世界一位です。
さて、一通りギフトの説明を終えたところで就職難の話に戻ろう。
1番最初に述べた通り、ギフトは複数持ってるのが当たり前だ、大工アビリティを持っている人はもれなく、器用さ+と力+のベースを持っている。
寛大な神様はきちんとアビリティとベースなどの組み合わせを擦り合わせた上でギフトをくれているのだ。
ある日、物心がついてきた友人らが自分に秘められたギフトに目覚め、理解し、発表し合っておりました。俺だけその輪に入れず月日が経ち、見かねた両親がギフト診断に連れて行ってくれたのだった。
どんなギフトか分かったら皆に目にもの見せてやるから首洗って待っとけ!
そう思ってた時期が私にもありました。
1つです…。それこそ診断結果が出たあと、俺が最初に聞いた言葉だった。顔をやや俯けながら、目を斜め下に逸らし、いい難そうに担当者がそうボヤくように発したのだ。
俺も両親もなんの事か解らず聞き返したが、オリジナル1つのみです、と返答は同じだった。何かの間違いでは、と診断のやり直しも行ってもらったが結果は変わらず。
数については諦めた父が絞り出すようにギフト名を聞いたのだった。
ここで余談だが世界史上確認できる中で1番ギフトの数が少なかった人でも2つだったそうだ。千何百年分の歴史を遡った上で、俺という存在は頂点にいるのだ。敬え。頭が高い。職寄越せ。
まだだ、まだ慌てる時間じゃない。ギフトがたった2つ、俺と1つしか違わない人もいるにはいたのだ。その先達はなんと、こちらも観測史上オンリーワンの2つ同時にオリジナルのギフトを所持する快挙を達成している。周囲にギフトの少なさを馬鹿にされながらも、その2つの強力なオリジナルを使いこなし、やがては国を危機から救う英雄と成り上がったそうだ。
俺のギフトはたった1つしかなくてもそれぐらい強いギフトかもしれない。父はそんな希望に縋ったのだろうか。
そして担当者から証明書を手渡すと共に告げられた俺のギフト名は<その者、死は愚か>だった。
オリジナルギフトなので当然前例がなく、また当人にもどのようなスキルか分からない。ギフト名から何とかしてどのような能力なのか推測するしかない。
診断してくれた担当者は親身になって、両親と一緒に俺のギフトがどんな能力なのか考えてくれた。1つという事への憐れみか、過去の英雄のような事例への期待か。
昼までには終わるから、ちょっといいご飯を食べて帰ろうなんて話しながら午前中に診断にきたはずなのに、帰る頃には日が傾き始めていた。
それだけ時間を掛けて考えたのに、答えもひとつしか出なかった。
俺はとても愚かな死に方をするのではないか。そんな答えだった。
今でもあの日の帰り道、ただ前を見つめ、一言も話さず、歩き続ける両親の顔は忘れられない。