16話
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「・・・本当にこの男は役立たずね。犬にも劣る性能だわ」
心底呆れた顔をしてシーナさんが言う。
まあ、今の試合俺とティアは置物だったからな・・・
実質、3VS5で勝ちきるコイツらは凄い。
「皆さんごめんなさい・・・ 私、全然役に立てなくて・・・」
ティアは今にも泣きそうな顔をしている。
「ティアさんは戦闘以外で役に立ってもらえそうだからいいわ。ただ、男の方は実技も出来なければ知識もない。生きてる価値ってあるのかしら?」
俺も多分今にも泣きそうな顔をしている。
あれ、おかしいな。目から汗が。
「ちょっと待ってくれ。俺は怒って伸ばす方針よりも褒めて伸ばす方針の方が好きなんだけど」
「私は叩いて伸ばす方針が好きよ。苗を引っ張って成長させるように」
それ伸びてないから・・・
宋の国の男の二の舞になってるから・・・
「まあ、二回戦もこの調子でいけばおそらくは突破できますわ。気を引き締めて望みましょう!」
2回戦が始まる。
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結果を記そう。
秒殺だった。
次の対戦相手だった1-8クラスは、相手の5人中4人が前衛という想像外の戦略で、最初は苦戦するかに思えた。
しかし、個々の力でシェリさんに勝てる人は誰もおらず、あっさりと4人が倒された。
見てて思ったけど、多分シーナさんは相当強い。
おそらく、シェリさんに匹敵するレベルの力を有している。
「お疲れ。援護全然いらなかったね」
モモは拍子抜け、という感じで前衛二人を出迎える。
「あれが1回戦を突破してきたクラスですの? 1-3クラスより弱かったですわ」
「多分、戦略的な問題でしょう。前衛の力は圧倒的に1-8クラスの方が強かったと思うのだけれど」
涼しい顔して戻ってくる二人。
今回も俺とティアは置物だったなあ・・・
「そういえば、これで準決勝進出か。早いもんだな」
1年のクラスは、計16クラスなので、3回戦に進出した今、もう準決勝進出ということになる。
このままいけば、普通に俺は何もせずに優勝できそうだ。
「サイカさん、今度こそ活躍しましょうね!」
ティアは俺に奮起を促す。
俺は出来る限り活躍したくないんだけど・・・
「あ、そろそろ3回戦が始まるみたいですね! 行きましょう!」
ティアはぴょこぴょこと元気そうに演習場へ移動する。
俺もふとした時に自分の銃撃が出ないように気を付けないとな・・・
このクラス対抗戦を平穏に終わらせる為に、人知れず努力している俺って一体・・・
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「相手は後衛2人に前衛3人です! 後衛の人はかなり優秀な射撃能力を持っているので気を付けてください!」
1-10クラスは、今までの相手より数段強く、3人だけで戦っている俺達はかなり苦戦していた。
いや、こうやってティアが指示を出しているから4人か。
俺? ちょっと政治について考え事を。
「チッ・・・ 相手の援護射撃の数が多くて上手く狙いが定められない・・・」
モモは流れ弾を避けつつ、前衛の支援に徹していた。
前衛同士の戦いは、シーナさんとシェリさんが若干押しているが、相手の援護射撃が上手くて、中々攻めきれないようだ。
「くっ・・・ 邪魔ですわね!」
フィールド全体が森のようになっているこの演習場では、後衛は大体茂みの中に隠れて援護射撃をする為、発射される場所が分かりにくい。
なので、援護射撃が一人か二人かでかなりの差が出てくる。
「槍が当たらない・・・ 中々攻め切れないわね」
うざったそうに槍を突きまくるシーナさん。
前衛組もこのままでは体力の消耗が激しそうだ。
「うーん、このままだとこっちが不利になってしまいますね・・・ どうしましょうかサイカさん・・・」
ティアは俺に協力を求める。
だが、俺に出来ることは何もなさそうだ。
「まあ、このまま見てるしか俺達がやることはないんじゃないか・・・」
「ですよね・・・ でもそれもなんか歯がゆくて・・・」
不意に、俺達の後方からカサッという音がした。
・・・誰だ? 茂みの中に人・・・?
今、ここには俺とティアとモモ、後衛組は全員揃っている。
前衛でも相手が3人いて、見えない後衛2人は向こうの茂みから射撃をしている。
・・・いや、待て。
見えていないのに射撃している人数が2人なんていつ確認したんだ!?
そうだ、あれは2人が射撃していると見せかけておそらくは1人が2丁拳銃で援護射撃している!
全てを理解したその直後、ティアの額に相手の銃弾が発射された。
「ティア、危ない!」
俺は、不意の事態にとんでもないことをやらかしてしまう。
相手の発射した銃弾を、俺の銃弾で軌道を逸らした。
「・・・え?」
会場は、最高潮の盛り上がりを見せ「サイカ!サイカ!」とコールが沸き起こる。
「な・・・何者だお前!?」
相手の後衛の闇討ちしてきた一人は、心底驚いた顔で俺を見つめる。
・・・ちなみに、銃弾を銃弾で跳ね返すという技は、世界でも片手で数えられるくらいの人数しか出来ない芸当で、そんなことが出来る人間は普通じゃない、という認識だ。
「あ、ありがとうございます・・・ ってええええ!?」
助けられたティアも心底驚いている。
・・・つーか今会場にいる全員が俺の方向いてない?
モモとシェリさんは俺が1000m射撃やったこと知ってるんだからそこまで驚かなくても・・・
程なくして、シェリさんとシーナさんが相手の前衛組を突破し、俺達の勝利で試合は閉じた。
ああ、どうしよ。やっちまったな・・・