1話
「皆さん、冒険者学校入学おめでとうございます。僕は1-1担任のユウキ・コノエです。貴方達を3年間で全員卒業させるのが使命です。分からないことがあったら何でも聞いてくださいね」
絶対に入学しない・・・とそう思っていたのがつい最近までだった。
俺、サイカ・ピスタは銃の名家の一人息子で、親父はその銃の腕前で今もなお現役で冒険者をやっている。
俺は幼い頃から親父に特訓と称され、銃の訓練を受け続けさせられてきた。
お陰で、教員なんかも目じゃない程の銃の実力がある。
だが、さっきも言った通り、俺は冒険者志望ではない。
根っからの面倒くさがりで、リスクを嫌う性格だ。
ただ、親父は俺を冒険者にしたいようで、ここの入学を強制されてしまったのだ。
冒険者学校は、15歳から入学を受け付けており、実力が認められた者は最短1年で卒業することが出来る。
ちなみに、最長で3年だ。
なので、俺は実力をうまい具合に隠し、目立たず平穏に3年間でようやく卒業組に入ることを決めている。
卒業したら適当に鍛冶屋のバイトにでもなってダラダラ生きよう。
多分、俺はそれが一番いい人生だと言えると思うから。
「では、今からそれぞれの部屋割りを黒板に貼り出します。今日はそれぞれの部屋を確認するだけで解散となりますので、ゆっくりしてくださいね」
言い忘れたが、冒険者学校は全寮制だ。
二人一部屋で使うことになり、誰と相部屋になるかはランダムで決まる。
なるべく気を使わないでいれる奴が相部屋になるといいが・・・
俺は群がる生徒達を押しのけ、黒板が見える位置まで移動する。
「301号室 サイカ・ピスタ シェリ・シアト」
出席番号順に振り分けられた紙の中に俺の名前を見つけた。
相部屋になるのは「シェリ」なる人物だそうだ。
「301号室ってこっから結構歩くよなあ・・・」
冒険者学校は、生徒数全1000人超のとても大きな学校だ。
その1000人超の人数を迎え入れる寮となると、とてつもなくデカい。
なので、寮のエリアが細かく分かれていて、教室からかなり離れた寮に振り分けられてしまったようだ。
中々足取りが重くなるな・・・ 徒歩約8分程度だろうか。
ちなみに、人里の人口の合計は冒険者の何十倍も多いと言われている。
冒険者志望の奴らは合計でも1000人超しかいないのだから、いかに冒険者志望が少ないかが伺える。
まあ、命を落とす危険が常にある上に、安定した収入が得られるわけでもないのだから、当たり前だ。
どう考えても割に合わなさ過ぎる。
俺は改めて冒険者なんかにはならないと心から誓った。
「と、301号室はここで合ってる・・・よな?」
誓いを再確認しているうちに301号室の寮にたどり着いた。
一応ノックをしてみるが、返事がない。
シェリなる人物はまだ来ていないのだろうか。
さっき教室で支給された合鍵を鍵穴に差し込むが、どうやら鍵は元々開いていたようだ。
まあ・・・俺の部屋でもあるし・・・入ってもいいよな・・・?
考えること数秒、俺は勢いよく寮の扉を開いた。
大きめの部屋が2つに、リビングとキッチン、あとは簡易シャワー室が1つ備え付けられているようだ。
トイレは校舎にいくつもあるし、共同で使えということなのだろう。
・・・というか、シャワー室に誰かいるようだ。
シャワーの音が絶え間無しに聞こえるし、シャワー室の明かりが点いている。
ノックをしても応答がなかったのはきっとシャワーを使っていたのだからだろう。
俺は、まだ見ぬ相方がどんな奴なのかを想像していた。
うーん、確かシアト家ってかなり有名な剣の名家じゃなかったっけ・・・
使う方は勿論、剣を製造する技術が特に凄くて、シアト産の剣はウン十金貨するって聞いたことがある・・・
ってことはお坊ちゃまってことになるよな・・・
性格が悪い奴じゃなきゃいいんだが・・・
「あら、もう相部屋の方来ていらっしゃったの? ごめんなさい、わたくしシャワーを使っておりましたわ」
ガラッ、とシャワー室の扉が開く音が聞こえる。
そこに立っていたのは、セミロングの金髪をした絶世の美女だった。
非の打ち所がない整った顔立ち、グラマーながら引き締まっているところはしっかりと引き締まっているスタイル、艶やかな唇。
この世に生を受けて15年、これほどの美女を正直今までに見たことがなかった。
ただ・・・ まあ当然と言えば当然なんだが・・・ 半裸だった。
「・・・」
「・・・」
お互い、目を合わせたままピクリとも動かない。
いや、動かないと言うよりは動けない。
このシチュエーションに驚きすぎて、言葉すら出ない。
まるで金縛りにあったかのような感覚だ。
人間驚き過ぎたら言葉も出ないというのを信じたことなかったが撤回する。
この説提唱した奴偉大だわ、いやマジで。
「あ、えっと・・・ 貴方が相部屋の・・・ サイカさん?」
「あ・・・そうです。 君がシェリさんでいいんだよね・・・?」
お互いがお互いを120%気を使いながら喋れる間柄!
きっといいルームメイトになれると思うな! 俺!
「男ーーー!? え、いやっ、いやあああああ!」
近くにあったボディーソープの入れ物をフルパワーでぶん投げられ、俺は気絶した。