第10ステージ 神埼・S・リディルというアイドル
衝撃の事実。
岸島狐子をエントリーさせた29アイスクリームというアイスクリーム屋のキャンペーンガールを決めるためのトーナメント1回戦の相手はあの蝶野紡であった。
あまりのことに言葉を失ったあと頭にふつふつとわき上がる疑問。
なぜまた蝶野紡がエントリーしているのか。
それが全く分からなかった。
「どういうことだ・・・」
29アイスクリームのキャンペーンガールはアイドルの仕事の初歩、というか今有名になっているアイドルは大体ここのキャンペーンガールをやっているという噂、もといジンクスがある。すなわち、ここのキャンペーンガールをやれば有名になれるのでは?と。
だからこそ、蝶野紡がやるような仕事ではないのだ。すでに有名で、それに1年前にすでにそのキャンペーンガールに選ばれているのである。2回やったアイドルなど前代未聞である。
そしてそんな相手に運悪く1回戦からあたってしまった事実。
色々なことが俺たちにのしかかってくる。
「まあ、チャンスは来年もあるわ。別に悲観することではないと思う」
「やる前から淡々と諦めるな」
完全に諦めムードの百。
岸島も一度決めかけた決意だが、再び揺らぎ始めている。というより先ほどから一切しゃべらない。心ここにあらずといった雰囲気だった。
「確かに2度出場してはならないという表記はどこにもないが・・・暗黙の了解みたいになっていたんじゃないのか・・・?」
アイドルになりたての者をキャンペーンガールにして、そこを第一歩とすることが多い仕事。なんとなく暗黙のルールとして新人アイドルに譲るというのがあると思っていた。でもそれすらも堂々と破っていく。
トーナメント参加者は関係者や審査員、それにアイドル事務所などの関係者にしか教えられず、優勝して初めて世間の目に出る事になる。だから今は大きな騒ぎになっていないが、後々大変なことになりそうだ。
とはいえ否定的な意見はほとんど来ないだろう。
「初心を忘れない姿勢とか仕事は仕事、ルールなんかないと割り切るところ。どれも肯定的な意見ばかりが溢れかえるだろうな」
新人アイドルには不評かもしれないが、と付け加える。
しかし俺自身も批判するつもりはなかった。むしろその姿勢は俺の得意とするもの。誰かに嫌われようとも自分の利益を勝ち取る。好みのスタイルだ。
「だからこそ、俺は蝶野紡の尊敬の念さえ抱いている・・・!」
自分のプロデュースするアイドルが負けそうになっている、のにどこか尊敬、そしてもう戦えると嬉しさ、全てが自分の力になるようだ。
「ふふふ・・・ふはははははははははははは!」
「相変わらずあんたはわけわかんないわね・・・」
その様子を見てため息をつく百。
その百も俺ももうそろそろ岸島をフォローしなくては、と先ほどからかたまっている当人に話しかける。声をかけられたことにも最初は気付かなかった岸島だが、すぐにはっ!と気付く。
「わ、私は・・・・・」
「そこからか・・・」
どうやら記憶ごとその部分が消えているらしい岸島にもう一度説明するとみるみる顔を青ざめていった。気持ちはわかるが表情がころころ変わるやつだと俺は思った。
「ど、どうしよう五百蔵くん、月見里さん・・・蝶野紡さんってあの蝶野紡さんだよね・・・」
「そんな名前はなるべくなら他にいてほしくないところだが、そうだな。その蝶野紡だ」
「ぜ、絶対勝てないよ・・・そもそも・・・・五百蔵くん?なんか笑ってる・・・?」
絶望的状況。
なのに俺の顔には笑みが浮かんでいた。さわやかな笑顔なんかではない。狡猾的な何かを企んでいるような笑みだ。
「確かに少しだけ驚いたが・・・俄然燃える。こんな状況だ、嫌ならやめても構わない。だが、俺は負けるつもりはない」
そう断言する。
「しかしそれは少し先の仕事だ。まずは駄菓子屋のお客引き、が迫っている。そちらは勝負するわけじゃないんだ。アイドル岸島狐子の初仕事として精いっぱいやるぞ」
そして高らかに。
いつものように独断的に。
俺は岸島に笑いかけたのだった。
○
というのが回想。
学校を終え、岸島と2人で外を歩いていた。もちろん理由は駄菓子屋に行くためである。学校から何か乗り物を乗るほど離れてはいないが、歩きだと少しだけ時間がかかるという中途半端な距離になるため、仕事の内容を話しながらというものだった。
「仕事内容は客引きだな。駄菓子屋の前に立ってやるやつだな」
嬉しい事に快晴だ。気温もちょうどいい。
別に寒かろうが仕事をこなすしかないのだが。この季節まだ少し肌寒いところもいくらかあるがこの様子なら今日1日晴れ続けてくれるだろう。
「そ、それって私しゃべらないとだめ・・・?」
「話さないで客引きとはすごい特技だな」
逆に見てみたくなる。
とはいえそれと比べたらまだ話して客引きしたほうがマシというものだろう。狐子も一応覚悟を決めたのか先ほどからずっと深呼吸している。
どれぐらい話していただろうか。果月としては狐子の緊張をほぐす目的もあったのだが、適当に話している間に依頼先である駄菓子屋へとついたみたいだった。
『いわとの扉』という駄菓子屋とは思えない名前ではあるが、雰囲気は本当に昔からある駄菓子屋といった感じだった。この中でおじいさんおばあさんが駄菓子屋を経営していればまさに完璧。俺は小学生のころ行ったことのある駄菓子屋を思い出し、うんうん頷いた。
仕事とは関係なくどこかわくわくしてしまう。俺はスライド式であるドアをひこうとした瞬間、ドア自身が勝手に開く。中から出て来たのは活発そうな少年、俺と同い年ぐらいの男子だ。
「よう!五百蔵!それに岸島もらっしゃい!」
「台無しだ」
思い出をぶち壊されたかのような光景。
ここは魚屋が何かか?と勘違いしそうなほど大きな声で依頼者である岩戸が叫んだ。初めて聞いたときも驚いたものだったが・・・。
「相変わらず駄菓子屋に似合わない男だ」
そう思う。
部活も野球部で活発。アイドルとかには興味がなく、ひたすらに駄菓子屋と野球を頑張っているそうだ。クラスというか学校自体から浮いている俺に対しても他の人と変わらず接してくれるような人間である。百が失礼にもよく俺と接してくれるものだと感心していたことを思い出し、少しだけいらっとした。
「はっはっはっ!よく言われるよ、近所の人達とかにもやかましいってな!」
だーはっはっは!とまたしても高らかに笑う。
迷いとか悩みなんてないんだろうな、と思わせるほど快活な笑み。しかしそんな岩戸に1つの悩みを作ったのが今回の一件である。
「立ち話もなんだしな、さあ入ってくれ!」
岸島と俺はお言葉に甘えて駄菓子屋の中に。あちらこちらにお菓子がおいてあり、値段ももちろん安い。見慣れた懐かしいお菓子たちがあり、俺や岸島も思わず笑顔になる。
小学生のときの遠足でも思い出しているのだろう。
その光景を見て岩戸が、
「いやあ、岸島が懐かしむのは分かるんだが、五百蔵は駄菓子とか見た事すらない人間かと思ってたぞ。ほら、なんか俺の口に合うものはこんな安っぽいものではない!とか言いそうだし」
「変な勘違いがあるようだが、うちは別に金持ちでもなければ特別でもない。俺がまわりが見えなくなるときは俺自身の仕事のときだけだ」
そう言いつつ、奥の間へ。
まだお客さんは来ていないみたいだが、そのお店の中が全て見わたせる場所。そこに畳とちゃぶ台、テレビがあった。一昔前の居間みたいだが、地デジによる影響かテレビだけは立派に近代的だった。
ちゃぶ台のまわりには3枚の座布団があり、事前に用意されていたお茶もある。あたたかい。とても落ち着く光景であった。
3人はそのまま座布団の上に正座をして話し始める。
「で、今回頼みたいことは他でもない!うちのお客さんたちが全部最近できたお菓子屋にとられちまってさー、ほんと深刻な客不足なんだわ!」
「だったらもう少し深刻そうにしろ」
どうやらこのいわとの扉の近くに新しいお菓子屋さんが出来たのだそうだ。
同じ駄菓子というわけではない、むこうは西洋のお菓子が多く、ケーキやペロペロキャンディ、チョコレートなどといったものを格安で提供しているのだとか。
お菓子屋だけであるのにお店の広さはとてつもない。それこそスーパーか何かデパートか何かと勘違いしそうなぐらいらしい。
「なんだそれは」
あまりにも規格外すぎる。
俺は岸島の方を見るとなんと意外にも話を真剣にきいていた。いや、元々狐子は真面目な性格で困っている人を放っておけないとは考える人間ではあるのだが、それにしても真剣だった。
そうか、と俺は思う。
なんだかどこかで聞いた話だとは思ったのだが、岸島の自転車屋が困っている状況ととても似ているのだ。他人事のような気がしないのだろう。先ほどからうんうん頷いている。
「俺はアイドルなんて柄じゃないし、家の手伝いがある。だから宣伝も大きくはできなくてな!そこでお前たちに頼んだという事なんだよ!」
「それにしては元気だが・・・まあ、いい。俺たちに頼ったのは正解だったな、今まさに俺たちはアイドルの頂点を目指そうとしている!その第一歩がこの仕事だ」
「相変わらずの自信家だよなあ、お前」
「そ、それに私別に頂点とかは・・・」
なんだかどうにも噛み合っていないがそれでも岸島もやる気らしい。身近なところから攻めたのは正解だったか、と俺は思う。見ず知らずの他人の依頼よりも感情移入ができるだろうとの判断。それはどうやら正解だったらしい。
「まあ、あとで他のアイドルも来るが仲良くやってくれよな!」
「はあ!?」
その言葉はさすがに聞き逃さなかった。
というか会話の流れにさらっと混ぜるあたり岩戸もただものではないな、と思う。下手をすれば聞き逃すところであった。
他のアイドル?今回の依頼は俺たちだけにしたものではなかったのか。
「なぜだ!」
「い、いや多い方がいいかなと思って」
岩戸は明らかに動揺している。
これを言えば俺がつっかかってくることが分かっていたのだろう。そしてなぜ他のアイドルを呼んだかなんて俺にもとっくに理由は分かる。要するに俺たちだけでは不安だったのだ。俺自身は有名とはいえ、今は裏方に徹しているし、岸島もこれが初仕事。雇う側が不安に思ってもしょうがないだろう。
しかし岸島は私だけじゃないんだ・・・と少し安心していた。
「岸島の安堵の理由は後で問い詰めるとして、まあ道理だな。俺たちだけでは不安ということもなんとなく分かる」
これは遊びじゃない。
俺はそう言い聞かせる。そうじゃないとプライドの高い俺は今にも暴れだしそうだった。
「ま、まあ頼りにしてるのは後から来る方じゃなくてどちらかといえばお前らの方だよ。有名だって言うから雇ったんだが、どうにも俺には合わない連中でな、こう・・・めんどくさいんだよ」
これは珍しい。
わけ隔てなく接する元気な岩戸が人を評価するときにめんどくさい、なんて言葉を使うのか、俺はそこに驚いていた。岸島も目を見開いて驚いている。
「力を貸してくれるわけだし、悪い奴でもなさそうなんだがなー」
なんだかなあ、と微妙そうな表情をしている岩戸。
岩戸にそこまで言わせるとはどんなアイドルが来るのか。俺はすでに先ほどの怒りよりもそちらの方が気になっている。
ガラガラっという懐かしい音。どうやら駄菓子屋の引き戸を引く音らしい。最初はお客さんかと思ったものだったが、そのすぐ後に凛とした声で。
「失礼します」
という低い男の声が聞こえたのでその可能性はほとんど消していた。基本的に子供が多いお店だ。大人も来るには来るがどうにもそれにしたって様子がおかしい。そもそも失礼しますだなんて丁寧な対応をする大人がここに来たことはない。
岩戸はすぐに雇ったもう片方のアイドルだと判断した。
俺と岸島に来たようだぜ・・・と目配せする。俺も、今まで味方が増えて安心していた岸島も緊張した面持ちだ。今の声だと・・・男のアイドルか?岸島と対照的なやつを選んで人目を引く作戦・・・そこまで考えるわけはないかあの岩戸が。などと俺は失礼なことを考えている。
ドアの閉まる音がした。
俺と岸島は目線を上げ、玄関の方を見ると、そこには1人の燕尾服を来た男性とそして・・・。
「ふふふ・・・わたくしが来たからにはもう安心ですわ!この寂れたお店も一気に上流階級が嗜む高級お菓子屋に早変わり!わたくしのことを崇め奉ることになりますわよ!」
真っ赤なドレスに真っ赤な花のついたカチューシャのような冠、そして綺麗な金髪に服と同じ真っ赤な目。全てにおいてこの空間に異質な人間。それがそこにいた。
「さすがでございます、お嬢様。このお店はもう助かったも同然。すでに我々の勝利が決まったようなものですね」
「ふふふ、当たり前のことですわ」
そう言って真っ赤なアイドルは俺たちの方を見た。
そして真紅の瞳を、真っ赤な目を細める。
「なるほど・・・あれがわたくしの勝負相手、ということですわね」
「え、えぇ・・・」
味方が敵変わった瞬間。
岸島は完全に仲間になってくれるものだと思っていたのでそこでショックを受ける。
しかし今のセリフは俺も聞き逃せない。
「岩戸、今のセリフはどういうことだ」
「どういう事も何も知らないよ、この話をしたときにもう1チームいるよってことを伝えたら勝手に向こうが勝負だと勘違いしたみたいなんだ」
どうやらとても好戦的なやつらしい。
岸島は驚いているが、俺はとても納得していた。なぜならあの赤い方を果月は見た事があるのだ。
「神崎・S・リディル。スカーレット会社社長の娘。とんでもない金持ちで、スカーレット会社はどんな商売にも手を出し、どこの商売でも頂点をとる、と言われている・・・か」
その呟いた言葉が岸島にも届いたのか、普段落ち着いた岸島もなぜかここで動揺しながら・・・
「す、スカーレット会社って・・・私の自転車屋の近くに建った新しい自転車屋の名前、スカーレット・サイクリングって名前だったよ・・・」
「なんだその名前はダサい」
なるほど。
それならば納得できるというものだろう。今一番期待を集めているところだ。自転車屋に手を出していても当然である。うんうん頷いていると、はっと何かに気付いた様子の岩戸が俺の肩に手を置く。
「そういえば、俺の家の近くに出来たお菓子屋、我が店のライバルもスカーレット・ファンタジーだかって店名だったぞ・・・!」
「ダサい」
とてつもなくダサい。それが俺の抱いた第一印象。ここまで似たような名前を付けるということは恐らくどちらもスカーレット会社のものなのだろう。別にそれに対して驚きはない。
問題はそんな会社の社長の娘がなぜここにいるのか、だ。
「先ほどから聞いていればわたくしのお父様のお店の名前をダサいなどと・・・所詮庶民には崇高な上流階級のセンスについていけないってことですのね」
「その通りです。お嬢様のお父様のネーミングセンスは天下一品です」
神埼・S・リディルは恐らく執事であろう男から赤い派手な扇子を受け取りそれで扇いでいる。
執事の言葉に満足したのかそれ以上何もいわなかったが、生憎俺たちのほうには聞きたいことが山ほどある。その1つが。
「神埼・S・リディル」
「スカーレットでいいですわ。五百蔵果月さん」
スカーレットと俺がにらみ合う。
お互い初対面だ。だが、2人はアイドル。噂ぐらいはお互いに聞いた事があったのだろう。するりと名前が出てくる。そんな些細なことに狐子は2人は本当にアイドルなんだな、なんて思ってしまった。
「お前、なんの真似だ」
「なんの真似・・・とは一体どのことでしょうか」
「なぜ、お前がここにいるのか、ということだ」
「・・・・・わたくしがここにいてはいけなくて?」
「そうじゃない。スカーレット会社はお前の父親の会社だろう。なのにその商売敵であるこの店の客引きをするとはどういう了見だ、と聞いているのだ。妨害か?いや、それとも嘲笑いに来たのか?」
ここは駄菓子屋。
この駄菓子屋がなぜ経営ピンチ状態になっているのかというとそれはスカーレット会社が経営するスカーレット・ファンタジーというお菓子屋が近くに出来たせいだった。
もちろんそれを責めるつもりはない。立地的にもここは人が多く、わざわざ駄菓子屋を潰すために建てたのではないことぐらい理解できるからだ。
ただ、その相手の娘がなぜか今にも危ない駄菓子屋の客引きをするとはどういうことなのか。それが俺の知りたいところだった。
「考えが浅はかですわね」
しかしスカーレットはそう一言で粉砕した。
再び赤い目、紅の瞳を細める。
「お店のことは全てお父様に任せていますわ。わたくしが関わることではありませんの。わたくしは『スカーレット会社』のアイドルなのですから」
そう、断言した。
蝶野紡とは真逆の情熱。熱さを感じさせるアイドル。それが岸島の抱いた印象だった。まるでまわりが燃えているみたいだ、と。
「お父様がやっていることと、わたくしがやっていることは関係ない。アイドルとしてのわたくしの元に仕事が来たのなら例え商売相手だろうが全力を尽くす、当たり前のことじゃありませんの」
そう力強く断言した。
俺はなるほど、と思うと同時にアイドル雑誌に書いてあることを思い出す。情熱の真紅。赤い色のアイドルの性格を。まっすぐで熱い、そんなアイドルだということを。
「それに、なんでお前がここにいるんだ、というセリフ。そのままそっくりあなたにお返ししますわ。てっきりアイドルの活動をやめたものだと思ってましたが・・・なぜここの客引きを?」
「いや、今日はだな・・・」
スカーレットは勘違いしている。
ここの客引きをやるのは俺ではない。その隣で申し訳なさそうにしている岸島なのだ。
「それに・・・恐らくあなたでもわたくしには勝てないでしょう。あなたのアイドル力は1万5300・・・前よりも384下がってますわ。アイドルとして怠りすぎです」
「ど、どうして五百蔵くんのアイドル力を・・・?だ、だってドル・ガンもないし・・・」
アイドル力とはドル・ガンでしか計測できない。俺はアイドルであり、一時期アイドル力を公表していたこともあった。だが、あまりにも正確すぎる。それに前より下がっている、ということは今のアイドル力をどうやって計測したのか。
「『真紅の瞳』・・・それがあいつについた名前だった。理由は単純、あの赤い瞳は人のアイドル力を計測できるんだ」
ただただ、それだけ。
機械化されたわけでもない、生まれ持って得た力。
「そ、そんな・・・だって勝手にアイドル力を計測する事は犯罪じゃ・・・」
「わたくしはあくまで勘ですから。あなたたちのご学友たちもあの人は大体アイドル力~くらいだよなあ、とかそんな下世話な話題をしていたのではなくて?わたくしのはそれが当たる、それだけですわ」
確かにこのご時世、アイドル力を勝手に想像することは確実にある。
好きなグラビアアイドルをきくように、お前の好きな子大体アイドル力4000ぐらいだよな、とか。あの人可愛い、大体8000はありそう、とか。そんな話題はどこにでもある。
それの強化版、それがスカーレットの目だった。
昔からあるあいつ頭いいからあのテストの点数もかなりよかったんだろうなあ、とかそういうものの強化版。
「勘だからな、文句は言えんさ。それよりも・・・」
厄介なのは自分のアイドル力が見えること、だ。
アイドル力はアイドラーというアプリによって左右されるため、その時その時の流行のようなものがある。その流行にのったアイドルがその時期、アイドル力を上昇させることだってある。それをこのスカーレットは自分で出来るのだ。
今、少し下がった、この行動は望まれていない。今少し上がったこのパフォーマンスを今はおしていこう。そうやって誰よりもはやく流行にのれる。それが厄介なのだ。
「それでは自分が無い、なんて批判される方もいらっしゃいますが・・・わたくしの姿のどこを見て自分が無い、と判断されたのか非常に気になりますわ」
赤いドレスに赤いカチューシャ。そして赤い瞳。まさにこれが自分と言わんばかりの主張である。スカーレットは流行にのっても自分を見失わない。そんな自我の強さがあるのだ。
俺はそんな話をしている場合ではないと思いなおす。ここは仕事場なのであった。
「盛りあがっているところすまんが、今回は俺が客引きするんじゃない。俺はメイクをしに来たんだ」
「あら?それではそこの岩戸さんが?」
「勘弁してくれ。俺はそんな柄じゃない」
「では・・・」
と消去法で残る1人。
岸島狐子を見るスカーレット。
「あ、あの・・・岸島狐子です・・・。よ、よろしくお願いします」
スカーレットと共に並び、仕事をするのはこのアイドル力1000の少女であった。
なんというかとても書きやすいキャラクターでした、赤い人。めんどくさそうなキャラの方が動かしやすい気がしますね。
少し遅れてしまいましたが、読んでいただければ嬉しいです。
ではまた次回。




