何?素直じゃないとダメなの?
素直な女の子って羨ましいと思う。
羨ましいって思うくらいだからあたしはそれには当てはまらない。
むしろ逆、真逆。
どうすればいいのかさえわからないでいる。
何故こんなにも悩んでいるのか。
元彼に
「お前ってさ、本当に可愛くないよな。素直じゃねーし。」
って言われてふられたばかりだから。
お前馬鹿か?
って言いたくなるよね。
ふられたくらいで。
って思っているんでしょう?
でもさ、これが何回も続いたらどう思う?
さすがに悩むでしょ。
「・・・ぃ。」
もぅだめだ。
あたしには無理だわ。
「おいっ。聞いてんのか?」
ったく。
誰だよ。
人の部屋に・・・?
は?
「無視すんなや。」
突然の出来事に驚いたあたしはベッドから飛び起きる。
「なんで?なんであんたがあたしの部屋にいるんだよ!不法侵入か。」
「可愛くねぇ。もっと可愛く言えねぇのかよ。どうしたの?とか。」
不法侵入者は真顔であたしの傷つくことを言う。
ムカつくから笑ってやった。
「何笑ってんだよ。」
「いや・・・。面白いなぁって・・・。」
「何が面白いんだよ。」
いや、だってさ。
真顔でそんなこと言われたら笑うわ。
そんなこと言えないし言わないけど。
「で?なにしにきたの?不法侵入者さん。」
今あたしの目の前にいる男。
金村龍斗はあたしの友達。
親同士が仲がよくて気づいたら一緒にいて、何時の間にか高校生になってた。
「今日はなにしにきたの?」
龍斗が家に来るのは珍しいことではない。
むしろ普通かもしれない。
毎日来るし。
「んー・・・。あいつに聞いたから?」
あいつ?
あぁ、元彼ね。
龍斗の友達だっけか?
「で?馬鹿にしにきたわけ?」
「うん。」
うん。
じゃねぇよ・・・。
「嘘。美樹が落ち込んでるの見にきた。」
大した変わらないだろ。
「どーせ、素直になりたいなぁー。とか思ってたんだろ?」
「う・・・。」
「バレバレ。」
さすが龍斗だな。
「いいじゃん。思うだけならさ・・・。」
「ん。だな。」
龍斗はあたしの隣に座る。
少しだけベッドが沈む微かな音にドキドキするあたしってなんなんだろう。
「ま、あんまり考えすぎんな。それを言いにきた。」
「ん。ありがと。」
龍斗の大きな手があたしの頬に触れる。
「な・・・なに?」
「別に。特に意味はないけど、触りたかったから・・・。」
龍斗・・・。
「お前・・・。太った?」
さっきまで真剣な顔してたくせに。
急にいつものに戻った。
「うるさいっ。ストレスだ。」
「なんでもストレスのせいにするなよな。ストレスも可哀想だろ?」
龍斗はあたしの頬を軽く叩き立ち上がった。
「んじゃ。美樹の無事も確認できたし。由香里のとこ行って来るわ。最近うるせぇんだよ。毎日会わないと気が済まないんだってよ。」
相当面倒臭いって声で言ってるくせに。
絶対行くよね。
もう、3年も付き合ってるし。
「早く行ってあげな。大事なんでしょ?」
「だるい。けど行ってくるわ。美樹なんか予定あんの?」
立ち上がった龍斗に見下ろされてなんか悔しくなった。
あたしは何時も龍斗に勝てないなって思う。
「今日?無いけど?文句ありますかぁ?」
「本当に可愛くねぇ・・・。」
「悪かったね。由香里ちゃんみたく可愛くなくて。」
自分で言ってて嫌になるわ。
「お前は由香里じゃないだろ。てか、美樹が素直だったらなんか・・・。」
「なによ。」
嫌な予感しかしない。
「気持ち悪ぃ。」
だろーな。
「美樹はそのままでいいんだよ。」
あたしの頭を撫でて部屋を出て行く龍斗に少しだけ感謝する。
心配してくれたみたいだし。
本人には絶対言わないけど。
言ったら負け。
だから、あたしって素直じゃないんだよなぁ。