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2話

「・・・さっきの出来事は忘れてくださらないと殺しますわ」



顔をトマトのように真っ赤にしたシェリさんが俺を睨む。



「いや、あれは事故だ・・・ 俺だってまさかルームメイトが女子だとは思わなかったんだよ!」



「わたくしだって相部屋になる方が男子だとは思いませんでしたわ! いくら出席番号順だからって男女分けないなんて適当過ぎますわ・・・」



確かにいくら出席番号順とはいえ男女分けないのは本当に適当だ。


ここでは一緒に生活しなきゃいけないわけだから、男女2人が寝食を共にするというのは色々問題がありそうだ。



「とりあえず、なっちまったもんはしょうがないだろ・・・ 色々ルール的なもん決めとこうぜ。さっきみたいになっちまうかもしれないし・・・」



「そ、そうですわね・・・ そうすることにしましょう・・・」



顔の熱が未だにおさまっていないシェリさんと、シャワーの時間や、2つの部屋の陣取りなどを決めた。



「食事と洗濯は購買とコインランドリーが寮の近くにあるしそれで構わないか?」



「ええ、それで構わないわ。私物を覗いたりしたら殺しますわよ?」



「目が笑ってねぇ・・・ えっと、シェリさんでいいか?」



「ええ、わたくしはサイカさんと呼ばせていただきますわ」



・・・とりあえず一件落着のようだ。


でも、いいとこ育ちのお嬢様っぽいのに適応するの早いな。


この人はなんで命を危機に晒してまで冒険者になりたいんだろうか。



「ではわたくしは門限の18時までこの学校を色々見て回ってきますわ」



「そっか、俺は購買を見てくるよ」



そう言って俺は寮を出た。


シェリさんと別れ、購買を目指す。



「にしても、学校側も男女くらい分ければいいのにな・・・ 頭が固い学校だぜ、本当に・・・」



ぶつぶつ独り言を呟いていると、購買前で男子グループ四人に囲まれている女子生徒一人が目に入った。


どうやら、男子グループは上級生のようだ。


まあ上級生ってのは早い段階で卒業出来なかったグループだから落ちこぼれって烙印を押されるのが大体だけど。


上の者が下の者に馬鹿にされるってなんとも世知辛い話だぜ・・・


でも今回の場合は上級生の男子グループが女子生徒にカツアゲしてるっぽいな。



「なあいいだろお嬢ちゃ~ん。金貨ちょっと貸してくれや~」



「い・・・いやです。放してください・・・」



「泣きそうな顔するなよ~。何も寄越せって言ってるわけじゃないんだからさ~」



ニヤニヤ、と気持ち悪い笑みを浮かべながら女子生徒に迫る男子グループ。


絡まれている女子生徒は心底嫌そうにしているが、中々放してもらえないようだ。


・・・どうしようか。


ああいうのを見ているのはかなり不快だけど、目立たないということを貫く為にはああいうのにちょっかい出したら後々面倒なことになりそうだ。


俺は、来た道を後ずさり、茂みに身を隠した。



「あ~んま聞き分けないようだと服脱がしちゃうぞ~?」



「いいねいいね。やっちゃおうぜ!」



「嫌・・・やめて・・・放して・・・」



俺はポケットに携帯している小型銃を取り出し、男子グループに照準を合わせた。


あまりに近すぎると誰かに見られてしまうかもしれないので、約50m離れたところから狙撃体勢に入っている。


ちなみに、冒険者学校卒業試験の「狙撃」は、20m離れたところから的を撃ち抜ければトップレベルの評価を得られる。


まあ俺にとっては関係のないことだが。


ちなみにこの携帯している銃の弾は実弾ではないが、命中すると痺れて10分程度気絶する弾になっている。


護身用の銃だ。まあスタンガンみたいな役目を果たしている。


俺は50m先の目標グループらに向かって4発発砲した。


発砲音は銃を改造してほぼ無音になっている。



「イギッ!?」



「ギャッ!」



「グエッ!」



「ガアッ!?」



それぞれ4つの汚い断末魔が聞こえてくる。


面白いように命中して中々満足だ。



「えっ・・・ えっ・・・?」



当の女子生徒は困惑している。


とりあえず・・・このまま放っておいても大丈夫そうかな?


軽い満足感を覚え、寮に引き返そうとしたその時。



「あ~。お姉さん見ちゃったぞ~?」



不意に声をかけられた。


声の主は綺麗なポニーテイルの黒髪で、キリッとした目をした美人だった。


・・・とりあえずこの人はヤバい。深く関わるとヤバい。


なんとなく直感でそう感じた俺は、全力で誤魔化しにかかるのだった。



「き、奇遇ですね・・・ 僕も見ましたよあの綺麗な蝶・・・」



「私が言いたかったのはさっきの不良集団を小型銃で牽制した君の姿のことだったんだけどな~。サイカ君?」



もろバレだった。


もろバレどころか本名まで抑えられていた。



「えっと・・・ これって正当防衛に当たるんじゃないんですか・・・?」



「勿論不問よ? むしろ褒められるべき行動とも言えるわね」



褒められている。


微塵もそう感じないのは俺の気の所為ではないはずだ。


なんか、「あ~! やっちゃった~!」みたいな目で見られている感が拭えない。



「えっと・・・ じゃあ俺行きますね」



「・・・射撃の腕なら私より上の1年か、面白いなぁ~」



逃げるが勝ち、と全力ダッシュで引き返す俺を興味深そうに見つめる彼女は、怪しげな瞳で満ちていた。



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