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神様の椅子  作者: *amin*
一章
5/64

5 ルーシェルと宝探し

「ダフネ、遊ぼう!」


今日もクラウシェルの勉強と稽古を手伝って、ミッシェルのお菓子を用意して一息ついた所に空気を読まず飛び込んでくる子供が1人。

この国の第2王子のルーシェルだ。



5 ルーシェルと宝探し



本当は少し休憩したいんだけど、ルーシェルは断ったらすぐに駄々をこねて泣き出すから、ある意味ミッシェルとクラウシェルよりも厄介だ。

特に国王は末っ子と言うこともあってルーシェルをドロッドロに甘やかすからなぁ。

仕方なくベッドから起き上がり、屈んでルーシェルと視線を合わせる。


「何して遊ぶんだ」

「んーとねー、かくれんぼ!」


ルーシェルは俺が初めて勤め出した時もなついてくれたし、困らせる事も多いけど末っ子特有の可愛らしさがあるから一番可愛く感じる。

泣きだしたら止まらないのがたまに傷だけど。


「かくれんぼ?この城内でか?」

「そうだよ!時間はー15分ね!15分で見つけてね!隠れる時間は10分だよー」


俺が鬼か。しかも俺に不利な条件すぎないか?

城とか滅茶苦茶広いのに1人で15分内で探し出せって言うのか。まぁ使用人とかに聞いて回るから15分内は無理かもだけど、ミッシェルみたいな事件にはならないはずだ。

ルーシェルが走り出したのを見て、10分間はお茶でも飲むかと俺は自室に戻った。


10分後、そろそろ探しに行かなければと思い、立ち上がって部屋を出る。

まずはミッシェルとクラウシェルのとこに行ってみるか。


「見てないぞ」

「見てないわ」


声をそろえて言われた。まぁ流石に3人が揃うこの部屋には来ないよな。

2人に嘘をついてる形跡もない。ルーシェルは一体どこに行ったんだ?


「あいつは行動範囲が狭いから食堂か、後は自室だな。たまに食糧庫や倉庫とかにも隠れてる」

「サンキュー」


クラウシェルに礼を言って、言われた通り食堂に向かう。

食堂は今の時間、人がいないせいか探しやすかったけど、ここにルーシェルはいなかった。


「あんたっていつも王子と姫を探してるね」


食堂を出る時にサヤカに言われた言葉にいい返しようがなく、俺は力なく笑っただけだった。

自室は俺が勝手に入るのは駄目だから自室の掃除を任されている使用人にルーシェルがいるかどうかを聞いたら、部屋には戻ってきてないと言った。

基本使用人は俺の味方だ。王子と姫の世話がどれだけ大変か分かってくれてるから。

ルーシェルを匿って嘘をつく事は無いだろう。

うーん……他にはクラウシェルは食糧庫や倉庫にも時々いるって言ってたな。もう15分になりかけてるからルーシェルも出て来る頃だろう。

とりあえず探す為に俺は食糧事倉庫に向かった。


「いないな」


荷物の後ろや小さなスペースもくまなく探したけど、ルーシェルは見つからなかった。

全くどこ行ったんだ。

時間はもう探しだしてから30分過ぎている。

1回ミッシェルとクラウシェルの所に戻るか。戻って来てるかもしれないしな。


―――――――――――――――――――――――――――――――――

「え、まだ戻ってきてないけど」

「はぁ!?」


クラウシェルの返答にでかい声が出た。ミッシェルが耳を塞いでうるさい!と怒ったけど、そんな事を聞いてる場合じゃない。

ミッシェルに続いてルーシェルまでも行方不明だ。全くどこに行ったって言うんだ!

少しイラつきながらも使用人達にルーシェルを聞いて回る。

すると1人の使用人が何かを思い出したようだ。


「あ、確かフレイ様と一緒にいたわよ」

「フレイ様と?」


フレイ様って最高評議委員だよな。そんな方と一緒にいたって言われても俺が会える訳じゃないし。

と思っていたらなんて運がいい。フレイ様がちょうど廊下を歩いていた。

手に書類を持ってるから仕事の途中なんだろうけど、俺は勇気を出して声をかける事にした。


「あのフレイ様……ルーシェル見ませんでしたか?」

「おや?私に聞くと言う事は誰かにルーシェル様と話している所を見られてたんだね」


人のいい穏やかな笑みを浮かべているフレイ様に愛想笑いを返したら、フレイ様は来た方向を指さした。


「ダフネ君に見つからない場所は無いかな?と言われたから北の塔付近の庭なら多分見つからないよって言ってたんだ。ルーシェル様はそれを聞いて走って行ったよ」

「ありがとうございます!」

「あ、待って。ルーシェル様は多分道を間違えてる。北の塔付近の庭はこの廊下を真っ直ぐ進んで突きあたりを右なんだけど、彼は通り過ぎていってしまった。伝えなければと思ったんだけど、急いでたからね。もしかしたらこの廊下を走って行き止まりの突き当たりを曲がったのかもしれないな」


フレイ様は本当に親切だ。

俺は頭を下げてルーシェルを探すべく、廊下を走りだした。


「やれやれ、本当に微笑ましいね」


―――――――――――――――――――――――――――――――――

「なんかここって俺が入っていいのか?」


廊下の突き当たりを曲がった先には物々しい扉があった。

確かにこの廊下を行き止まりまで歩いた事がなかったから知らなかったけど、フレイ様が言った通り、人は全く歩いてない。

これだったらルーシェルは隠れ家にするだろう。

扉のカギは開いており、俺は息を飲んだ。入っていいのかな?でもいるとしたらここだろうしなぁ……

思い切ってドアを開けた先には、物があまり置かれていない広い部屋だった。そしてその中央にルーシェルの姿があった。


「ルーシェル!」

「あ、ダフネ!」


振り返ったルーシェルは俺に飛びついて来た。

それを受け止めて戻ってこなかった事を少し説教した。


「駄目だろ、15分って言ったじゃん」

「ごめんね。でもこれを見つけて読んでたんだ。不思議な文字だよ」


ルーシェルが見せてきたのは緑色の宝石だった。宝石はかなり大きく、小さなルーシェルの手の平から少しはみ出ている。

何か分からなくて差し出してくるルーシェルから受け取り、宝石を眺めると、宝石の中に何かが彫られていた。

見た事の無い文字、なんだこれは。

ルーシェルはこれが読めるって言うのか?


「それね!ママが教えてくれた字に似てるんだ!」

「ママ?后か?」

「違うよ!俺達のママだよ!」


あぁそう言う事か。

国王の今の后は確か2番目の妃だ。1番目の妃は病気で死んでしまったと聞いた。

王子を産んで5年目の事だったらしい。

でもこんな見た事ない字を……

辺りを見渡した時、ルーシェルに隠れて見えなかったけど、ルーシェルの後ろ、部屋の後ろ中央には豪華な台座と宝箱が置かれていた。

良く見ると宝箱が開いてる。ルーシェルがこれを開けたんだ!


「ルーシェル、これ多分すっげぇ大事な物だぞ!早く返すぞ!」

「戻しちゃうの?」

「当り前だ!」


怒った俺にルーシェルが渋々宝石を宝箱に戻す。


「鍵はかかってなかったのか?」

「開いてたよ。扉の鍵も宝箱も」


こんだけ堅固な扉や宝箱にしても鍵がかかってなかったら意味無いのに、訳が分からない。

まぁいい、関わらない方がいいだろう。

俺はルーシェルを連れて部屋を出る事にした。

ルーシェルはもったいなさそうに宝石をチラチラ見てたけど頭を固定させてまっすぐ歩かせた。

そのままミッシェルとクラウシェルの所に戻ると、クラウシェルが妙に慌ててた。


「どうしたクラウシェル」

「ダフネ!大変だ、バルディナの使者が来週来るらしい。父様は条約を結ぶチャンスだと言ってるけど、正直僕は嫌な予感がするよ」

「考えすぎじゃないクラウシェル。もっとまともな事に頭使いなさいよ」


突っ込みを入れたミッシェルにクラウシェルは渋い顔をしている。


「今度は一体何を言ってくるのか……もしかして国宝石の使者について脅しをかけられるかもしれない」


国宝石……あぁこないだ言ってたやつね。あれ?ルーシェルがさっき持ってた宝石にもクラウシェルが言ってた読めない文字が書かれてたな。

でもルーシェルがそれを読めてたし、ルーシェルも母親から教わったって言ってたから、多分家族内で使う暗号かなんかだな。うん、そうだろ。

国宝石に鍵かけないとかマジあり得ないしな。

でもそうか、遂に来るのかバルディナも……


「そう言えば明後日の正午だよな、友好条約切れるの」

「それを見越して来るんだ。どうなるか怖いよ」

「そんな事よりケーキ持ってきなさいよダフネ」


こんな時までミッシェルの奴は……でも確かにそろそろお茶の時間だ。

俺はルーシェル達を椅子に座らせて、セラにお菓子を頼む為部屋の外に出た。


―――――――――――――――――――――――――――――――――

「国王、来週バルディナの国王自らがこちらに出向くと聞きましたが」

「奴らは今回で処刑した死者の謝罪と責任を要求してくるはず!追い返した方が策ですぞ国王!」

「落ちつけノーヴァ。実際フレイが行った会議では多数決で友好条約を継続させる話をする為にも、こちらに来てもらった方がいいと言う事になったのだ」

「そ、その様な……ダイナス様はどう思われるのです!?」

「私も賛成だ。軍事力でファライアンやパルチナ、東天の牽制になる為、バルディナとの条約は必須である」

「何と言う事だ……」

「案ずるな、何も起こりはせんよ。何も」



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