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ライジング ブレット  作者: カタルカナ
物語の始まり
12/60

十二発目

イチカに今回使う弾丸について説明を聞いていたが、実際に見るとすごかった……蛇の視点でだが……直接自分の目で見れないのは残念だ。


 ――これを肉眼で見れるかは分からないけどな。


 ドンッ――〈ゴリラ〉の巣に向かい枝を蹴り、音を置き去りにして、イチカは飛び出す。戦闘用弾丸〈爆・付〉を使い、足場にする枝を爆発する性質に変えタイミングよく踏ん張ることですごい勢いで移動している。ここまで来るのに使ったスクーターよりも遥かに速いスピードで移動しているのだが、密集している枝を勢いを殺さないままひょいひょいと躱している。イチカは枝を躱しながらベルトから弾丸を取り出し虚空から現れた銃に込める。


 ドンッ――二発目を使い落ちた勢いを上回る勢いで再度飛び出す。とてつもないスピードで動くイチカの周りには森にいる凶暴な動物たちもいるのだが、イチカには気づいた様子もない。耳が大きく音に敏感そうな動物も超音波で周囲を確認出来るような動物もイチカには気づいていない。〈忍〉の効果はちゃんと発揮されているようだった。だが、それでも森は危険だった……目の前には避けようにも少しの進路変更では避けられないほどの大きなリクガメのような姿をした動物が枝を破壊し森の中を進んでいた。イチカは銃を構え……。


 ドンッ――三発目を使い大幅な方向転換をした。目の前にある壁のような甲羅をすれすれで避けながら、甲羅も周りを一周するように――どんな神業なのだろうか――勢いを殺さず枝を伝い周りきる。勢いは二発目を撃った時よりは落ちるが進行方向は正しい向きに戻ったようだ。そして弾丸を込める。


 ドンッ――四発目で勢いを取り戻す。……今気づいたのだが、蛇はこのスピードのイチカを視覚内にとらえながら移動しているのか……。――「お前らすごいな」そう言いながら俺を監視している蛇をなでようとすると……カプッ……。


「痛ってえええええええええええ!」


 そういえばこいつは撫でようとすると噛むんだったな……イチカも頭を抱えている。この蛇もイチカと感覚を共有しているからこっちの状況がイチカにも伝わってるんだよな……ということは、イチカは七匹の蛇と共有しているということになる。そのおかげで出のあの動きなのか? 負担は大丈夫なのだろうか?


 ドンッ――五発目が発射された。イチカは五発で巣には着くと言っていたのだが、途中邪魔が入っても問題の無いようだ。俺と共有している蛇がゴリラの巣らしき物をとらえていた。今の勢いだと巣には、余裕で届くだろうが、イチカはまた弾丸を準備する。


 ゴリラの巣はドーナツ状の空洞になっており、中心の柱の中心にはそのボスらしき影が確認できた。ゴリラは、異常に発達した両腕を持ち、その両腕は胴体よりもはるかにデカく強靭な毛によって簡単な刃物では無傷だろう。そして、比較的弱いだろう胴体と頭は体のどこがそう発達したのかうかがい知れないが、鎧の様になっていた。


 ドンッ――六発目に発射されたそれは枝ではなく、ゴリラのボス位置にいるゴリラにかまし、そこにドロップキックをすることで柱の中心から蹴り落した。その衝撃でも吹っ飛ばなかったイチカはボス位置からゴリラたちを見下していた。だが、そのゴリラの中でイチカを認識していたのはボスだけだった……ボスはイチカをにらみつけるが、そのほかのゴリラはボスが一人で落ちたようにしか見えない……ボス以外のゴリラはボスがボス位置から落ちたことを好機とし、自分がボスになろうと一目散に集まってくる。その数秒前、イチカは、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、と五発の弾丸〈標的〉を打ち込んだ。


「………………」

「…………!」

「…………?」

「…………!?」

「…………ブォォォォォッ」


 撃たれたゴリラたちはそれぞれの反応を……最後のゴリラは謎の音を出しながら、ボス位置にいるイチカを見る。警戒をしているのかゴリラ達は足を止めた。だが、立ち止まったのは数秒すぐにゴリラ達はイチカの方に突っ込んでいく。イチカはそれを一瞥すると、弾丸を手に取り……パンッ、と自分が飛び出してきた枝の中に向けて撃った。


「どこに撃ってるんだ?」


 ――パスン……俺の額にイチカが放ったであろう弾丸が当たった。


「……ハ? どいうことだ? 痛くないが……」


 そう思いイチカに意識を向けると〈標的〉が当たったゴリラ達がイチカが弾丸を撃った方に向かって動き出す。


「撃った方向に……こっちに来るのか……これは、やばくないか」


 その時頭にイチカの言葉がよみがえる。


『ここに座って動かないでね。動いたら死んじゃうからね』


「…………こういうことなのか……俺の方に『ターゲットを向かわせるけど、動かないでね』ってことなのか――しゃーねーな……乗ってやるか」


 俺は座りその時を待った。


「よし、確認っと」


 イチカは、また弾丸を込めた。そして、パンッ――今度もゴリラの向かった方に撃つ。すると弾丸は五つに分裂し、ゴリラ達に向かって飛び始める。弾丸はゴリラを追い全て命中するが、ゴリラにはダメージはないその強靭な腕や鎧には効かないようだ。だが、衝撃で進路は少し変わっているのかまとまって進んでいたゴリラ達はバラバラになり、その原因になった者を見る……イチカだ。


「まだ弱かったか」


 そう言うとイチカはまた弾丸を撃つ。その弾丸はゴリラの横を通りすぎ……。


 パンッ――「いてーな……痛くないけど」そんなどうでもいいことを言う俺に当たった。


 弾丸に当たるとゴリラ達は血相変え弾丸が飛んで行った方向に向かっていった。それを見たイチカは、パンッ――もう一度〈分裂・追尾〉の弾丸を撃ちこむ。それを受けて少しバランスを崩したが、ゴリラ達はイチカには目もくれず弾丸が飛んで行った方向に向かっていった。


「これで良しっと」


 そうイチカが言う。だが、ボス位置を狙うゴリラ達はイチカを囲んでいた。


「大丈夫かな……ジント。いうこと聞いててくれてるから大丈夫だけど……」


 そんな緊張感のないイチカにゴリラ達は一斉に飛びかかる。イチカはそれを体を少し傾けるだけで躱し、ゴリラ達はお互いの拳が当たり全員気絶していた。その気絶したゴリラを上り、


「君たちは長生きするんだよ」


 そう言うだけ言って、元の依頼の物を取りに行った。


「イチカはどうするつもりなんだ? 安全だと言っていたが……」


 多分これは安全じゃないと思う。安全なのはここに居ることで……。


 目をつぶり蛇の視覚で自分を見てみる……正確には俺に向かってくるゴリラを自分の後ろから見ている。俺は見えないが、蛇の感覚を通せば見えるゴリラの影を見ながら座っている。そして、今は逃げることも何もできない。多分俺に打ち込まれたのは〈囮〉の弾丸なのだろう。でその効果は〈標的〉を打ち込んだ奴を引き寄せる……とかなんとか言っていたが、俺に使うとは思っていなかった。


 バキ、バキバキ、バキバキバキバキバキバキ――ああ、ゴリラが近づいてくる……イチカ、本当に大丈夫なんだよな……天に祈るようにイチカに祈っていよう。


「イチカ……俺、死なないよな……安全なんだよな……イチカ、俺にご加護を……」


 ――ガザーーーーーン! と、ゴリラが飛び出して……来なかった。来なかったというより、飛び出してきた瞬間に崩れ落ちて……死んでいる!? 飛び出そうとしてきたゴリラは五匹とも頭を撃ち抜かれて即死していた。


 ドンッ、ドンッ、ドンッ、ドンッ、ドンッ――唖然としている俺の鼓膜を揺らしながら爆音が等間隔に近づいてくる。……この音は、


 ――ガサゴソガサゴソガサゴソ――ザザーン。


「おっ、一匹も外さずに上手くいったみたいだね」


 やはりイチカのものだった。


---------------------------------


 ゴロゴロゴロ――ガシャーン。


「キャーーー! もう嫌だよ……雷怖いよ」


 俺の耳には雷にいよって膨張する空気の音と、イチカによる悲鳴が交互に聞こえてくる。怖がるイチカは泣きながら俺の腕の中で震えている。雷が少し治まると顔を出し、雷が鳴ってまた顔を引っ込める。そんなことを来り返し俺たちは蛇の巣の中で時間が経つのを待っていた。


 イチカが依頼の物を集め終わった後、ゴリラを届けるのに親方の工房に行くのだが、島の周期的にもう少し時間が経ってからの方が移動距離を少なくできるということで、森がちょうどいい位置に移動するまで森で待機することになった……燃料が足りないからということは気づかないふり……。ということで待っていたのだがはぐれ者の雷雲が森を包んでしまい何にしても動けない状況だ。


 そのせいでイチカは俺の腕の中に納まり、可愛い泣き顔を伏せて雷を怖がっている状況だ……このまま泣かれてても怖いだけだろうから、少し話をして気を紛らわせてやろう。


「雷の何が怖いんだ? ……光か? 音か?」

「……音が怖い……光はきれいだけど……」


 ゴロゴロゴロ――。


「うぅ――怖いよ」

「……怖いのは分かったけど、俺に抱き着かなくても……」

「このままでいい……これが落ち着く」

「……そうですか」


 なんだろうなこの状況は……今日イチカに会い狩りについていき最終的にはこんな状況になり……イチカから見ると散々だな。知らない男を轢いて、そいつを部屋に連れ込み、狩に付き合わせ囮にし、最終的にはその男の腕で泣いている……やっぱり散々……俺の方が散々なような……まあお互いさまということかな。


「なあ、イチカ」

「なに、ジント」


 何となく今の状況について聞いてみていた。


「なんで、俺に今甘えてるって言ったらおかしいのか? こう……くっついているんだ?」

「なんでだろう……私もわかんないや。でも、ジントにこうしていると落ち着く……なんだろうずっと一緒にいた気がするんだよね」

「俺とか? 今日が初対面だろ」

「そうなんだけど……前もこんな感じに誰かの腕の中にいた気がするんだよ」

「それは、お前の母さんとかにされていたんじゃないのか?」

「そうかもだけど……なんか違う気がする。でもそんなことどうでもいいよ、いまこうしているのが落ち着くからそれで……」

「……そうか」


 そういえば、俺も親方と母さんは育ての親で本当の親の様に思っているけど、生みの親の事聞いたこともないな……覚えもない。というか、子供の頃に記憶が……ない? 少しもない……これはどういうことだ?


「イチカお前、子供の頃の記憶あるか……って、寝てるし」

「……すぅー、すぅー」

「可愛い顔で寝やがって――ふぁあ……俺も眠く……」


 気持ちよく眠っている二人の周りには蛇が集まってくる。だが、それは襲おうとしているのではないようだ……。

誤字脱字あったらすいません。

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