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I☆DOL TIME -アイドル力1000の底辺アイドル-  作者: 花澤文化
第3章 ユニット結成騒ぎ
22/29

第21ステージ 学校祭の準備

 もうすでに季節は夏。

 7月に入り、気温はそれらしい高さになっている。この状態になる前に山登りが必要な仕事をしておいてよかったと思うぐらいだ。そんな中、俺たちは放課後また音楽室に集まっていた。

 ただ・・・。


「・・・・・あつ・・」

「・・・・・」

「うでー・・・」

「あつ・・・いね・・・」


 この部屋冷房がほとんど効いておらず、ひどく熱い。全員その場で倒れ込み、一切動かず汗をかかないようにしている。そんな有様ではあるのだが。

 お寺での修行ロケハンを終えた俺たちは普通に帰宅して、普通に学校に登校していた。あの修行の次の日が学校とはあまり考えたくなかったが、しょうがない。


『いおくんって仕事熱心なだけで真面目ではないわよね』


 とは百の言葉だ。

 ここでいう真面目、とは授業をしっかり受けている人間のことなのだろう。確かに他のクラスメイトと同じようになるべく授業にはエネルギーを節約して臨み、できることなら授業に出たくないというのが本心だ。


 だから心身ともに疲れたあのあとはゆっくり休みたいというのが俺の、いや、恐らく俺たち3人の気持ちだったはずである。

 そしてここは常光学園。そういう唐突な休みにも、アイドルによる仕事のための休みにも対応している。休もうと思えばできるはずだったのだが・・・。


『私は行くよ?』


 という岸島の一言により、俺たちは登校せざるを得なくなった。一緒に仕事をしていた岸島が行って俺たちが行かないわけにはいかないのだ。それこそ真面目なのは岸島だ。

 もちろん、当たり前ではあるが御鏡はそれでも休もうとしていた。俺だけとばっちりを受けるのもなんなので無理矢理連れて来たのだった。


 ただ、その日岸島と御鏡はどうやら早退したらしく・・・最後まで学校にいたのは俺だけだった。

 2人が風邪で寝込んだという報告を聞いたのは放課後になってからすぐのことだった。それで俺は急遽代わりにテレビに出演することになったのである。


「今まで断り続けたテレビに今更出る・・・なんだか屈辱的な気分だ・・・」


 最初はそう思っていたものの、自分のためにも、休むわけにはいかない。

 俺は1人でテレビ局に乗り込み、そこで宣伝活動を行ったのだった。

 

 その時のことは岸島が鬼のように「ごめんなさい」と謝り続け、御鏡が「え、1人で出演したんですか?すっげー有名人じゃないですか」と茶化してきたことを覚えている。

 あれから1週間、ネットでサイトなどを作り、地道な宣伝活動を続けていた。


「・・・・・」


 アイドラーを眺める。


 『Rest Dayってユニットがデビューするらしい』

 『平和プロダクションが支援しているっぽいね、一応期待』

 『この2人ってこの間29アイスクリームのキャンペーンガールオーディションに出てなかった?』

 『御鏡って人、あの穂豊が推してるアイドルじゃなかったっけ』

 『あ、岸島狐子って俺がこの間行った駄菓子屋にいた子じゃん』

 『ほぼ無名の2人のユニットって平プロ思い切ったなあ』

 『この間テレビに出てた宣伝してた人男の人だったけどマネージャー?』

 

 その宣伝活動が意味をなしたのか分からない。

 ほとんどは平和プロダクション支援という言葉によって期待されているようではあるが、それでも構わない。とにかく有名になれば問題はないのだ。


 ほんとはこの間のテレビ出演のときの動画を許可をもらいどこか動画サイトに投稿しようかと思っていたのだが、代わりに俺が出てしまったのでそれも意味はない。


 他の人間による『この間テレビに出てたやつがメイクいおろいの五百蔵果月っぽい』という動画が上がっていたことには少し驚いた。しかしそれも宣伝の1つになっているらしい。


 もう1押しぐらいは欲しい。

 そう思って俺はスマートフォンから目を離し、熱い現実に戻る。

 そこには今もぐだぐだとしている3人がいた。


「というかなんでこの教室冷房がこんなに弱いのよ・・・壊れてるんじゃない・・・」


 百が弱音を吐く。

 律儀に家の手伝いがないときは毎回ここに来てくれる。こいつも相当真面目ではある。

 なぜこの音楽室の冷房が壊れたまんまなのか、という疑問はすぐに解消できた。ここは第2音楽室であり、普段授業で使っているのは第1音楽室。


 放課後俺たちが勝手に使用しても誰も困らない、なんであるのかも分からないこの教室に冷房をなおすという費用さえ使いたくはないのだろう。

 

「この熱さで楽器とか駄目にならないのか?」

「さあ?」

「さあってお前は楽器屋の娘だろう・・・」


 百が首を傾げたのにはさすがに驚かざるを得ない。本当に手伝いとして役に立っているんだろうか。俺が気にすることではないのかもしれないが。


「一番だらーんとしていて何ですけど、ここの教室勝手に使っといて相当ずうずうしいですよね」

「・・・・・」


 全員が黙るあたりそれぞれに罪の意識があるのだろう・・・。

 一応許可は出ているはずなんだがな副会長の。

 ガチャ。

 ガチャ・・・?


「ねえみんな!バンド組んでみない!?」


 扉を開けて入ってきたのはすっかり夏服になって涼しそうにしている副会長、鐙屋姫花その人だった。学年は俺たちより1つ上の3年生。

 そしてここを使うことを黙認してもらっているため、頭の上がらない相手の1人だった。


「って熱・・・ここ冷房きいてないの?」


 冷房聞いてないの?

 その質問は「冷房聞いてないの?だったらすぐに業者さんに頼んでもらって直してもらわないと」そういう優しいニュアンスが含まれていることに全員気付いた。


 先ほどまで文句を言っていた人間含めてこれ以上副会長に迷惑をかけるわけにはいかない、と。そう瞬間的に判断した。


「いえ、御鏡さんのダイエットに付き合っているんです。みんなでやった方が団結力も上がるし、あたしたちもダイエットになるし、ね」

「え、わ、わたしのだいえっと・・・?」

「そういうことです、鐙屋先輩。このままで大丈夫です」


 百の案に御鏡が困惑しながらも俺もそれに乗る。

 岸島は終始困ったように笑っていたが、鐙屋先輩は納得したのか「そうなんだ、なら私も参加する」と言ってこの教室の中に入ってきた。

 結局迷惑をかけている気がする・・・。


 いつものように椅子を集めてそれを並べる。

 いつもは椅子にもたれかかるようにしている御鏡も先輩の前ではきちんと椅子に座っていた。汗はかなりかいているが。というかこいつそもそも何年生なんだ・・・。


「で、バンドがどうのこうのと言っていましたが・・・」

「うん、それなんだけどね」


 そう言って目の前に差しだされたのは一枚の紙。

 そこには学校祭、と書かれていた。


「うちの学校祭、クラスでの出し物にも力を入れているけど有志で募集した人達の出し物にも力を入れてるんだよね。もうその募集は終わってるんだけど」

「そういえばそんなことをクラスで言っている奴がいたな」


 学校祭のことは正直興味がない。

 だから気にもとめていなかったが。


「予定していた枠が1つあいちゃって、だからバンドかなんか組んで君たちが出し物してくれないかなあって思ったんだけど・・・どう、かな?」


 困り顔。

 普段からお世話になっているし、力になってあげたい、そんな考えはみんな持っていただろう。しかしその言葉に返事をする者はいなかった。


「言ってはなんですが、たぶん俺たちの中に楽器が出来る人間は限られているかと・・・」


 普段からピアノを弾いている百はいけるとしても俺はリコーダー程度しか経験がないし、岸島も御鏡も楽器が出来るような話を聞いたことがない。


「わたしも体を動かす音ゲーって苦手なんですよね」

「今そんな話はしていない」


 御鏡の意見は訳が分からないが要するに楽器はできないということなのだろう。

 岸島も苦笑しながら、


「わ、私も・・・鍵盤ハーモニカとかリコーダーとか・・・小学生の頃にやったトライアングルとか・・・それぐらいしか・・・」


 バンド、というには随分と軽い楽団になってしまっている。

 軽い軽音。


「そうなんだ・・・でも別にバンドじゃなくてもいいし、何かやる気になったら教えてね。ほら、うちの学校祭だしアイドル事務所の人達もたくさん来るからいい宣伝になると思うよ」


 なるほど。

 だから俺たちにその役目をくれるということか。なんだかんだやはり気を遣われている。そこまで副会長のために何かしてあげたわけではないのだが、注目してくれているということなのだろうか。


「ち、ちなみにその・・・もし私たちがやらなかったらその1枠ってどうなるんですか?」


 静かに手を挙げながら岸島が質問する。

 すると鐙屋先輩は途端顔を曇らせて、


「う、うちの生徒会の2年生にね・・・もし枠があいていたら手品をやりたいという人がいるんだけど・・・」

「手品・・・」


 うちの広い体育館を使ってやるには地味であるし、遠すぎると何をやっているのか分からない。

 だからあまり有志発表向けではないだろう。


 一応検討はするということでそれを受ける。

 鐙屋先輩は笑顔で生徒会室に戻る。


「で、どうするの?」


 百の質問が静かな教室に響き渡った。

遅くなりました。21話です。


不定期ではありますが、今後もよろしくお願いします。

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