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神様の椅子  作者: *amin*
五章
53/64

53 明かされていく情報

ビアナはやっぱり凄く活気がある。お店が一杯あって人がいっぱいいて、皆がとても幸せそう。1年前までアルトラントもそうだったのに……

そしてレオンが1つのお店に入って何かを言えば、お店の人が奥に案内してくれた。ライナお姉ちゃんが前連れて行ってくれたのと似た感じだ。裏通りに行くんだ。

裏通りも人が多い。この人達が皆トレジャーハンターなのかなぁ?皆がレオンと俺をマジマジと見ている。やっぱり俺がいるから浮いてるんだろうか。



53 明かされていく情報



「よぉレオン、今日はチビを連れてんな!新たなハンター希望者か?」

「そんな所だ」

「それよかお前話聞いたか?倉庫の奴、アルトラントの王子がビアナに連れて来られてるって話だ。どうなんだろうな」

「さあな」


それって俺の事だよね!?なんだかすっごく噂になってたみたい。

レオンの言った通りだ、ここは色んな噂がすぐに飛び交う。でも俺の顔までは皆知らないみたいだからまだ安心なのかな?パパとママのお仕事について行かなかったからだね。

裏通りは色んな話が飛び交っていた。戦争の話や、隠されたお宝の話し、そして国宝石とゲーティアの話し……どうやったらこんなに噂を集められるんだろう。

レオンが向かった先は情報屋、ライナお姉ちゃんと行った場所と同じ。ここは結構有名な情報屋なんだなぁ。

部屋に入ると、俺達より先に誰かがいた。今回はお爺さんとフレンとフランさん、2人のお父さんもいる。お爺さん達は俺を見て一瞬目を丸くしたけど、俺の事を言う事は無かった。


「先客がいるの、20分くらい待ってくれないかしら。ここでは地位は関係ないわ」

「分かった、20分後に来よう」


レオンが頭を下げて一度外に出る。とにかく20分は時間を潰さなきゃね。

レオンが行きたい所があるって言ったから、言われるがままに付いて行ったら、そこには懐かしい物が置かれていた。

露店で売られていたのはアルトラントのお菓子や名物品だった。もうずっと食べてないな、アルトラントの食べ物……レオンを見てお店の人が声をかけた。


「おーレオン様!買ってくかい?アルトラントからの物資が減ってる今じゃ貴重だよ。物価も上がってるが、俺は前と同じ値段で売るぜ!」

「どうやってこれだけ取り揃えた」

「簡単だ。シースクエアからの亡命を俺の家で受け入れたんだよ。まぁそいつとは友人だ。助けてやりたくてよぉ……んで亡命する際、物資を大量に持って来てもらったんだ」


何だか難しい事を話してる。亡命って何だろう?

レオンが一瞬渋い顔をしたけど、すぐに何事も無かったかのように表情を切り替えた。


「余り派手な事はやるなよ。ビアナは個人単位を救う法がない。お前が摘発されたらビアナは国民でも助けない」

「そうだな、ビアナの法規制の緩さは助かるが、全て自己責任の世界だからな。俺も慎重にやるわ」


レオンはそれだけを告げて俺に何が欲しいかを聞いてきた。買ってくれるのかな……ジッと見つめれば、好きなのを1つ買ってくれるんだって。

その言葉が嬉しくて、大好きだったアルトラントの焼き菓子をねだった。レオンはそれを3箱も買ってくれて全て俺にくれた。


「ありがとう」

「センスいいな、俺もそれ好きだ」

「今日帰ったらみんなで食べようね。イヴさんが淹れるお茶はすごく美味しいんだよ」

「あの人にお茶を淹れさせるのか?」

「イヴさん練習したいからっていつも自分から淹れてくれたの。今日はお菓子もあるし、楽しみだな」

「そっか」


簡単な会話をしながらお店を回る。一杯お店があって珍しい物を一杯売ってるから20分なんてすぐに経っちゃうな。ここはすごく楽しい。

ここは密輸?なんかビアナに黙って個人で勝手に外国から貰ってるのを並べてるんだって。だから国に税金を払ってない状態でお店に並べるから安いんだって。でもそれは法律違反だから、やっちゃいけないんだけど、法律違反だけど取り締まる法律がないから、結局こういうお店が減る事は無いらしい。

じゃあ俺が買ってもらったのって悪い事なのかな?不安そうに聞けば、ビアナはそれが許される。とだけ返って来た。ビアナは変な国だ。

情報屋に戻ればお客さんはいなくなっていた。フランさんに案内されて椅子に腰かけたのを確認してフレンさんが扉を閉めて鍵をかける。


「王子様だよな。あの噂本当だったのか?それにしてもその怪我……大丈夫か?」

「フレン、知ってるのか?」

「あぁ、この御方1回うちに来た事がある。安心していいよ。王子様の情報は言わないって過去に取引してっから」


フレンさんは俺の事をやっぱり覚えてたみたい。怪我をしてる俺を心配してくれた。

斬られた訳じゃない。殴られただけだからお風呂でしみる事もあんまりないし、擦り傷とかは多くないから大丈夫。

頷けば安心した。いつの間にかフレンさんとフランさんのお父さんがいなくなってる。お爺ちゃんしかいない。どこかに行ったのかな?


「で、レオン様どうすんの?バルディナがこれを知ったらビアナに調査を依頼すると思うけど」

「分かってる。王子達はすぐにファライアンに戻すつもりだ。そこで今のファライアンの状況を知りたい」

「……今はファライアンには向かえないわ。昨日からファライアンは鎖国した。クーデターが落ち着くまで数カ月は貿易船も多分取り入れないわ。備蓄した食料が底をつくまでは船を入れないはず」

「マジかよ」

「私達の情報では第1騎士団団長のジェレミーが牢に入れられたって聞いた。今は議員のデューク議員が代表をしてる。良く分からないわ、騎士団が城を制圧したのになぜジェレミーが牢に入れられたのか」

「ジェレミーが……」


ジェレミーさんが牢に入れられた!?イヴさんの事があったから無茶しちゃったのかな?助けなきゃ……ジェレミーさんは悪い人じゃない。

それに鎖国って事は俺、ダフネの所に帰れないよ!どうしよう……でもバルディナが俺達が逃げたって知ったら絶対にビアナを巻き込む。俺達のせいでビアナを巻き込む訳にもいかない。

レオンが考え込んでいる中、お爺ちゃんがレオンを見つめて声を出した。


「レオン様、こう言うのは言い方が悪いが、ビアナは戦に参加せんのか?」

「何を言っている」

「ビアナは戦に無関係。いつの間にかそんなデタラメを皆が信じている。じゃが考えてみぃ、ファライアンを潰したバルディナがビアナだけを見逃すと思うか?今はまだ5大国家の内4つがあるからいいが、全てバルディナが潰した際、ビアナへの侵攻を止めてくれる国は無い」


何だか難しくてよく分からないから黙っとこう。でも今の状況は確実に良くないって事だけは分かった。

フランさんとフレンさんも苦い表情をしてる。ビアナが侵略される……でも信じがたい話だけどな……


「確かに今まで600年、ビアナが戦に巻き込まれた事は無い。じゃがその常識も今回で崩れ去るじゃろう。600年前同様、いや過去最悪の世界大戦が今から始まる。ビアナは無関係を今回ばかりは貫けん」

「だが俺個人の意見では無理だ。戦に関しての権限はイグレシアと軍団長のモルガンだ」

「そうか……じゃがビアナは選択を迫られる。バルディナに服従するか、抵抗するか」

「世界大戦ね……あながち間違ってないだろうな。バルディナ、ザイナス、パルチナに対抗してファライアン、エデン、ヴァシュタン、オーシャンが組んでんだ。既に世界大戦みてぇなもんだ。東天、マクラウド、忍びの集落も最終的には判断を迫られる。俺達ビアナも例外じゃない」


フレンさんの言葉に世界大戦が現実味を増したように感じた。そうか、何も考えてなかったけど今の4つの国以外は全て戦争に参加してるって事になるんだ。

どっちかが動けば、片方が黙ってない。本当に世界中の場所で今から戦争が起こるんだ。それを考えたら怖くて動けなくなった。でもフレンさん達からの情報はそれだけじゃなかった。


「バルディナは女王と王子を渡したら、ある程度の譲歩を認めてファライアンとは条約を結ぶだろうな。だがそれも今のうちだけだ、力を蓄えたらファライアンだって奴隷政策が待ってるだろうさ。イマニュエル・ネイサンの豹変ぶりはもう異常の域に達してる」

「名君じゃったが、一体何があったのか……パルチナとの南下戦争を皮切りに、あの御方は人が変わってしまった」

「それとレオン様、しばらく貴方は動きを控えた方がいいわ。イグレシア様は貴方に疑いを持っている」


フランさんはレオンに厳しい現実を突きつける。

レオンが疑われてる?だってレオンはイグレシアの右腕なんでしょう?どうしてレオンがイグレシアに……

レオンもフランさんの言葉を信じられないみたいだ。目を丸くしてる。

でも何か情報があって言うんだ。感でそんなこと言う訳がないから。一体どういう事なんだろう。


「イグレシア様は貴方がファライアンに内通してるって疑いを持ってるみたい。本当かは私達は知らないけど、少なくとも今はいい状況じゃないわ」

「それはっ……」

「レオン様、王子様にも悪いけど、王子様には関わらない方がいい。下手な疑いかけられたら処刑だぞ」


処刑!?俺達のせいでレオンが殺されちゃうの?パパとママみたいに……

震えだした俺を見て、フレンが慌てて口を手で覆った。でももう遅い、俺達のせいでレオンが殺される。そんなの駄目だよ。

他にもある程度の話を聞いて、俺達は情報屋を出た。レオンと手を繋いで裏通りの出口へと向かう。


「あの……俺、やっぱり今日出て行くよ。でもイヴさんは置いてあげて」

「出て行ってどこに行く気だ?」

「分からないけど、頑張ってダフネの所に帰れるようにするよ。レオンを巻き込む訳にはいかないよ」

「俺が望んだ事だ。貴方と女王は俺が守って見せる」

「レオン……」


これからダフネの所に帰れるまで、俺のビアナでの暮らしが始まる。でも自分でも何かしらの行動を起こさなきゃ、ただレオンに迷惑をかける訳にはいかない。

1週間後にはバルディナの船が到着するはずだ。そして倉庫にいない俺達をあいつらは絶対に探す。その時までに逃げ道を探さなきゃ……

国中を探されたら逃げ場がない。何とかしてファライアンへの逃げ道を探さなきゃいけない。


こんな所で捕まる訳にはいかない。



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