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神様の椅子  作者: *amin*
一章
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6 平和条約終結

「国王は本当にあの国と友好関係を作るつもりかい?」

「不安じゃ。元から小競り合いがあったが、あの使者を処刑したお陰でバルディナとの仲は冷え切っちょるけんのぉ」


昼飯を食堂でセラと食っていた所にトレーに飯を乗せたジェイクリーナスとヤコブリーナスが話しかけてきた。

2人は俺達の座っている席の隣に腰かけ、それぞれが心配そうな顔をしていた。



6 平和条約終結



「さぁな。でも流石に今回は話し合いなだけだろ」

「だといいですけど……」


セラがパンを食べるのを止めた横で、ジェイクリーナスが肉にフォークを突き刺してほうばるのを見ながら、俺もサラダに手をつけた。

ヤコブリーナスも心配そうな顔をしている辺り、どうやらかなり話題になってるようだ。

でも俺も正直詳しい事は知らない。

知りたがりのクラウシェルが色々自分で調べて、それを俺に相談してくるだけで、それ以外の情報なんて知らないからなぁ。


「でもまぁこの国、他の4つの国と違って軍事力も小さいしね」

「貿易と農業で大きくなった国だものね」

「マリア、ミリア」


同じく昼飯の時間なのだろう、マリアとミリアも俺が座っている席に相席してくる。

流石に今の状況にマリアとミリアも複雑そうだ。


「軍事でバルディナに頼り切りって少し痛いわよねぇ」

「今回新しい条約を持ちかけても不平等な物だったらどうしよう」

「やぁだ~」


確かにそれはあり得そうだ。バルディナにとっては別に友好条約は結んでも結ばなくても大したメリットは無い。

軍事で守ってやるんだから見返りを寄こせ。は当り前の言い分だ。

その見返りがどんなものかは分からないけど。


「見返りに国宝石よこせって言われたら流石に国王も反対するよなぁ」

「そりゃそうでしょ。国宝石は5つの国が分けあってる物よ。他国に渡したら、それこそファライアンにパルチナ、東天から批判されて四面楚歌よ」


やっぱり国宝石はそんなに大事な物なんだ。


「ならば戦争になるかもしれないと言う事かい?」

「うお!ミカエリスにイワコフ……いつの間に」


いつの間にか相席をして飯を食っていたミカエリスとイワコフに俺だけじゃない、他の奴らも驚いた。

ミカエリスは珍しく真面目な顔をして優雅にパスタを口に運んでいる。

口の端にトマトソースついてるけどな。


「戦争、ねぇ……あり得ない話じゃないかもな」

「嫌な事を言うねジェイクリーナス君」

「だってさぁ、あいつらは国宝石狙って侵入した国だぜ。見返りに国宝石って絶対言ってきそうじゃねぇか」

「仮に言ってきたとしても、その様な事を言ったと世界が知ったらそれこそ他国から袋叩きだよ」

「余所の国が動いてくれんのかねぇ」


確かにミカエリスとジェイクリーナスの言う通りかもしれない。

戦争も1つの手だ。そして国宝石を見返りに要求したら他の国からの非難は必至だけど、兵を送ってバルディナを止めてくれる国があるかと聞かれたら謎だ。


「バルディナにはザイナスもあるからのぉ……銃の製造法はまだ広く知れ渡っちょらん。あの鉛玉は脅威じゃよ」

「……恐ろしい、な」


全く喋らないイワコフまでも言葉に出すほどだ。今城の中の緊張感は半端じゃないはずだ。

国宝石を狙って使者が来たことは国民は知らない。俺だって知らなかったんだから。

国民達は新たに条約を継続させるんだと思ってるみたいけど、城の中の意見は様々だ。


「なぁ国宝石ってさ、聞いた話だけどゲーティアの隠し場所を指してるんだよな」

「何だね君、今頃知ったのかい」

「まだ城に勤め出して1カ月だ。しょうがねぇだろ。簡単には読めないって話だけど、手に入れた所で解読できないんじゃないか?」

「今の所はそうだろうが、バルディナは研究家を集めていると言う話だ。少しは解読できるのかもしれん。だが実際の所、私達も国宝石を見た事がないのだよ。だから君の言う通り、読めないと言う話だが、それが本当かも確認できない。だがこの城のどこかにある。それは確かだ」


やっぱり噂だけが先行してしまってる部分はあるんだな。

もしかしたらゲーティア自体存在しないかもしれないのにな。そう考えたら、そんな物の為にバルディナは使者を派遣させたとか馬鹿じゃないんだろうか。


「でも……クラウシェル様は酷く慌ててましたね。バルディナと条約なんて有り得ないと」

「そうなのセラちゃん、クラウシェル王子頭いいもんねぇマリア」

「でも議会が決定したんだから意味ないけどねぇミリア」


そうだ、議会が決定したんだ。クラウシェルが何を言っても無駄だろう。


「バルディナは軍事国家だからなぁ……確かにバルディナが守ってくれるとしたら心強いけど、まず第1にアルトラントが侵略されんのかな?」

「ジェイクリーナス?」

「だってさぁファライアンはビアナの商人に聞く限り、戦争より国民の生活の質の向上に力入れてるみたいだし、東天は鎖国中だから貿易船以外の船は通さないって話だし、他国に侵略はしねぇだろ。同じ軍事国家のパルチナはアルトラントっつーよりはバルディナに近いから、戦争っつったらバルディナとパルチナじゃん。俺ら関係なくね?」

「ジェイクリーナスは単純ねぇ。パルチナだって本気で戦争する時はまず食料を備蓄させて長期戦に持ち込む為にアルトラント狙ってくるわよ。バルディナが背後にいるから牽制になってるの。だから軍事を他国に頼りきりって怖いのよ」


マリアも少し苛立ってるようだ。最近確かに皆が慌ただしくなっている。

時計の針が12時57分を指そうとしてる。


「もうすぐだな。友好条約が切れるの」

「はい、100年前の12時58分に友好条約を締結し、100年後の12時58分に友好条約は終結する」


いつの間にか、食堂にいる奴ら皆が時計を眺めていた。

それはコラッドやサヤカ達、料理人も同じだ。

針は1秒1秒進み、そして12時58分の場所に針が動いた。


「終わった……バルディナとの友好条約が」


何ともあっけない終わりだが、でも間違いなく友好条約は終結した。

来週、バルディナが何を引っ提げて来るか分からないまま、俺達は皆複雑な心境を抱えなければならなかった。



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