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君が好きだった日

作者: 黒石 礫

 昼に見たはずの清々しい空は、もうありませんでした。


 正午にふと表に出て見上げた空。それは視界の端から端まで、見えるところを全て見渡しても、雲一つ無い見事な青空でした。


 僅か三時間もたたないうちに、空模様は大きく変わったようです。

 青かった部分を埋めるように、様々な形の雲が空一面に敷かれ、雲の形を縁取るように照らす夕日が、曇り空を彩ります。

 橙から紫、灰色がかかった青に、所々の黒。雨の気配を匂わせながら、空はゆっくりと今日の終わりの色に染まっていきます。


 一日の終わりを告げる色は、敷かれた雲たちが彩っています。

 夕日の最後の輝きを十分にうけて、橙を掠め紫を作り、濃淡を表しながら次の雲へ伝えていきます。

 空に広がった終わりの色は果てまで続いていきます。

 それはまるで、一日の終わりではなく、この世界のお終いを告げているようにも思えました。


 ひゅうと風が吹きました。

 低く唸り、頬を撫でたと思えば、叩きつけるように激しく吹き付けてきます。

 空の雲を運んだ風でしょうか。建物の隙間をぬうように通り抜けて、僕をどこかに飛ばそうと吹き付けてきます。


 雲が揺れて、空の色が霞みます。

 夕の光が次第に薄れ、紫がかった空に、夕日とは違う光が輝き始めました。


 今日が終わりました。

 夕日が沈みはじめ、風が雲を運び、雲が空を彩って、夜を運んできたのです。


 一日が終わりました。

 やがて月が欠けて、雲が退き、風は止んで、日が上ります。


 新しい一日が始まります。

 同じように太陽が上り、そして月が上ります。


 新しい一日が始まります。




 けれど僕の好きだった空と昨日は、もうやってこないのです。

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