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I☆DOL TIME -アイドル力1000の底辺アイドル-  作者: 花澤文化
第4章 『Rest Time』~休憩時間~
29/29

第28ステージ 学校祭、終わらない日

 Rest Dayライブ後の学校はやはりつらいものがあったらしく、あの岸島でさえもなかなか授業に集中できずにいたらしい。

 それでも最低限のことはしっかりとやっている分、御鏡よりかはマシではあるが。そもそもあいつは普段からだらけているのであまり変わらないように思える。


「さすがに少し疲れちゃったね・・・」


 とは岸島の言葉である。

 そういう場合のためにこの学校にはいろいろな制度があり、最悪休むことも可能だ。これが日本で最多のアイドルを抱える常光学園なのである。

 しかしそんな特別な制度を使うこともなく、俺たちは普通に学校に来ていた。


「だって休むわけにはいかないでしょ?」


 それでも笑顔でそういうのはさすがに真面目がすぎると思うがそれもまた岸島のいいところなので何も言えない。まだであって数か月ではあるが、それでもなんとなくわかってきた。岸島らしさというものが。

 恐らくそれは岸島の個性と言ってもいいものだ。

 ふつうで。

 目立たなくて。

 冴えない。

 そんなどこにでもいるような、普通なものを徹底する。すでに個性である。


 それでも通じないのがアイドル界。

 だから俺がその手伝いをするのだ。個性を持ったまま目立てるようにメイクという手段で。

 お互いに利用しあうという関係で、お互いを道具としか見ていない、そういう関係を作りたかったのだが岸島にはどうやらそれが無理らしい。

 いや、たぶん、きっと・・・俺にもそれは無理、なのかもしれない。


「うへー・・・」


 隣で御鏡が唸っていた。

 こいつもこいつですごいやつだった。あの穂豊が認めている、そして俺の勘で引き入れた人材ではあるが、この間のライブで改めて引き入れたことが正解だと思った。


 ステージクリエイト。

 自分が出演者でありながらステージを作る。もちろんすべてを作ることは不可能なのでスタッフの力を借りなければできないが、実際にステージ上で観客の様子を見てそれに合わせてステージを作り替えることは御鏡にしかできない。


 そういった点ではどこかスカーレットに似ているところもある。

 とはいえ、性格全く違うのだが。


「ところでこの後の活動ってどうなるの?」


 岸島のその質問に対して少し悩む。

 CDも小規模ながら発売しており、売上もなかなか。アイドルの知名度、というよりかは平和プロダクションが支援したという部分がいいのだろう。感謝である。


 ネットでも『平和プロダクションが支援!?それほどまでの逸材か』なんてニュースがすごい勢いで流れていた。アイドルの名前が売れてほしいところではあるが、贅沢は言うまい。

 そのおかげかどうやら岸島サイクリングにもお客さんが来始めたらしい。まだファンというよりかは新しいお店に流れていた近所の知り合いが訪ねてきた程度らしいが、それでもかなり助かったらしい。


 岸島の目標は達成とまではいかないが、順調である。そして俺の目標。岸島を蝶野紡に勝たせることで間接的に俺が杵島透に勝つこと。

 それが順調かどうかというのはよく分からない。確実少しずつ近づいてはいるが・・・。


「今はまだCD発売のような大きな活動はないが・・・」


 地道に仕事を重ねていくしかない。そう言おうと思ってちらりと御鏡を見る。

 今ここでそのような言葉を言ってしまうとこいつはやる気をなくすに違いない。Rest DayのCDデビューは終わってしまったから2枚目が出ない限り御鏡が俺たちの手伝いをする必要はない。

 だがこのような人材、利用しないわけにはいかないのだ・・・!


「そういえば」


 ふと御鏡が思い出したように口を開いた。


「わたしたち保留してましたが、副会長からの頼みごととやらがありましたよね」

「あ」


 忘れていた、という言葉は飲み込んだ。

 その頼まれ事というのは学校祭にて出し物をしてほしいというものだった。第2音楽室を勝手に部室のように使っていることを黙認してもらっている恩があるので断りにくく、つい言葉を濁したまま何も返答をしていなかったのである。


 それについて話しつつも、すぐにその第2音楽室の前についたため、一度中断。扉をあけて中にいた百に軽く挨拶をする。


「3人で仲良さげにどうしたの?」

「いや、副会長の頼み事を思い出してな・・・」

「ああ・・・」


 全員思い出したくなかったらしい。

 そこまで嫌なら断ればいい、と思うかもしれないが恩がある上にどこかあの副会長相手に断ることは難しいように思える。


 断ればきっと「そっか。考えてくれてありがとう」とまで言われるだろう。考え直して、とは言われないはずだ。それが逆に辛い。こう・・・むこうからぐいぐいくるような感じであれば断りやすいものの、いい人なのだ副会長は。


「誰か手品とか出来ないの?」

「この学校の広い体育館で手品か・・・トランプや10円玉がなくなる程度の小さい手品で見る者が喜んでくれればいいがな」


 何気に常光学園の学校祭は注目されている。

 一般開放されているということはもちろん、アイドルの多い学校なのでもはやライブのようになるのだ。歌を歌い、踊り、そして騒ぐ。

 有名でないアイドルだろうとその盛り上がりは毎年ものすごいことになる。


「では串刺しからの脱出みたいな手品はどうでしょう」

「歌子ちゃん・・・それはさすがにできないんじゃ・・・」

「御鏡はそんな手品できるのか?もちろん刺される方で」

「わたしはそもそも太くて箱に入らないので」


 御鏡はすぐに目を逸らした。「いやあ、豚子が串刺しって笑えない冗談ですよお」と誤魔化している。思わず否定してしまったが、今は非常事態。こうして頭ごなしに案を否定していてはいけない。

 少しでも検討することが大事・・・かもしれない。


 それにしても不思議だ。毎年そんなに盛り上がる体育館でのライブがなぜ今年は出場者が足りないぐらいになっているのだろうか。


「なんか、毎年人気だから枠を広げて時間も伸ばしたって副会長が言ってた気がする。どうしても長く楽しみたいって声が多かったんだって」

「それで出場者が足りなければ意味がないだろう」


 元も子もないというやつだ。

 あの有能そうな副会長がそのようなミスをするわけがない、と思ってしまう。しかし彼女1人でどうにかなるようなものではない、生徒会は。他の生徒や役員が希望した場合、1人の意見なんて押し切られてしまうと俺は思っている。

 はやくから俺たちに声をかけていたあの人はすでにこの状況を予見していたのだろう。


「普通はあれだよね、バンドとかが出場したり、後はギャグ枠で踊ったり、変装したり、ちょっとした劇をやったり・・・」

「バンドか」

「ギャグ枠とか変装とかはもう除外してるんですね」


 それはなしだ。

 いや、別にやってもいいのだが、その場合俺は出場しない。絶対にしたくない。


「俺はこのままで十分魅力的、変に変装やらギャグ枠なんぞやる必要はないのだ」

「・・・・・」

「・・・・・あはは・・・」


 場がなぜか冷えてしまったが、いい機会だ。

 考えてみる。もちろん、バンドについて。

 百がピアノ、もしくはキーボードだとして・・・宣伝にもなるから岸島はボーカル。御鏡もボーカルだとしたら俺は・・・?というか音楽担当少なすぎないか・・・?


「そういえば、いおくん」

「その呼び名はやめろと言ったはずだが」

「なんかさっき演劇部の部長がいおくんのこと探してたよ」

「・・・・・またか・・・」


 今までは俺個人に突っかかってきていたのだが、アイドル部のようなものが設立されてとうとうこちら全体に突っかかってくるようになってきたか。


「わかった。演劇部の方に顔を出してみよう」

「え、なんかいつもは避けてるのにやけに積極的・・・」


 「あ」と百は何かに気付いたみたいだ。


「まっていおくん!」

「後は任せた3人共!」


 俺はそそくさと部室を出た。

 そう、俺は演劇部の方に顔を出さなければいけない。その間、俺らの出し物に関してはあいつらに任せることにしたのだ。

 後は演劇部に顔を出さず、適当にそこらへんぶらついていればいい。


 そう思って1階に降り、玄関近くまで歩いて行くとそこにはなんだか見覚えのある人物が。

 ・・・・・も見覚え・・・というか見覚えのある色というか。


「ここにはわたくしのライバルがいますの。通して下さる?」

「見たところ君は他校の生徒のようだが・・・いや、他校というか・・・お嬢様・・・?」


 どうやら他校だからと入れてもらえない様子の赤色。

 当たり前だろう・・・逆に今までよくうちの部室に来れていたな・・・。


 このままでは相手をしている人がかわいそうなので俺が行くか・・・。一歩踏み出して、前を見る。


「ああ・・・」


 するとその相手をしている人の顔をもよく見えた。

 思わずため息をつく。

 スカーレットの相手をしていたのは、先ほど俺を探していた演劇部部長、アイドル嫌いの自画英字じがえいじだった。




かなり間があいてしまいました。学校祭が終わると本編に戻ると思うのでよろしくお願いします。


今、中盤を過ぎて終盤に入る前・・・という感じです。

もしよければ次回もよろしくお願いします。

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