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ライジング ブレット  作者: カタルカナ
物語の始まり
16/60

十六発目

ラブコメアニメの自分的に面白いものを見つけてしまったので、執筆に入れずなんだかんだこんな時間になった次第でございます。

これを読んで楽しんでくれると嬉しいです。

「……あいつらっ……なんなんだ……何かひらひらした物を……」


 乱れた呼吸で、俺を中心とする全方向からくる攻撃をなんとか躱しながら俺は町に広がる奴らを一匹ずつ確実に仕留めていく。何匹も倒しているからか、奴らが俺の方を狙ってきている――パスン……いや違うな俺が倒したからではないと思う――パスン……確かに倒すことで脅威とされねらわれているのも確かだと思うが――パスン……主な理由は、


「親方! さっきから俺に打ち込んでるそれは何ですか! 撃たれるたびに狙われている気がするんですが!」


 ――パスン……


「聞いてんのか! 親方!」

「お、おお、ジント聞いているぞ……断じてさっきの母さんを思い出してぼーっとしているわけじゃないからな。……それにさっきからお前に支援用弾丸を撃ちこんで……ありゃ……」


 なんだろう……予想はつくけど、いやな予感がする。


「ありゃ……ってなんだ! 親方お前……俺に何撃ちやがった!」

「すまんジント……お前のヘイトを上げる弾丸を撃ってたわ……アハハハハ」

「豪快に笑ってもごまかせないからな!」

「…………てへっ」

「ゴツイおっさんが言っても可愛げねーよ! ……イチカなら可愛いだろうけどな」

「なんだ、やっぱりイチカちゃんに惚れてんのか。お前がそう言うのもわかるが……」

「べ、別にそんなんじゃ……」

「だが一番かわいいのは母さんだ!」

「嫁の自慢すんのかよ!」


 俺と親方は軽い怒鳴り合い終わると、それぞれで戦闘を始める。


「なんで……こいつら……こんな……に……多いんだよ」



 息遣い荒くも俺を取り囲む奴らからの攻撃をさばき切り、〈爆・付〉を使い次々と群がる奴らを蹴散らしてゆく。


 向かってくるなら反対にいる奴に弾丸を撃ちこみ、それを踏み台にし跳んで、向かってくる奴を殴る。踏み台にした奴は爆破と俺の蹴りの衝撃で爆散し、殴られた奴は四肢を残し潰れて消える。それを来り返し縦横無尽に飛び回る。それを全方向からの攻撃をかわしながらだ。


 俺は話しているときも全方位全方向から攻撃を受けていた。その時はかわすことを優先していたが、普通ならこんな中で話なんてできないし、普通の人いや訓練を受けた人でさえ持って数分いや一分も持たないだろう。

 だが、俺はそんな中で戦い続けさらに親方と雑談を交わすほどの余裕を持っている。残念ながらそれは俺の能力ではない。これは親方の……親方が作り出す弾丸による能力だ。


 その能力とは、『使用者の五感、身体能力、思考速度を限界を超え使えるようにする』というものだ。


 その弾丸は「死人シリーズ」と呼ばれこの弾丸を使った人は確実に死ぬと言われている。万が一死なずに使えたとしてもリスク(良くて全身骨折、悪くてどこかの内臓破裂。奇跡が起これば全身数か月の筋肉痛)があり、さらにその高すぎる身体能力により早々に戦線を離脱する(軽く蹴ったつもりが思ったより力を籠めすぎて自分が吹っ飛ばされる)など問題が多数存在する代物だ。万が一死なずに……とは言うものの使って生き残った人がいるとは聞いたことはない。


 今俺が使っている物は「死人シリーズ」の〈究極〉と呼ばれる弾丸だ。これを使うと人知を超えた究極の存在になれると言われている物で、使って実感したのだが本当に「究極!」って感じだ。例えるならば、目の前に居るどんな強そうで大きな生物でも、全てがひ弱な小動物のように感じられると言ったところか。それに、戦闘のプロでもない俺の荒い動きでも息も切れず攻撃力も半端ではない。何度も言うようだが、まさにアルティメットという感じだ。

 

 こんなにも危なくとてつもない弾丸を作れ得るのはどこを探してもあの親方しかいないだろう。性格はあれだし、ゴツイし……とにかくアレな親方だが、あの人は天才だ。誰が何と言おうともそうであり、だからこそ尊敬はしている……こうして「死人シリーズ」を使えるのはあの人のおかげでもある。



「親方! そっち片づけたか」

「おうよ! ジントが引き着けてくれているおかげで、こっちは〈忍〉の効果が切れる心配なく立ち回れているからな」

「あんたが〈囮〉を俺に使ったからだろ! それも三発! ついでに一発! これじゃ俺の近くにいる奴らは俺の事しか認識できなくなってあんたは〈忍〉と〈囮〉のせいで気づかれることもないな!」

「全くその通りだな。ガハハハッ」


 親方が俺に打ち込んだ〈囮〉は、イチカが使ったものと同じだが、弾丸に仕込まれているダイヤルを回すことによって効果が違ってくる。イチカが使ったときは〈標的〉の弾丸と合わせて使うことにより、その弾丸を受けたゴリラがどこにいても〈囮〉を受けた俺を感知し、俺しか見れないようにするものだったが、親方が使ったのは、あたった動物から球形に範囲数十メートルの奴らあの効果を発揮するものだ……と、聞いた。


 そう言えば効果時間は三十分と言う話だった気がする。何発撃ち込んでも最初に打ち込んでからの効果時間だから……三十分もこの状況が続くのか……今は二十分ぐらい経ったころだろうか。


「ジント、見えるところは終わったぞ!」

「俺の方の襲ってきている分はもう終わりそうだ。そうだ親方、今は〈囮〉を使ってから何分くらいだ?」

「十分くらいだ」


 やっとか……俺の感覚は〈究極〉のせいで短い時間も長く感じるようだ。この効果時間も三十分だから俺の体感は六十分ってところか。十分ぐらい経ったと感じたときに〈囮〉を撃ち込まれたからな……ということは〈究極〉の効果が切れてから五分は〈囮〉の効果続くのか……気をつけておかないとな。


 あらかた町を襲っていた奴は片づけることができた。残っているのは俺の〈囮〉の効果範囲外にいる奴と親方の目に入らなかった奴だけらしい。


 今更ながら親方の戦い方は、自前の銃に自分で作った強化ユニットを取り付け狙撃銃のような形となった銃を使い遠距離の標的を撃ち抜くというものだ。少し親方の戦いを見ていたが、脳天を一発も外さずに撃ち抜いていた。親方は〈強化・視〉と〈身体支配〉の弾丸だけで自分を強化していた。前者は名の通り視力、動体視力の強化をするもので遠距離の敵を視認し、直接襲ってきたものは動体視力強化と、後者の弾丸により強引に自分の思うように動かせるようになった体を使い〈囮〉の効果範囲に入れる。傷一つつかず見事な立ち回りだった。


「親方、あとの奴も片づけに行きましょう」

「ジントお前はいい、あとは俺がやる。お前は動くと大変なことになるからな」

「〈究極〉使ってますしね……」

「それもそうなんだが……〈囮〉の効果範囲に入ると町の人もお前に近づいちまうそれを振り払おうとすると……それはそれは惨いことになる」

「……そ、そうですか……」


 まあ、そうですよね……


「いくら俺が制御用の弾丸を使わせたと言ってもお前のその体は凶器なんだからな……お前が軽く触るだけで人の腕なんか軽く吹っ飛ぶ……」

「親方のおかげで「死人シリーズ」を使っても、俺生きてますしここは親方の言うことを聞いた方がいいですね」

「そうだな、その方がいい……だが、俺のおかげで使えてるわけじゃないぞ少し制御できるようにしただけだ」

「すいません、最後の方が聞き取れなかったんですけど」

「こんな時も、イチカの事を考えてんのかこの発情期が! って言ったんだよ」

「ひどくないですか? この大群と戦ってるというのに、労いの言葉の一つもないんですか」

「お前、そんなに頑張らなくても倒せるだろ」

「まあ、大体はそうですけどたまに強いのとかいるし……」


 ……てか、何で急にこんな話になんだよ!


「……本当になんて言ったんですか?」


 話は終わりとばかりに親方は進んでいき、俺は親方に向かってそう言う。


「どうでもいい事さ」


 そう言うだけ言って、スコープも使わずに遠距離から奴らの脳天に風穴を開けに親方は進む。そうして獲物を見つけた親方は、銃に弾丸を込め……撃たなかった。不思議そうに首をかしげる親方に声をかける。親方とは少し距離があり、その声はおのずと大きくなる。俺にかかっている〈囮〉の効果は、効果範囲に入った時にだけ発動するので、声を聴いても俺に近づいてくる者はいない……これはこれで便利かもしれない。


「何で撃たないんですか」

「あの動物妙な動きをしてんだ。襲ってはいるんだが、人を狙って襲うんじゃなくて……」

「それで何ですか」

「……服を狙ってるようなんだ」

「……服? 服!」

「どうしたジント」

「服と言えば、最初に服らしきひらひらした物をくわえた奴が森に戻っているように見えたんです」

「なんでだ」

「分かるわけないだろ!」


 俺が分かるわけない質問されて少し大きな声を出してしまった。にしても……奴らの狙いは服? なのか……なら試してみるか。


「親方、少し奴らの動向が気になるので仕留めないでください。人を傷つけそうなら怪我をさて逃げたらよし、どの方向に向かっているのか見張ってて下さい。逃げずに襲うなら撃ち抜いてください」

「分かった、だが、どいつも逃げなかったらどうするんだ」

「一匹を半殺しにしてそれでも逃げないのならもっと痛めつけていいです。残しておくのは一匹だけでいいのでそれ以外は殲滅してください」

「了解」


 親方は短く答えると獲物を探しに町の奥の方に進んでいく。俺と親方は町に奴らが入り始めているときに戦い始めたから、奥の方にはそこまで入り込んではいないだろうが何匹かは見えたのでちゃんと確認してた方がいい……親方頼みましたよ。



 ――ドン……ヒューーーーーー……なんだ! ひょいっと。


 ――バキッ……

 ――ぐちゃ……


 急に何かの気配を感じ、ひょいとかわした強烈な臭いを発する物体はそのまま無人の島を割り中を強烈なにおいを発するものが汚く染める。俺は何ごとかと思いそれに目をやる。


 ……アレだ……トイレに流す……大きいほうの……。


 そう、大きい方だった。一言で言うと汚物だった。飛んでくるときの音と被害から見てそれは、音速を超えて飛んできたと見える。こんなものを音速で投げるものは……汚物を見ていた俺は、それが飛んできた方向に視線を向ける。そこに居たのは、


「ご、ゴリラ?」


 俺がこう言った理由はその姿を見ればわかる。


 その姿はイチカと狩りに行ったゴリラと似ているが、イチカが狩ったそれとは似ても似つかないほどデカく、肥大化したその両腕には胴体と同じように鎧のようなものが付いていた……本当にどこが変化すればあのようになるのだろうか。


 そう思いながら俺はそのゴリラを見据える。今の俺はどんな奴も小動物に見えるようになる〈究極〉を使っているが、ゴリラのその両腕だけはそう見えなかった。俺の使う〈究極)は使い手によりその力を増すという特徴があるのだが……達人が使えばこうは見えないのだろうか……とりあえず俺の腕前では、あのゴリラの剛腕と五分五分のように思える。


「そうだとしても逃げるわけにはいかないしな……〈囮〉のせいで逃げれないんだがな……そうでなくともこいつは他の奴と違って狙いは俺のようだしな……いやイチカか。俺が目の前に居るのによそ見してやがる」


 ……と思ったらまた投げてきた……それは島に当たらずに飛んで行く……避けて気づいたが小さいゴリラが俺の死角になるように列をなしていたようだ。数えるに、


「……残り四つかな」


 残りの投擲数を数え俺は後ろにある島の方を確認する。


「一つ目」


 ゴリラは一つ目を受け取り俺に向かって投げる。


 今度もさっきと同じか……うっ、やば。


 同じように飛んできたと思っているとその軌道はいきなり曲がってきたそれに油断していた俺はぎりぎり反応して避ける事に成功していた。


「これはシャレにならん。当たったら死ぬ……精神的な意味で……にしても……また来た」


 それにしても〈究極〉の効果はやばいな、音速で飛んでる汚物を避けられるんだからな……あのゴリラがあんなものを音速で投げられる原理が気になるが今はそんなことを気にするのは止しておこう。


「これで二つ目」


 二つ目も曲がって来たので俺はそれを難なくかわす。


「何度も同じ手は食らわねーよ」

 

 俺がそう言うとともに次のが投げられた。


「これで三つ目単調なん…………あっ」


 粋がってそんなことを言っている俺の目の前には今までより大きいホカホカ出来立てに見える強烈に臭う塊があった……しかも目に染みてくる。


 ゴリラは学習していたのだ一つ目二つ目の変化球のよけ方を見て俺のよける方向を予測していたらしい。それにこの大きさこのホカホカ感小さいゴリラが持っていたのよりもはるかにデカい。小さいゴリラを見るとその手には何もなかった。多分それに出来立てをくっつけて大きくしたのだろう。後ろを見ても三投目が潰れて広がり、逃げようにも逃げられない。


「これは……終わった……俺クソまみれで死ぬんだ……死ななくともクソだ……」


 俺が死〈精神的)を覚悟したとき、はるか後方からなのだがこの距離からもビリビリするような怒号が響く。


「俺の息子に、何してやがる!」


 ――ドンッドンッ……


 一つ目その音とともに目の前にある塊はホカホカではなくカピカピになり、二つ目の音でその巨大な物体がゴリラの方に飛んで行く。だが、それがゴリラによって握りつぶされる。


 ――ドン……ゴーッ……サァー。


 三つ目の音は俺の背後の広がった汚物を燃やし尽くした。


 ゴリラは忌々しげに俺をにらみながら両腕についている鎧のようなものを擦り――ギリギリ……と音を鳴らす。


「ははぁ、相当ご立腹のようだな。まあ、確かに成功したと思った矢先に邪魔が入ったらそうなるよな」


 俺は形成逆転とばかりに粋がるが……動物相手に挑発したところでなんもないよな。と思ったが雰囲気からバカにされてると感じたようで、今度は――ガンガン……腕を鳴らし出す。雰囲気から見るに戦闘準備らしい。そう考えていると、親方が叫ぶ。


「ジント、そいつの飛び道具はもうない! あっても俺が撃ち落とす! 思いっきりぶっ飛ばせ!」


 ……ああ、信じてるぜ親方。


「じゃあ、ゴリラさんよ……」


 ゴリラの方を向き、ぎこちないながらも戦闘の構えを取る。〈究極〉の残り時間は五分だ。五分で倒せるかは分からない。だが、やるしかない!


「タイマン張らしてもらうぜ‼」

「死人シリーズ」の読み方は、「しびとしりーず」です。

「しにんしりーず」じゃ少しかっこ悪いかなーと思ってです。

ということで、今回もお読みいただきありがとうございます。

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