11話
おかしい。
絶対におかしい。
今日の朝のHR、教師が突然「これから班活動が中心の授業が増えますので、班決めをしてください。計5人という取り決めが守られていれば誰と組んでも構いません」と言い出した。
それは別におかしくもなんともない。
班活動は、班としての評価が対象になるので、誰もが優秀な人と組みたがる。
まあシェリさん辺りは色んな人から班に誘われるだろう。
実技からっきしの俺としては、気の良さそうな余り物の男子と組もうかと思っていた。
なので、余り物が出るまで自席で待機。
普通とる行動はこうだろう。
なのに、俺の席には3人もの女子が群がっていた。
「先にサイカさんを誘おうとしたのは私です! シェリさんとモモさんはどいてくださいー!」
「私はサイカと同じ銃使い。班を組むなら私とが一番連携を合わせやすい。だから二人はどいて」
「ペアであるわたくしとが一番合わせやすいに決まっておりますわ! いいから二人はどいてください!」
ああ・・・ 頭が痛い・・・
このシチュエーションは絶対におかしいだろ・・・
「お前らいい加減にしろよ・・・ ってかもう男子残ってないじゃねえか!?」
やばい、余り物が出るまで待っていたら、男子はちょうど俺以外でピッタリになってしまったようだ。
ということは俺以外の班員は全員女子ということに・・・
「つーか、班は5人までなんだから皆同じでいいじゃねえか・・・ なんで別々になりたがるんだよ・・・」
もう乗りかかった船だししょうがない。
俺以外が全員女子だと確定したのだったら、最初から知人が多い方がまだマシだろう。
「サイカがこの中で組みたい人を一人だけ選んで」
「そうですよ! 誰が一番いいんですか!? 私に決まってますよね!?」
「わたくしに決まっておりますわ! さあ、早く選びなさい!」
なんでコイツらは頑なに組みたがらないんだ・・・
ここは俺がなんとかしないと時間切れになっちまう。
「一人だけなんて選べるわけないだろ・・・ 俺は皆と組みたい」
とりあえずこんなことを適当に言っておけばいいだろう。
「・・・サイカは欲張り」
「しょ、しょうがないですねサイカさんは・・・」
「いつか一人だけって決めてもらいますからね!」
円満に解決したようだ。
チョロい。チョロ過ぎるぞお前ら。
「んで、5人って言ってるけどこれじゃあ1人足りないぜ? どうするんだ?」
俺、シェリさん、ティア、モモで4人。あと1人入れないと5人にはならない。
一体誰を入れるのか。
「では時間切れです。残っている人は先生が適当に振り分けちゃいますので文句は言わないでくださいね」
と、ここで時間切れか。
俺らの班の最後の一人は誰になるのだろうか・・・
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「サイカの寮ってどこにあるの?」
講義が全て終わり、寮に戻ろうかとしていたところ、モモに呼び止められた。
「ああ、ここからちょっと離れた301号室だ。なんでいきなりそんなことを聞くんだ?」
「いや、放課後の生徒間の交流は自由っていうから・・・」
なぜ頬を赤らめる。
「俺の寮来るか?」
「え、いいの!?」
パアッと表情が和らぐモモ。
ああ、こういう風に見てる分には普通に可愛いなあ・・・
「ああ、少し歩くけどいいか?」
「うん! 全然大丈夫!」
しかし俺は忘れていた。
ルームメイトの存在を。
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「おかえり願いますわ」
寮の前では不機嫌マックスのシェリさんが迎えてくれた。
あれぇ、この人ついこの間俺にキスしてくれたよね・・・?
なんでこんなに怖い顔を俺に向けることができるの・・・?
「そうか・・・ 迂闊だった。サイカのペアはこの女・・・!」
モモもとても不機嫌そうな顔をしている。
一体何がお前らをそこまで駆り立てるんだ。
「ここはわたくし達の寮なの。帰って頂戴」
おい、何故わたくし達にアクセントをつけるんだ。
あとモモも涙目にならないでくれ。俺が罪悪感で死ぬ。
「いや、入れるのは俺の部屋だけだしそれならシェリさんに言われる筋合ないだろ?」
「それでもダメです! 絶対ダメ!!」
意地になるシェリさん。
うーん、これはちょっと間を空けないと無理そうだな。
「ふふっ。もういいやサイカ。なんか必死になってるこの人を見たら冷めちゃった」
「いいのか? 悪いな。わざわざここまで来させといて」
なぜか機嫌を取り直したように見えるモモ。
今のやり取りでなにかあったのか。
「分かったらさっさと帰りなさい!」
「シェリさんって、サイカに対してさん付けしてるんだね」
「!? そ、それは・・・!」
「私はお互い名前呼び。ティアさんもサイカのことはさん付け。現時点では私が一番リードしてるってことじゃないの?」
「ううっ・・・ そんなことはっ・・・」
「じゃあ、また明日学校でね」
モモはそのままダッシュで消えてしまった。
あの一瞬でなにを言い争っていたかは聞こえなかったが、どうやらシェリさんが再起不能になっている。
一体なにがあったっていうんだ・・・