プロローグ
実験小説第2弾。
薄幸の少年の新しい生活の始まり始まり。
少年は絶望していた・・・
少年の望みはたった一つ、一日でも長く妹の笑顔を見ていること・・・
しかし、その笑顔は永遠に失われた・・・
少年「橘晶」は普通の少年だった。
両親と双子の妹「美雪」との四人生活。
妹は生まれつき体が弱く、医師の診断では20歳まで生きられないと言われていた。
しかし、家族仲は良く、笑顔が絶えない家族だった。
晶と美雪が10歳の誕生日を迎えるその日、両親は事故に遭い、帰らぬ人となった・・・
その日から二人の人生は過酷だった。
10歳で両親を亡くした子供達に待っていたのは、親族を名乗る大人たちによる財産強奪。
住む場所すら奪われ、その身一つで街に放り出された晶。
しかし、絶望している暇は無かった。
生まれつき体が弱く、病院の病室から出れない妹の治療費を稼ぐために、晶はありとあらゆることをした。
しかし、街は幼い少年には過酷過ぎた・・・
それでも少年は、何度も何度もボロ雑巾のようになりながらも必死で妹の入院費を稼いだ。
稼いだお金を奪われるなんてことも何度もあった・・・
それでも少年はお金を稼ぎ続けた・・・
そんな無茶をする少年を見かねて、生きるための知恵と力を授ける者達がいた。
夜の街の顔役の一人、「マダムバタフライ」と名乗る女性が少年に手を差し伸べた。
「あんたの顔は売れそうだからあたしが拾ってあげる」と彼女は言った。
彼女に拾われ、住む場所と女性のイロハを学んだ。
「あんたの源氏名は黒アゲハね」とマダムは言った。
マダムバタフライの弟子だからだろうか?
そして、安定した?仕事を手に入れた。
彼女の紹介で、お金持ちのご夫人たちとのデート相手や、一晩の相手を務めることになった。
デートなら5万、性行為込みの泊まりなら10万の稼ぎになった。
護身のためマダムバタフライの紹介で、軍人崩れの男性からは戦う術を教えられた。
「これでちっとはマシになるだろ?」と彼は言う。
軍用格闘技は護身術だろうか?
カーネルに指導され、卒業試験と称した地下格闘場に参加させられたのは何時だったか・・・
よく生きていたものである・・・
いつものように美雪の病室へと向かう。
今日は美雪の誕生日。
このプレゼントは喜んでもらえるだろうか?
病院に到着すると、看護士たちが慌しく動いている。
一人の看護士がこちらに向かって走ってくる。
何かあったのか?まさか!?
「晶君、美雪ちゃんが!!!」
そのセリフを聞いて全てを理解した、美雪の病状が悪化したことを・・・
美雪の病室へと走る!
そして、美雪は帰らぬ人となった・・・
美雪の最後を看取った看護士さんから美雪の遺言を聞いた。
「兄様、どうか自由に・・・」
マダムに連絡し、葬儀の手続きをしてもらった。
自分では心の整理が出来ず、何も出来る状態ではなかった。
粛々と葬儀の準備が進む。
火葬場で焼かれていく美雪を見つめる目から涙は出なかった・・・
自室に戻り、遺骨を見つめる。
望みはたった一つだった・・・
あの子が笑ってくれるなら何でもした・・・
それももう終り・・・
自分には何も残らなかった・・・
そして自分は、風呂場にて手首を切って自殺した・・・
どうか来世は妹と二人、幸せになりますように・・・
そして橘晶の一生は終った・・・
「おかえりなさい」
意識が消える瞬間、誰かの声を聞いたような気がする・・・
のんびり更新していきます。
主人公のこれからにご期待ください。