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ライジング ブレット  作者: カタルカナ
物語の始まり
13/60

十三発目

もっと早く投稿する予定でしたが、遅くなりました。

「ここは……どこだ?」


 俺は、ぼやけた意識の中で周りの状況を確認する。周りはさっきまでいた森ではなかったそしてここは、


「……見覚えのある場所のような……」


 今の自分の状況を確認するように独り言を言っていると、目の前に光が目の前に現れた。その光は俺の周りをぐるぐると回りながら俺の姿を舐めるように見ているようだった。


 そしてうなずくと……って、何で俺はこの光の動きが分かるんだ! ……あ、思い出した! これは、少し前に見た……ということは、


「よう、神様。また現れるには早すぎるんじゃないか」


 俺は、威勢を正し光に向かってそう言った。光……もとい神様は、嬉しそうに揺れながら最初に会った時と同じような言葉を並べて俺に話しかけてくる。


「久しぶりジント、俺と話をしよう」


 これまた長年連れ添ってきた友人と再会したかの様に話しかけてくる神様。それに対して俺は何がそんなに楽しいか自分でもわからないが、笑顔で答えた。


「ああ、そうしよう」


 俺と神様は適当に座るなり、雑談を始めた。まあ、神様は光にしか見えないのだが……やはり俺には神様の動きが何となくわかるようだ。神様はすぐに話したいようだったが、俺はその前にと言い、


「今回は何をしに来たんだ?」


 そう訊ねた。


「いきなりその話にするのか、つくずく乗れないね……君は」

「乘るもなにも、話が始まっていなかっただろう」

「そうか?」


 首をかしげているようで、光が少し横に広がった。神様と言っても反応は人とあまり変わらないのかもしれない。


「話に乗るというか、話を始めようかという話はしていたが」

「……紛らわしいな」

「……全くだ」

「……フハハハハハッ」

「……ハハッ」


 なんだかおかしくなり俺は笑っていた。光が揺れているので神様も笑っているようだ。


「……くだらないな」

「本当にな……ということで、今回は何しに来たんだ? まさか……さっきみたいにくだらない話をするために来たわけじゃないだろ」

「………………まあ、渡すものはないことはない」


 俺は神様をジト目で睨みつけ、


「本当に話をするために来たのか? まあ、それでもいいけどな」

「……ならいいじゃないか。くだらない話をしよう」

「さっき渡すものがあると言っていただろ、まずはそれだ」

「……せっかちだな」

「気になるだけだ」


 はあ、と一息ため息をつく光もとい神様。多分こんな感じで渡すつもりはなかったのだろうが成り行きでこうなってしまったから仕方がない……というか、俺も話をするつもりが全然まともに話できてないような……まあいいか。


「ほれ、これが今回渡そうとしていたものだ」


 自分の思い通りいかなかったのが悔しかったのか、雑に渡された。もともと神様の手は見えないけど、雑に投げられたのは分かった……うん、俺のせいだな。気にしないけど。


 神様からもらった物は懐中時計のような見た目のものだった。コインを大きくして角を取ったような丸い本体の表と裏には、職人が技巧を凝らして入れたような文様と美しくも派手すぎない宝石がはめ込まれていた。本体の上部にはチェーンが付いており、その先にはこれまた美しい赤い弾丸がついていた。本体を開くためのボタンを押すと、中身は見た目通りの時計だった……だが、その時計は正確に時間を指していない。


「これは……どう使うんだ」

「それは、使ってからのお楽しみだ」

「……またそれか。最初の弾丸みたいに使用制限みたいなのがあるのか?」

「今回のはない。戻ったら使ってみるといいさ」

「そうか、分かった。今回のも効果を楽しみにさせてもらうよ」

「そうするといい……で?」


 いきなり……で? と言われても答え方に困るのですが……。


「……で? って、なんだ?」

「そいつは何だ」


 そう言われ俺は神様が指をさしたように思った場所を見てみると……蛇がいた。


「なんで、こいつがいるんだ?」

「お前が使った〈同調〉の効果が切れていなかったんじゃないのか」

「……そういえば、そうだな」

「…………」


 神様がもの珍しそうに蛇を見ている……ように見える。


「…………可愛いな、この蛇」

「確かに俺もそう思って撫でてみたかったんだが、噛まれたな。滅茶苦茶痛かった」

「ハハッ、そうだろうな」

「笑うなよ、結構シャレにならない痛さだったぞ」

「そこんところ神の俺には分からない」

「まあ、そうでしょうね」


 そんな感じに俺と神様は適当に今日あったことなどを話していた。どれだけの時間話していたかは分からないが、時間になったようだ。神様が立ち上がり俺も立ち上がる。


「本当はここで渡したかったんだけどな……本当にせっかちだな」

「最後の最後で嫌味か?」

「……何だ、悪いか」

「悪くないけど……あれだな、神様なのになんか威厳がないな」

「お前も最後に言ってくるじゃねーか」

「…………」

「…………」


 少しの沈黙の後……、


「ハハハハハッ」

「フハハハハッ」

「じゃあ、また会ったら話そう」

「俺がやろうと思えばいつでもできるけどな」

「それは疲れるから無しで」


 そう話しながら神様と向かい合ったとき、俺の脳裏にあることが浮かんだ。


「そう言えば、神様」

「なんだ?」

「昔話で聞いたことがあるんだけどさ、陸地ってあったのか? 見たことはあるか」


 そう質問すると、神様は昔を思い出すような顔をして、


「ああ、あるよ。見たこともな」


 そう答えた。


「じゃあ、今は何で陸地がないんだ?」

「それは……」


 俺がさらに質問を重ねると、


「俺たちがやったからさ」


 その言葉とともに、俺の意識は覚醒するのであった。


-------------------------------


「あ、ジント起きたね。おはよう」

「……おはよう」


 眠いな……また神様か。そう思いながら自分の手にある握るにはちょうどいいくらいの懐中時計を確認して、神様とのことは夢ではないんだなと思っていると、自分の今の状況に少し違和感を覚えた。


 俺は今、暖かくてちょうどいいくらいの高さの物に頭を預けている……これは、とても心地いい。でも、ここに来るときに枕なんて持ってきていないはずなんだが、俺は何かを枕にしているようだ。まだはっきりしない意識の中手探りでその枕を触ってみると、柔らかく暖かい……。


「……んっ――ジント……くすぐったいよ」

「ご、ごめん」


 訳も分からず謝るが、この状況は? すぐ近くでイチカの声が聞こえた……これはもしや……、


「……なあ、イチカ」

「なに、ジント」


 やはり……すぐ近くから声が聞こえている。


「膝枕してるのか」

「してるよ」


 即答だった。そう言われて声のする方に顔を向けると、イチカの顔を見上げるようになっていた……本当に膝枕をされているらしい。そのイチカの顔は少し赤みがかっていて微笑んでいたその顔は……天使だ。……目が覚めると可愛い女の子が目の前にいるなんて……夢のようだな。


「…………」

「どうしたの?」


 ……はっ! つい見惚れてしまっていた……というか、


「どうして膝枕しているんだ?」

「ジントが寝てたから」

「……それ理由になってないだろ」

「……そうかなぁ」


 イチカは俺の頭を撫でながら話している。それが心地よくまた眠りそうになるが意識を保ちながら話を続ける。


「寝てる人を見つけたら膝枕するのか?」

「……うーん……しないね」


 自分の言葉のおかしさに気づいたようで、理解したのか頷きながらそう答える。……てか、俺ならいいのか? それは聞いてみたらわかるだろう。


「それなら何で俺は膝枕されているんだ」

「うーん……私がジントに膝枕してあげてるのは……ご褒美かな」


 可愛らしい声でうなりながら少し考えて、ピンと来たのがそれだったらしい。


「何に対する?」

「囮になってくれたことに対する」


 それは確かに、それなら膝枕をさせてもらっても……いいだろう。……予告もなしに? 俺を囮として使ったからな。大丈夫と言われて信じてはいたものの……というかあの状況で俺は何もできなく、信じるしかなかったし……囮にはされたんだ。ご褒美をくれるというのなら大事にもらっておこう。……まあ、ここまでずっとイチカの膝の上なんだけどな……。


「……もう少しこのままでいていいか」

「いいよ、許してあげる」


 可愛らしい笑顔でイチカはそう答えてくれた。イチカの表情を見ても、嫌がっていないようだし、無理もしていないようなので、


「ありがたくこの状況を堪能させてもらうよ」

「……なんか、ちょっと気持ち悪い」


 言い方が悪かったか、言葉が悪かったのか、イチカが俺の顔を覗きながらそう言ってくる。


「……気を悪くしたのなら謝る」

「いいよ、私が勝手に膝枕してそう言わせたようなもんだし、お婆ちゃんに男の生態を聞いたこともあるからそういうものだって分かってるから」


 生態って……お前の婆ちゃんの情報とは一体……。


 ……そういえば神様……。


「それと……こうしてるとなんだか落ち着けるから」


 急に神様の事が脳裏をよぎった。そのせいでイチカが何か言っていたか聞き取れなかった。


「なんか言ったか?」

「……なんでもないよ」


 飛び切りの笑顔で誤魔化されたようだが、その笑顔はとても可愛いかった。


 イチカの膝枕を思う存分堪能した後、親方の工房に向かうための準備をしていた。イチカの説明にによると森が周っている力を利用して、この重いゴリラ達を運ぶという。それと同時に俺の持っている流れを作る弾丸も同時に使いさらに勢いを上げて一気に工房に向かうという。俺はゴリラ達をしっかりと括り付け、外れないことを確認し、イチカは他に依頼されていたものをしっかりとしまい準備はできたようだ。


 俺とイチカはスクーターに乗り込み、飛び出す予定の場所まで動くのを待ち構えていた。少し時間があるからということでイチカが話し出した。


「なんだか、恥ずかしいね」

「なにが?」

「スク―ターに二人乗りするなんて」


 何をいまさらそんなことを言うのだろうか。


「恥ずかしいって言ったら二人乗りよりもさっきの膝枕の方が恥ずかしいんじゃないのか」

「あれは恥ずかしくないと思う」


 俺もあの時は恥ずかしくは感じなかったが……でも、二人乗りの方が恥ずかしくはないと思うが……。


「それまた何で?」

「なんとなく」


 何となくか……イチカの感性はよくわからないな。ガザガザガザ――ベギボギ――この音は……。


「……イチカ、何か聞こえないか」

「うん、何か近づいて……ヤバッ」


 何に気づいたのか慌てて森から出ようとスクーターのエンジンをかける。


「ど、どうしたんだ」

「ジント、弾丸を準備してもう出るのにちょうどいいし、それに……」


 ガザガザガザ――ドザザザザ、ザザ、ザザザーン。


 俺たちの目の前に現れたのは狩りの時に見た巨大なリクガメだった。俺は蛇を通して見ただけで、その時も巨大と感じたが今はもっとデカいように思え。その口の大きさでは俺もイチカも、括りつけられているなかなかの大きさを誇るゴリラともども簡単に丸のみにできそうだ。そのカメは口を開き……。


「これ……やばくないか……」

「だからやばいって言ったでしょ! ……このゴリラ達につられたのかな」


 エンジンをつけ、声だけは切迫していながら、動きは滞りなく出発し始めた。だが、加速が間に合わずリクガメの口が近づいてくる。


「どうする、どうすればいい」

「ジントの弾丸ドンドン撃っちゃって!」


 俺も少し慌てていたが、そのイチカの言葉で冷静になり、弾丸を撃っていた。数発撃った後すぐあと流れが変わり出す。


「ジント、捕まって」

「……分かった」


 どこに摑まればよかったのか分からなかったので、


「ひゃあ――つ、摑まったね。……来るよ」


 とりあえずイチカに摑まった。


 イチカが言った通り俺の撃ったところから流れが生まれ。


「うわああああああああ」

「ひゃああああああああ」


 俺とイチカはすごい勢いで流されていた。後ろを見ると何もない空中を噛みついているカメが見えた。何とか逃げ切れたようだ……無事に出られてよかった。


 そして流れも少し落ち着き、スクーターもゴリラを五体も繋げているのに問題ない様子でもう危険はないようだ。


「はあ、最後の最後で危なかったな」

「ま、全くだよ……ハハハハ」


 どうしたのだろうかイチカが顔を伏せている。


「どうした、怪我でもしたのか?」

「い、いやそうじゃないけど」


 不思議に思い覗いてみると、イチカの顔が真っ赤になっていた。

 

「ど、どうした! その顔大丈夫なのか」

「だ、大丈夫だけど――ひゃ……」

「……もしや、照れてるのか」


 ニヤケてみながら俺は訊ねてみる。


 二人乗りが恥ずかしいといっていたがここまでとはな……膝枕は平気な顔してやるのに……ちょっと意外。そう思っているとイチカが否定した。


「ち、違う――ひゃん……お腹が……」


 お腹? そうして、視線を落とすと、俺がイチカのお腹に腕を回していた……もしや。


「――ひゃん」


 腕を少し動かしてみた……もう一度。


「――ひゃあ」


 では、もういっ………………。


「もうやめて!」


 いい加減俺が止めないのでイチカが叫んだ。


「ごめんごめん」

「くすぐったいんだからやめてよ」


 小声でそういうイチカ。


 ここまでくすぐりに弱い人もいるのか……ということは、


「二人乗りが恥ずかしいってのは……これのせいか」

「……うん」

「二人乗りするにはお腹に腕を回したりするからいやだったのか」

「……うん」

「そして、くすぐったがっているところを見られるのが恥ずかしいと」

「……うん」


 可愛くそう答えるイチカ。さっきのくすぐりのせいでイチカは顔を真っ赤だ。そして俺の方をちらっと見ると、


「次くすぐってきたらぶっ飛ばすよ」


 震える声でそう威嚇してきた。

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