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I☆DOL TIME -アイドル力1000の底辺アイドル-  作者: 花澤文化
第3章 ユニット結成騒ぎ
20/29

第19ステージ お寺へロケハン!?

「うぅ・・・騙されましたあ・・・」


 木が生い茂る山。

 俺たち3人はそこを登っていた。あたり一面は緑で、時々吹く風が気持ちいい。とはいえもう6月も終わりに差し掛かっている。気温はそれなりにあり、少しだけ汗がうっとおしかった。

 では何しにこの山に来たのか。

 『Rest Day』に来た仕事をするためだった。正確にいえば、来たわけではなく、こちらからもらったと言うのが正しいが。

 この山の道自体そこまで険しくはなく、道も舗装されている。初心者や小さな子供でも歩けるようなコースで1人ぶつくさと多量の汗を流しながらヨロヨロ歩く人物が1人。


「や、山って・・・ひ、ひぃ!虫!・・・・・死ぬ・・・こんな暑い日にデブに山歩かせるとか正気ですか・・・うぐ・・・・はあ・・・はあ・・・・」

「安心しろ、デブというほど太ってはいない。その疲れは運動不足が原因だろう」

「冷静な分析は・・・いらないので・・・・飲み物くだ・・・さい・・・・・」


 先ほど山のふもとにあった自動販売機でいくつか買った水のペットボトルを御鏡歌子に渡す。それをもらうと思いっきりキャップをひねり一気に飲んでいく。

 ゴキュゴキュという喉を鳴らす音が聞こえてくるぐらいだった。


「ぷはあ!・・・・・・・五百蔵さん・・・騙しましたね・・・・・」

「ふははははは!騙された方が悪い!くくく・・・そもそも俺は嘘は言っていないからなあ!」

「ぐぬぬ諸悪の根源・・・わたしの魔法で成敗してくれる・・・!」


 木の棒を構え、適当にぶんぶん振る御鏡。

 そのようなことをして無駄に動くから疲れるのだ。

 気温が高いとはいえ、山。軽装は危険だろうと、肌を出さない動きやすい服を着ている。というかジャージだ。

 ちゃんとしたルールがあるのかもしれないが、一応ここは子供でも歩けるような簡単な場所。言ってしまえばちょっとした坂道のようなものだ。これでも大丈夫だろう。


「歌子ちゃん大丈夫?」


 そして先ほどから近くにいたにも関わらず全く存在感のない岸島。

 顔に汗はそこまで浮いておらず、やはり余裕そうだった。最近、学校の施設を使ってダンスや歌の練習をしているからか、最初よりもかなりシェイプアップされていた。

 そもそもこんな道で死ぬほど疲れること自体がおかしいのだが。


「ああ、きっちゃんありがと・・・あー!帰りたいー!・・・・・なんでわたしこんなところにいるのでござるか・・・」


 御鏡にユニットを組む時に俺は働かなくてもお金が手に入る方法があるとして印税を紹介した。あえて都合のいいように説明し、ある程度騙していたわけだが・・・。

 今回もそれでいこうと思っていた。なんやかんや理由をつけようと思っていたのだ。

 しかし今回の仕事、もとい『Rest Day』の初活動はどんな説明をしても嫌がった。

 なぜならば。


「なんでアイドルの仕事でお寺に行かなくてはならないのですか・・・・・!」


 行き帰りは山道。

 ゲームやお菓子など不要なものは持ちこみ不可。

 そして今から行くお寺は厳しい修行を一般人でも体験できるという場所で、ほとんどの人が全ての修行を終える前に帰ってしまうというかなり不安を煽るような場所だった。

 それを聞いて岸島も思わず唸るほど・・・御鏡は案の定ダダをこねた。

 無理矢理なんとか言う事を聞かせ(岸島がひたすら応援したり、お願いしたり、俺が働かない生活について語りまくった)ここに連れてきたのだった。


「そんな日に限ってなんでここまで晴れるし・・・許すまじ晴天・・・」


 空をにらむ御鏡。

 髪を切るのが面倒なのか適当に伸ばしっぱなしにしている髪が邪魔そうだった。

 御鏡をフォローしながら登山していると岸島が俺の方を向いて、尋ねる。


「ちなみに今日の仕事って確か・・・」

「ああ、ロケハン的なものだ」


 すでに岸島と御鏡に説明したが(この説明が仇となってさらに御鏡が外に出たがらなくなった)、今回はロケハンだった。

 アイドルがよく出るバラエティ番組『アイバラ』の罰ゲームとしてこのお寺の修行を1泊2日で体験するというものが今後あるらしい。

 さすがに修行に興味のある一般人と同じものをアイドルにさせるわけにはいかないという話が出て、お寺に少し弱めてもらうようお願いしたらしい。そこでその弱めた修行が本当にアイドルにとって無害なのか、辛くなりすぎないかを他のアイドルにロケハンしてもらい確かめる仕事だった。

 ロケハンというより実験体である。

 というわけでアイドラーで募集していたのだが・・・さすがに俺もこれを選ぶつもりはなかった。

 ただ・・・。


『ここで協力してくれたアイドルはアイバラで少しの宣伝時間を設けます。ロケハンしてくれた話というのもとてもおいしいですし、少しだけ出演することができます』


 という一文があった。

 大きなチャンスではあるが、危険が伴う。しかし。


『やってみる』


 という岸島の一言が意外だった。

 俺はその意見を尊重したわけである。だって岸島が自分からここまでやる気になっているところなど見た事がなかったのだから。


『藤堂さんが言ってたように生半可な出来じゃ許してもらえない。だったら生半可じゃない仕事をしなきゃいけないかな・・・って・・・不安だけど・・・』


 その一言で俺に火がついたというのもあるが。

 本来ならそのロケハンにもオーディションというものがあるはずだった。だからこそトークの面白さとかも問われるのでは・・・?曲がりなりにもテレビだし容姿とかも・・・?アイドルっぽい服って何・・・?慌てふためいていたが、オーディションはなかった。

 俺たち以外参加者がいなかったらしい。

 意気込んでいた岸島も震えていた。そこまでとは。


「今回これを乗り切ればテレビ出演だ。恐らく数十秒程度ではあるが、大きな一歩だろう」

「でもそのアイバラって深夜も深夜の時間帯のそんな人気ない番組じゃないですかー・・・」

「言うな」


 険しい道というわけでもないが、やはり歩きっぱなしというのは疲れるものだ。

 御鏡ほどではないが、俺や岸島にも少しずつ疲れが見え始めた。適度に休憩をとりながら登って行く。たまに虫(ほんとうに色々な虫がいる)が出てくる度に御鏡や岸島は驚いていた。

 そんな道を十数分。ようやく見えたのは大きな門だった。


「どうやらここのようだな」

「すごい立派なところだね」

「はあ・・・・はあ・・・・もう・・・寝たい・・・」


 常時開放しているのか、その門はあいていて、そして中にはたくさんの人で溢れている。なんでも本当にちょうど今、話題の場所らしい。

 見物している人や、奥へ奥へ進んでいく人。そして建物の中入って行く人など様々だった。

 あたりを見ても特別なものは見当たらないが、とてもいい景色が広がっている。生い茂る木、そして空は青い空、山部分には池のようなものもあり、太陽の光を反射して輝いている。

 この景色目当てでここに来る人もいるのだろう。


「私たちはどこに行けばいいんだろう?」

「どうやら係員専用入り口というものがあるらしい。そこへ行こう」


 門の中に入ってすぐにある大きな地図を見て、移動を開始する。

 というか最近のお寺というものは地図があるのだろうか。少しだけ見物人や客に対して優しすぎる気がするのだが。

 金閣寺のように来る客来る客が見物人という場所ならまだしも、こうして今現在も生きていて、修行体験が出来る場所でもあのような地図は必要なのだろうか。


「すごい景色だねー・・・」

「肉食いたい・・・」


 話がまるでかみ合っていない2人だが、山道を歩いている時よりは元気みたいだ。

 気温が高いが、ここは風の通りがいい場所のようで適度に風が吹いている。気持ちがいい。

 そんな場所を奥へ奥へ進んでいくと少しだけ狭い道に小さなドアがあった。係員専用と書いている。どうやらここが目的の場所のようだ。


「なんか・・・ドアというものを見ると一気に冷めますね」

「だからこうしてわざわざ狭い道の作っているのだろう。考え方としては遊園地とかヒーローショーとかそこらへんと同じだな。景観を壊したくないのだ」


 インターホンとかそういうものの類がなかったので一応ノックしておく。

 反応があった。ドタドタと歩く音が聞こえてくる。「どうぞ」という声が聞こえたのでドアノブを開き、ゆっくりと開けていく。

 そこにいたのは・・・。

 当たり前ではあるがお坊さんだった。ただ・・・。


「君たちがロケハンしてくれるアイドルですか。よく来てくれましたね、ささ中へどうぞ」


 来ている服は体にぴったりと張り付いたスーツ、頭は綺麗な坊主なのだが、そのスーツは胸の部分がばっくりとあいているスーツでそこからは胸毛が覗いていた。

 いや、なぜだ。


「五百蔵さん、あのお坊さん生やすところとか、剃るところ間違えてませんかね」

「気持ちは分かるが何か理由があるのかもしれない」

「な、なんか・・・恥ずかしい服、だね・・・」


 岸島はどうやら胸の部分が気になってまともに見れないようだった。

 そんなお坊さんに連れられて少し歩くと大きな部屋が現れた。どうやらここで俺たちは生活しなければならないらしい。

 いや、そんなことよりも俺はなぜそんな恰好をしているのかが気になってしょうがない。

 靴を脱いで大広間に上がる。


「あの」

「はい・・・ああ。確かに申し訳ありませんでした。アイドルが来ると聞いていたので部屋を1つしか用意していないのです。男の方がいらっしゃるとは思わず・・・広い部屋ではありますし、寝るときは距離をあけるなど工夫してもらえれば幸いです」

「いや、それも問題ではある・・・のですが・・・」


 そうではなく。

 なぜそのような格好をしているのか、ということが一番気になることなのだった。

 岸島はもちろん顔を赤くしながら俯いている。そんな中、御鏡が大きく手をあげた。


「お坊さん、なぜそんな恰好をしているのですか?」


 相変わらず怖いものなしなのか。


「これはすみません。私はただの坊主ではありません。いえ、むしろ私は坊主ではないのです。この格好は私たちの勝負服、アイドルとしての服なのです」

「アイドル・・・」

「え、お坊さんアイドルなんですか?」

「ええ、それとわたしは坊主ではありません。色々な噂があるようですが、厳密にいえばここはお寺ではないのです」


 そう言いながらそのお坊さんも大広間に上がる。

 大広間にしては少し小さめのテーブルを持ってきて真ん中にそれを置いた。近くにあるポットでお茶を作り、それを静かに持ってくる。

 御鏡はそれを見て「ぐ・・・Hot・・・!」と呟いていた。外と違い、それなりに涼しいこの場所。熱いお茶でもおいしく飲めるのだが、御鏡はまだ汗をかいている。


「ここは確かにいわゆるお坊さんがするような修行が体験できます。ただ、そういう場所なのです」

「・・・・お寺ではなく、修行体験ができるアトラクションのような施設、というわけか・・・ですね」

「はい」

「そういうものが今はあるんですね・・・」

「うへー・・・熱し・・・」


 それぞれコメントしていくが、御鏡だけはお茶に口をつけ、その感想を述べていた。平和プロダクションとの話し合いのときもそうだったが、人の話を聞くということに関してはどうにも苦手なようだ。


「だからこのような格好をしても罰をあてる仏様がいないので、安心ということですね」

「それとこれとはまた別のような・・・」

「一応ここは色々なお寺のお坊さんがやってくるのですが、その方達が認めたしっかりとした修行をすることが出来ます。そこはどうか安心してください」

「安心できませんよ・・・ぐぬぬ・・・」


 そしてその格好は今ちょうど1つのライブを終えて来たところなのだそうだ。このお寺アトラクションである『偽央寺ぎおうじ』のアイドルとして。

 数人のお坊さんがユニットを組んでいるらしく、その名前は『OBUおぼう43』というのだとか。仏がいるいないに関わらず罰が当たりそうなユニットである。

 

「さて、着替えていただいたらさっそく最初の修行に参りましょうか」


 そう言うと着替えの場所を教えてくれた後、大広間を出て行った。

 なんというかインパクトの強い方だ。


「色々衝撃だったが、とにかく今は仕事優先だ。俺は大広間にある男子トイレ内で着替える。お前たちは隠れられる場所で好きなように着替えるといい」

「うん」

「五百蔵さん・・・わたしの着替えを手伝ってくれないんですか・・・?」

「自分でやれ。後少しは羞恥心を持て」


 俺は男子トイレに入る。

 どうやら御鏡の着替えは岸島が手伝うことになっているらしいが・・・あまり甘やかすなと注意しておこう。着替えは温泉とかにいくとよくある模様つきの浴衣のようなものだった。

 しっかりと帯を締める。どうやらそれだけではなく、きちんと同じ柄のゆったりとしたズボンもある。それを来て終了か。

 男子トイレを出てしばらくすると2人が戻ってきた。模様に違いはあれど、大体同じ格好をしている。


「うっぷ・・・」

「なぜか御鏡の様子がおかしいが?」

「なんかここに来る前の間お水のみ過ぎちゃったみたいで・・・帯を締めたらちょっと危なく・・・でもそれ以上緩めちゃうとはだけちゃうし・・・」

「お前・・・・。その水っ腹がなおるまで中にTシャツかなんか着ろ。その間なら緩めてもはだけても問題ないだろう」


 前途多難だった。

 まだ修行が始まってもいないのになぜここまで疲れるのか。

 その後案内されたのはまたしても大広間。ただし、そこにはいたるところにお坊さんがいた。この人達もアイドルらしいのだが、本物のお坊さんらしく着ている服は袈裟のようなものだった。

 どうやら服装で区別しているらしいが・・・それにしてもあの格好はない。


「少なくとも俺に任せてくれればそれなりの・・・いや・・・・!さらに最高な衣装へと・・・!」

「さらにややこしくなりますから」


 俺のメイクリストとして、スタイリストとして燃え始めた気持ちを御鏡が沈静する。

 岸島はといえば、こういう場所は珍しいのかあたりをちらちらとみていた。俺ら3人は地面に座禅させられる。どうやらあれだ、少しでも形が崩れれば肩に喝を入れられるやつだろう。

 というか・・・。


「な、なぜ俺までこれを受けることになっているのだ!」


 すごく自然な流れだったため、思わず服も着替えてしまったが、アイドルではない俺がこれを受ける意味がない。ないし、全く受けたくない!

 今回俺は苦しんでいるこいつらを遠目から笑う位置ではなかったのか!


「で、でもほら受けたら健康になるかもしれないよ・・・?」

「うふふ、わたしの駄目っぷりに気をとられて自分のことを忘れていたみたいですね・・・」

「くっ・・・不覚・・・!」


 なんだか分からないけれど今更もうやめることができない雰囲気だ!

 俺は仕方なくその場に座り込む。というか俺は座禅のことをあぐらをかけばそれでいいと思っていたが微妙に違うらしい。すでに足がつりそうだった。

 隣を見ると岸島は綺麗な背筋で座禅している。

 御鏡は見るまでもないと思っていたがそもそも座禅ができていない。「ぐおぉ・・・」と言いながら苦戦している。あれではすぐに終わりだろう。


「安心してください。そもそもバラエティ用に弱めている修行です。座禅が出来ないのは想定外でしたが、背筋を伸ばし、長い時間無心でいることがここでは求められていると思っていただいてよろしいでしょう」

「わたしはあなたの格好がもう少し落ち着けば座禅できそうなんですがね」

「なぜ喧嘩を売る」


 座禅できないと言われたことが気に食わなかったのか知らないが。

 いや、気に食わない以前にあの服装はおかしいのだが。


「では開始します」


 座禅開始。

 後ろにいる本物のお坊さんがもし少しでも余計な感情が入っていると判断すると後ろから喝を入れられる。よく見るものだった。

 しばらく黙っているとふと曲が流れてくる。とてもアップテンポな曲だ。この中でも心を乱さずにいろということなのだろうか。


「うへえ・・・もう駄目です・・・」


 御鏡がへたれる。

 この部屋、それなりに気温が高く、じっとしているだけでも辛い。さらにはちょいちょい虫が飛んでいるのだ。どちらも苦手な御鏡はそのままぐでん、と地面に倒れる。

 そしてもちろん・・・。


「喝ッ!」

「ギャー!」


 肩を叩かれる。バキッ!

 おや・・・。


「な、なんか弱まってる気しない・・・・・?」

「あの音はやばくないか・・・」


 御鏡が地面で痙攣したまま動かない。「ゲーム・・・アニメ・・・漫画・・・肉・・・」しかも煩悩にまみれている。何を喝されたんだあいつは。


「一応BGMをかけることによって堅苦しいイメージを払しょくしたつもりなんですが・・・」

「弱めるとはそういうことではない!」


 もっとこう・・・叩く威力を弱めるとかそういう意味でとっつき易くしてほしかったのだが。

 あまりの威力に御鏡は煩悩が溢れだしてしまっているし、これではまるで意味がない。


「わかりました。では少し改善することにします」


 テレビ局の人がロケハンしようと思ったのはどうやら正しい判断だったようだ。

 これから同じような展開が待っているとなると正直帰りたいという御鏡の気持ちも分からないでもないのだった。

またしてもタイトルが変わっていますが、なかなか自分の中で安定しません。(仮)とかってつければいいのですが、それもまた混乱を招くかなあと。


とはいえ、もちろん内容は変わっていないのでよろしくお願いします。

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