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5話

ブクマしてくださった方、感謝の一言に尽きます!

ありがとうございます!

「ただいま戻りましたわっ!」


「随分と遅いお帰りだな・・・ まあお疲れさん」



ドヤ顔で戻ってきたシェリさんを俺は適当に労う。


あれから数時間経って夜もすっかりふけた頃、ようやくシェリさんは戻ってきた。



「あら、随分良い感じの拠点が見つかったのですわね。ご苦労なことでしてよ」


「流石に上から目線過ぎだろ・・・ 俺も一応頑張ったんだぞ?」



完璧に上から目線の言い方に俺は少しムッとくる。


一応ペアとしての役割を果たしているのだから感謝されてもいいはずだ。



「戦闘面ではまるで役に立たないのに一々意見しないでくださる?」


「補助だって大切な役割じゃないか。戦うだけが冒険者じゃないぞ」


「冒険者志望でもない貴方に言われたくありませんわ!」



鬼気迫るような表情で俺を怒鳴るシェリさん。


まだお互いのことをよく知らない時は気を使っていてくれたのだろうけど、俺が冒険者志望でもない不真面目な奴だということが分かってから俺を見下すようになった気がする。



「へいへい。1年卒業組内定のエリート様はさぞかし立派な理由があって冒険者を志望しているんだろうな。水晶集めせいぜい頑張ってくれ」


「もう全部集め終わってますわよ。あんな雑魚達から水晶を奪う程度容易いことでしたわ」


「え・・・ もう全部集め終わったのか!?」


「ええ。持って帰るのが大変でしたわ。そこに20個全部置いてありますわよ」



確認すると、確かに水晶が20個あった。


信じられないが、どうやらこの数時間でクラスメイト40人(俺らを含まないと38人)を全員倒してきたようだ。


なるほど、わずか数時間で38人もの相手を制圧するのは凄い実力だ。


だが・・・ コイツは致命的に頭が悪い。


サバイバル実習というものをまるで理解していない。


自分が逆の立場だったらどうなるのかを考えることが出来ていない。


例えば、初日で全ての水晶を抱えているペアがいるとする。


3日目が終わった時点で、水晶を一個でも多く持っているペアが優勝だ。


現時点でそのペア以外の奴らは水晶を一つも持っていない。


つまり、これはどういうことになるかというと、その水晶を持ってないペア全員が徒党を組んで、そのペアに丸々二日間奇襲を仕掛け続けるという状況になるのだ。


1ペア1ペアじゃシェリさんに叶わないとしても、ここは一時休戦という形をとり、38人が全員で協力してシェリさんを倒しに来るだろう。



「馬鹿野郎・・・ 丸々二日間も寝ずに38人の相手からその水晶全部守りきれるのかよ・・・」


「わたくしなら簡単に出来ることですわ。貴方に戦闘面の心配をされる筋合はないでしょう」



少し含みのある言い方をされ、俺はカチンときた。


確かにコイツは戦闘は強い。だが、冒険者になったら典型的早死にするタイプだ。



「そうかよ。じゃあ精々2日間寝ずに頑張るんだな」


「貴方に言われなくても勝手にやりますわよ。どうせ役に立たないんだからこれからは別行動でもします?」


「あーあー。分かったよ。どうせ戦闘能力が低い俺は邪魔だってことだろ。エリート様の足を引っ張るのは心苦しいのでご好意に甘えさせてもらいますよ」



俺はそう言い残し、拠点を後にする。


こういう性格の奴は、薄い本で陵辱でもされてるのがお似合いだ。


精々クラスメイト38人からの洗礼を受けるがいいさ。



-------------------------------------------



俺は、残りの2日間を1人で無事生き延びれるように、新たな拠点を探し歩いていた。


俺も水晶を全部持っているペアの片割れなので、他の奴らに見つかったら面倒なことになりそうだ。


なるべく見つかりにくいような拠点がいいよな・・・



「お、いい感じの洞窟発見」



さっきの洞窟よりも見つかりにくそうな、いい場所を見つけた。


というかさっきの場所は外から丸見えだったし、そう考えれば面倒ごとに巻き込まれる前に離れて正解だったのかもな。


ただ、湧き水や食べ物が全然この辺りにはなさそうだ。


さっき自分で確保した物資を全部持ってきてたのは正解だったようだ。


新しい拠点とする洞窟を軽く掃除し、食べ物や簡易型の水筒に入れた水を整理する。


じゃあタイムアップまでここで適当に引きこもってますかね・・・


そう考えると途端に暇になってきた。


この2日間なんにもしないんじゃあ退屈で死にそうだ。


あそこに落ちてるドラム缶を使って風呂でも作ってみようか。


ドラム缶風呂というのは男の浪漫だ。あとハンモックも。


資材となるドラム缶を取りに行こうとしたその道の途中、地響きがするような物凄い音が鳴った。



「な、なんだ!?」



その音は、ぐるるる・・・ と腹を空かせた動物が鳴らす音のようだ。


虎やヒョウなどを警戒して、辺りをよーく見渡す。


すると、前方で女の子が倒れているのを発見した。



「だ、大丈夫か!?」



俺は、その女の子に駆け寄り意識があるかどうかを確認する。



「あ、ありがとうございます・・・ 平気です・・・」



女の子は、ぐったりした様子で俺に微笑む。



「全然平気そうに見えないじゃないか。まさかシェリさんの剣にやられたのか!?」


「いえ・・・ 違います・・・」


「じゃあどうしてそんなにぐったりしているんだ?」



女の子は恥ずかしそうに俯きながらモジモジとしている。


すると、またぐるるる・・・ と大きな音がした。



「えっと・・・ それは・・・」


「まさか・・・ この音って・・・」



なんとなくオチが読めたぞ・・・


この音の正体は間違いなくこの女の子からだ・・・


そしてぐったりしているのに外傷が一つも見当たらない。


この状況が示す一つの解答は・・・



「お腹が空いて・・・ 動けません・・・」














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