13話
俺は、久し振りに一人で購買に来ていた。
最近はシェリさんと二人で来ることが結構多かったから、こうして一人で自由な時間を過ごしているというのも久し振りだった。
「食料、飲料、週刊冒険者雑誌、保健体育の雑誌、これで全部かな」
なにか一つおかしな物が混ざっていなかったかって?
はは、確かにそうだね。
冒険者志望でもない俺が週刊冒険者雑誌を買っているのはおかしな話だ。
ちなみに、週刊冒険者雑誌とは、新しい魔物の情報や、今活躍している冒険者の情報などが載っている冒険者必読の雑誌だ。
シェリさんなんてこれを毎週買っては読みふけっている。
「あら、お久し振りね! サイカ君!」
購買を出たところで、後ろからふと、そんな声がした。
誰かと思って確認しようとすると、思いっきり抱きしめられた。
・・・えっ、えっ!?
ちょ、胸が当たってる! これはヤバイって!
「うわわっ!? 誰ですかあなた!?」
振り返ると、黒髪ポニーテイルのとんでもない美人がいた。
「あれー? お姉さんのこと忘れちゃったの? 酷いなぁ、サイカ君は」
いや、待て。この人どっかで見たことあるような・・・
あ、思い出した! 俺が初めて購買に来た時、モモを助けた後に絡まれた謎の女の人だ!
「あ、えっと・・・ モモがカツアゲされてた後に俺に絡んできた謎の人?」
「もう、私にはちゃんとシアンって名前があるのよ? そんな長ったらしい名前で呼ばないで」
ぷんっ、と頬を膨らませて怒るシアンさん。
こんな子供っぽい仕草する割には背は俺と同じくらいデカい。
俺は180cm近くあるはずなんだが・・・
「あ、はいシアンさん。で、何か俺に用があるんですか?」
「特に用はないわよ? ただ、サイカ君って面白いからさー」
ケラケラ笑いながら俺を指差し笑う。
なんなんだこの人・・・ なんで俺にこんなに絡んでくるんだろう。
「初対面であった時も射撃したことを隠そうとするし、サバイバル演習の時も実力を隠そうとするし、何が目的なのかよく分からないけど、銃の腕だけは歴代冒険者の中でも最強クラスなのね、サイカ君って」
背筋が凍ったような感覚が俺を襲う。
なんなんだこの人は。なぜ俺のサバイバル演習でのことを知っているんだ。
そもそも、この人は俺と違うクラスじゃないのか・・・?
いや、そもそもこの人は・・・ 上級生?
「私はな~んでも知っているのよ? サイカ君。だって私は・・・」
シアンさんは、余裕たっぷりそうな笑みを浮かべながら言った。
「この学校の生徒会長だから!」
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どうやら、クラス対抗戦で優勝したクラスは、上級生の優勝クラスとも戦うらしく、シアンさんは3-2の代表として出場するらしい。
・・・くそ、なんでか分からないがとても嫌な予感がする。
そもそも、3年にもなって卒業出来てないってことはただの落ちこぼれのはずなのに、シアンさんからはなぜか分からないがめちゃくちゃ強そうって感じのオーラが出ていた。
俺が本気でやっても勝てるかどうか分からないくらいの実力を持ってそうだ。
「サイカさん、さっきからどうしたんですの?」
寮の玄関でずーっと考え事をしていたら、1時間くらい経っていた。
確かに1時間も玄関に座りっぱなしの奴とか傍から見たらキモいよな。
「悪い、ちょっと考え事してたんだ。もう部屋に戻るよ」
俺は、靴を脱ぎ捨て自分の部屋に閉じこもる。
そういえば、シアンさんの下の名前を聞いていなかったな。
どこかの名家の生まれならピンと来るはずなんだがな・・・
「サイカさーん、玄関に購買の荷物が置きっぱなしですわよー?」
シェリさんは玄関から俺を呼ぶ。
あ、やば。玄関に荷物を置きっぱなしにしていた。
「ああ、悪い。取りに行くわ」
俺は部屋から玄関に荷物を取りに行こうとする。
「食料や飲料は冷蔵庫に入れておきますわ。サイカさんは疲れているみたいですし、ゆっくり休んでください」
シェリさんは、俺に気を使ってそう言う。
まあ、有難くご好意に甘えておこう。
・・・あれ? なにか大事なことを忘れていないか?
「きゃああああああああああああああああああああ!?」
台所からシェリさんの悲鳴が聞こえてくる。
しまった! 俺はあの荷物の中に保健体育の参考書を入れっぱなしにしていたままだった!
「こっこここ・・・ これ!? これは!?」
目の前には数冊のエロ本が束ねてあり、言い逃れが出来ない状況が出来上がっていた。
「これは違うんだー!」
言い訳をさせてくれ!
今まで女の子と関わらなかったから良かったけど、最近女の子と接する機会が妙に増えてきてさあ!
だから破廉恥なことをしないように、書籍などで自分を賢者にさせておく必要があったんだ!
だがそんな言い訳が女子に通じるはずもなく、シェリさんは涙目で俺を睨む。
「サイカさんの好みは眼鏡をかけた黒髪の女の子なのですわね・・・ ショックですわ・・・」
そっちかよ!?
ってか性癖をバラさないで!?