死んだことになる……ような気がする……やっぱり自分で変わろうか親方。……母さんに調きょ……じゃなくて、教育しなおしてもらおうか……。


「親方何言ってんですか? その前に『好きな女も!』って言ってるんで親方のキーワードに対していったわけじゃないのでセーフです」

「あ~にげた~」

「セーフ」

「にげた~」

「セーフ!」

「にげた~!」

「てか、何がセーフだ! 何に対してだ!」

「にげた~」

「もう気持ち悪いんでその両手を合わせて顎にのせるポーズ止めてもらえませんかねっ!」

「え~」


 そんなやり取りをしているうちに親方の工房につく。血に染まった町の復興は後からするとしてもう休みたい。俺も、もう少しで動けないしイチカにマッサージでもしてもらおう……あまりしたくはないが、この痛みも少しは紛れるだろう。親方は相変わらず気持ちの悪い視線を送ってくるが……無視だ!。


 俺と親方は島に降り立つ。そしてすぐに違和感に気づく。工房のドアがないのだそれと窓も割られ家の周りは足跡だらけ……これは、


「「鍵を閉め忘れた!」」


 見当違いの感想とともにジントと親方は工房突入の作戦会議をする。ジントは生まれたての小鹿のように? 親方は食事を終えたばかりの牛のように? 謎の表現である。


―----------------------


 カギというものは大切なものである。


 一つ――大切なものを守るために。

 一つ――人に見られたくない秘密を守るために。

 一つ――あれ? 他にあったっけ……何か見つけたらこの番号まで! 電話つながらないけどね。


 …………つながらないのは本当です。


「くそっ、繫がらないこれじゃあ通報できない」

「ジント、やっぱり突入するしかないんじゃないのか?」


 親方が眠そうな声で話しかけてくる。今にも微睡に飲み込まれそうになっているが、その原因は親方が使っていた弾丸にあるようだ。やはり肉体強化型の弾丸は少なからず代償はあるようで、丁度いま親方に襲っている物はそれだ。

 俺と親方は工房の状況を確認してすぐに通報して、それができないときは突入しようという話になった。そして俺はすぐさま通報そして親方は何かの弾丸をいじりだしていたのだった。そして今、


「突入するにも俺は筋肉痛、それにあと八分くらいで動けなくなりそうだ。さっきからじわじわ痛くなってきたから多分そんくらい」

「俺はもうだめだ調整し終わったら……もうだめだ……」

「お、親方ー!」


 気持ちの良い日に当たり、お昼寝を始めようと倒れ始めている親方に近づこうとすると、親化はヌルっと起き上がる。


「……まて! ……ジント」


 とても眠そうである。というか寝ている。もはや夢の中からこちらに話しかけてくる。と同時に何か投げてきた。俺はそれを滞りなく受け取る。


「これは……」

「それは、撃てば当たる……全員に当たる……お前を見てる全員に……くかー」


 寝てしまったようだ……でもこれはよくわからないが、


「もしかして、これで無力化できるのか? ……侵入者を」

「……くかー……ぐがっ……イチカ……に……気を……つけろ……もしか……したら……〈囮〉……時間……」

「ありがとう親方これで侵入者を懲らしめられる」


 親方は気持ちよく寝言を言って寝てるようだなこのまま寝かせておこう。


 よっしゃー! 侵入者ども! 血祭りにしてやるぜ! (捕まえるの意)そして、この家に侵入したことを後悔させてやるぜ!


 俺は痛む体に鞭を打ち、全力ではなく疾走とも言えない全力疾走で工房に乗り込む。工房に飛び込むと最初に作業場が見えた。だがそこには誰もいなかった。


「次っ」


 時間の無い俺はまた走り出す。作業場の先の廊下を抜けキッチンに入る。そこにも誰もいなかった。


「次っ」


 その後、家中を走っていると俺の部屋の方から声が聞こえてきた。その声は何ともなまめかしいもので……「あ……んっ……んんっ! ……はぁ……はぁ」というものだ。侵入者たちは何をしているのだろうか……と、その中に聞き覚えのある声もあった。「はぁ……はぁ……まだやるんですか」イチカの声だった……これは! 何かされているのか! 俺は痛む体に強引に言うことを聞かせ足を速める。すると俺の部屋の周りには人だかりがある。俺にかかっている〈囮〉の効果範囲に入っているようで俺に視線を向けてきている。


「……こいつらが侵入者か! お前ら! 人の家でなにしてんだ!」


 ――パンッ……俺は、筋肉痛によりブレブレの銃口を向け、引き金を引いた。発射された弾丸は俺に注目をしている人数分、分裂していた。そしてそのままヘッドショットを決める。当たった瞬間に意識を失い、倒れていく――キンッキンッ……部屋の中で何かを弾く音が聞こえた。


「この音……もしや、弾丸を弾いたのか?」


 痛む体を動かし俺は部屋に向かう。部屋の周りにいた人には見事命中。部屋の中にいた人は二人を残し全員倒れていた。


 一人は我が母。その姿は俺が出発したときに来ていたものだった。何があったのかその服ははだけかけているが大事な部分はしっかりと隠されている。全身にうっすらと汗を浮かべ、呼吸も荒くなりなによりそのミロのヴィーナスも羨むような美しい脚は床に倒れている女性を強く踏み続けている。


 もう一人は、我が家のに招かれた? 客人イチカである。ペタンと女の子座りをして、その状態で銃を持っているという何とも言えない光景を作り出している。その銃口を弾丸が飛んできた方向に銃口を向けているので、撃ち落とした犯人はイチカとみて間違いないだろう。


 俺も親方にもらった弾丸の効果を把握していなかったのでイチカが撃ち落としてくれたのは不幸中の幸いだった。そのおかげで母さんにもイチカも傷つかずに済んだのだ。……俺が把握していなかったのが根本的には悪いのだが……そこは気にせず。


「母さん、イチカ無事でよかった。……なにもされてない訳はないよな。さっき何をされていたんだ?」

「あら、ジントおかえりなさい。あらら、お客さんどこに行ったかしら」


 そうだった。俺はまだ〈囮〉の効果が続いているんだ。あと二分ってところだ。やはり俺以外見れなくなっているらしい。でも攻撃対象とは認識されていないのが助かる。


「……イチカ、大丈夫か」

「ジント、お帰り。そんなに汚れちゃって……一緒にお風呂入る?」

「ああ、そうだな……いやいやいやいや違うだろ!」


 顔を少し赤くし、新婚ホヤホヤの初々しさを醸し出しながらそんな言葉を紡ぐイチカ。……いや、確かに嬉しい誘いだが、このまま乗るにはまずい気がする。……乗るって変な意味じゃないから! 勘違いしないでよね! ……我ながら誰に言っているんだか……。


「いきなりどうしたんだよ! イチカ、熱でもあるのか!」


 俺は体調が悪いのかとも思って心配しておでこに手を当ててみたが熱はない。イチカはそんな俺の行動を気にすることもなく少ししょんぼりした口調で言う。


「ジントが汚れてたから……お風呂に入って背中を流してあげようと……」

「うん、俺が汚れているのは分かる。でも何で一緒なんだ? 俺と? 嫌じゃないか?」

「なんで嫌になるの? そんなわけないよ。ジントに裸を見られるくらいへっちゃらだよ!」


 即答だった。むしろ最後の方が被るくらいの即答であった。……だがおかしい、確かに俺に膝枕をしてくれたので、ガードは緩めだとは思っていたが、これはおかしい! 風呂に入るってことは……。そして、俺は少しおかしくなっているイチカに話しかける。


「……お前、おかしくなってないか?」

「おかしくなんかなってないよ! 私はいたっていつも通りだよ!」


 よく酔っぱらっている人もそんなこと言いますよね……そういう人に限って酔っぱらっているよね。


「……一緒に入ってどうするんだ?」

「洗いっこするの! お互いの体をゴシゴシと! あわあわと!」


 ……ってことは、


「お前のお腹も洗うことになるんじゃないのか? 触られるの恥ずかしいんだろう」

「……大丈夫……恥ずかしいけど……我慢する……だから入ろっ」


 これはあれだな。確実におかしくなってるな。この前触った時怒られたから……確実におかしくなってますね。この状態のイチカと風呂入ったら正気に戻った時……うん、やめておこう。……? やめておこうっていうことは俺って結構乗り気だったりするのだろうか……しょうがない男のだもん! ……おかしくなっているのは俺の方かもしれない。そうしているうちにイチカの覚悟が決まったらしい。


「ジントが入りたくないって言うなら……私が入れちゃう!」


 イチカが俺に飛び込むなり俺が抵抗する間もなく上半身をはがされた……というかイチカの力が強すぎて抵抗できなかった。いや筋肉痛のせいか? そうでなくても負けそうな気がする……なんだろう悲しくなってくる。

 ていうか筋肉質ではなく、その出るとこは出てほっそりしたその身体のどこにそんな力が秘められているのでしょうか? 確かめてみたいような気がする。……やっぱり俺おかしくなっている気がする! ……もしや、イチカに魅了されているのか! まだ会ったばかりなのにそんなことはないはず……ないはず? だ。

 そうこう言っているうちに、いつの間にやら先ほど俺からはぎ取った母さんが断固として戦闘服と主張していた服の下に来ていたシャツをダボダボにして着ている。それと同時に俺はピンチに陥っていた。

 俺はただいまパンツ一丁……誰がそんな情報ほしいかわからないがそう言っておく。そしてその一枚も剥ぎ取られてしまいそうになっている。


「あらあら若い子は積極的ね」

 

 そこにお母さんが入ってきた。……これを見てその一言で済ますとはさすがは母さんです。


「母さんも笑っていないで助けてくれよ」


 俺が必至な形相でそう言うと、


「いったい何から助けるっていうの? あなた一人でイチカちゃんの妄想をしているからとりあえず積極的と言ったのよ」


 そうかまだ効果は続いていたのか。イチカの一言目が衝撃的過ぎて忘れていた。でももう少しでこれは切れるその時……。


 ――〈囮〉効果時間終了――


 俺のパンツをはぎ取ろうとしていたイチカの顔が曇っていく。〈囮〉の効果がようやく切れてくれたようだ。……これが風呂の中ではなくてよかった。


「なっ……なんでジントのパンツ……なんで私このシャツ着てるの?」


 イチカが引っ張っているのは俺のパンツ。その状況がさぞ分からんだろう。俺にもわからん! だが、成り行きぐらいは説明してやるか……ニヤリ。


「覚えていないのか、自分で脱がせてシャツ着て今度はこれを……」


 俺が淡々と説明していると……。


「……なんでなんでなんで……」


 顔を真っ赤にしてイチカがそう言う。……相変わらず可愛い顔をしている。今はぷっくり膨れて愛嬌があるマスコットみたいになっている。


「何でってそれは……」

「止めてよ!」


 可愛らしく睨みつけながらそう叫ぶイチカ……まてよ、止めてということは、


「……覚えてるのか自分がしたこと」


 俺が恐る恐るそう言うと顔をもっと赤くし、俺を何度かぽかぽかと殴ってから落ち着かない足取りで動き回る。……ぽかぽかと、と可愛らしく言ったが実際は痛かった。でも、殴り方も可愛かった。

 そしてそのままイチカはこの場を去ろうとしている。そう言えばイチカが着ているのって、


「俺のシャツ、返してくれない?」


 俺がそう言うとイチカは即答で断ってきた。


「罰として私がもらっておきます! そして匂いを嗅いでいます」


 罰としてって……俺何もしてないんだけど! 被害者なんだけど! てか匂いを嗅ぐって……もしやと思いますがイチカさん……あなた、変態さんですか?


「なんでそんなことを……」


 ……それを言われたら誰でもこんな返事しかできませんよね。


「私はこのにおいが好きなようなので。そして落ち着くのでこのにおいをかいで落ち着いてきます」


 そういうだけ言ってイチカはさらに奥に部屋に引きこもるのだった。

日ごとに投稿時間が遅くなってきている気がします。

次の回は18日の午前中に投稿したいと思います。(遅れたらすいません)

ということで今回も読んでくださりありがとうございました。

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