45 緑の継承
アルトラントへ向かう船の中は活気がない。それは自分も同じだった。
船で移動中の間は正直生きた心地がしなかった。何かをやっていなければ緊張でどうにかなってしまいそうだったから。
俺は、国王と后の処刑をこの目で見る事になるのかもしれない、
45 緑の継承
船での移動は1週間近くかかり、俺達がアルトラントのシースクエアに着いた先にはバルディナの騎士団が待機していた。アルトラントが陥落した際、ルーシェルとここから国外のオーシャンに逃亡した。その場所にこんな形で戻ってくるなんて……次に戻るときは国を開放するときだって誓ってたのに。
シースクエアは完全にバルディナ騎士団に下り、その騎士団達が俺達を御出迎えになったって言う訳だ。
その真ん中には剣を腰に携えた女性が立っている。この女を知ってる……バルディナ皇帝イマニュエル・ネイサンの第一皇女のマライア・ネイサンだ。
こんな大物がわざわざシースクエアまで直々にお出迎えってことは、バルディナの中でもファライアンは特別な相手ってことだろう。
それも仕方ない。今やバルディナ対ファライアンが600年前同様の世界大戦を起こすだろうっていう話を知らない人間は、この世界にはいないだろう。
甲板からこそっと見て、奥の部屋に引っ込む。このまま出て行けば俺とルーシェルは間違いなく捕まる。
「ダフネ、俺はここで降りる。処刑の日程は君に話した通り、今から1週間後だ。処刑から1週間後に船はファライアンに戻る。ここから先はクレアの転移魔法でシースクエアから脱出してくれ」
ジェレミーはそう告げて団服をきっちりと着こなし、剣を腰に携え、数人の護衛の騎士たちと共に船を下りて行った。
残された俺達はクレアの近くに向かい、転移魔法で送ってくれるのを待つ。
クレアは杖を持って、俺達に告げた。
「私の魔法は未熟ゆえ5名を超える人数を一度に遠くに送ることはできません。また連続使用もできません。その辺をご了承ください」
「どのくらいまで使える?」
「距離にもよりますが平均3回程度です。それ以上は数時間の回復が必要となります」
クレアはそう言って呪文を唱え出した。
ルーシェルが俺の手を握り、ライナも神妙そうな顔つきで事態を静観している。周りが光に包まれてフワリと浮き上がる間隔を感じた。それに驚いた時、何かが眩しく光り、目を瞑った。
次に目を開けた時はシースクエアが遠くにあり、周りはのどかな平原だった。すごいな、これがエデンの転移魔法って奴なのか。これがあったら奇襲とかメチャクチャ便利だろうな。
クレアは頭を下げ杖を持ち直す。
「シースクエアから北西ってとこか。暁の大地ってのはどこにあるか分かるのかい?」
「はい、アルトラントの首都から南東。この道を真っ直ぐ行けば木々が生い茂る森に辿り着き、その中に草木の生えない乾燥地帯に辿り着きます」
そこが暁の大地。そこでルーシェルは継承できるんだな……
ライナが腰からダガーを抜き、俺も背中に抱えていた剣に手をかける。この道は人の手入れがなっていない草原だ。動物たちに遭遇する可能性が高い。大人しい奴ならいいけど、人を襲う動物もいるからな。
俺とライナで何とかしなきゃいけない。それにしても見渡す限り平原だけど、本当に辿り着くんだろうか?
文句を言っても仕方ないので、俺達はひたすら歩くしかなかった。
転移魔法はある程度、移動先の場所をイメージしなければならないらしく、アルトラントの地理を知らないクレアは暁の大地がどんな場所か分からずイメージができないんだそうだ。
だからここから先は完全な徒歩。馬でもあればいいんだけどな。
人のいない草原を4人だけで歩く。俺とライナはともかく、ルーシェルとクレアは体力がなさそうだけど大丈夫なのか?
「そうだドリン、森を探してきてくれ。北西の方角だよ」
ライナがドリンを空に放ち、情報を歩きながら待つ。
ルーシェルは時々俺に話しかけてくるけど、やっぱ緊張しているからなのか、黙っている時間の方が多い。それもそうだよな……
それから4時間近く、俺達は真っ直ぐ平原を歩き続けた。
――――――――――――――――――――――――――――――
「一丁上がり!」
「よっと!」
ライナが獣にナイフを投げ、俺がとどめを決める。
全く地味に凶暴な動物が多いよな。これだから手入れされていない場所を歩くのは骨が折れるんだよな。
クタクタになったルーシェルのお陰で歩くスピードは格段に遅くなっている。でも今の状態じゃ休憩する場所も見つからないしなぁ……
その時、ドリンが戻ってきてライナの肩にとまる。何か見つけたんだろうか?
「ライナ、コノ先、森アル!」
「そうか!でかしたぞドリン!」
ライナに褒められてドリンは少し得意気だ。でも森があるって事は今歩いてる方角は間違ってないんだろうな。まだ視界では確認できないから、今日中には辿り着かないだろう。とりあえず適当な場所で野宿するしかない。
日が傾くまで歩き続け、巨大な岩がいくつも転がっている場所を発見し、そこで夜を明かす事になった。ルーシェルはクレアに任せ、俺とライナは食料を調達しに平原に向かう。とは言っても獣を狩るだけだけどな。
狩ってきた獣の肉をさばいて火を起こす。火があれば動物は怖がって近寄ってこない。
見張りは俺とライナでこなす事になり、ルーシェルとクレアが寝てしまった後、火の番をしながら周囲を警戒する。
「さて、あたしも寝るかね。3時間後に起こしてくれ。ドリン、お前も寝な」
ライナが頭を撫でればドリンは目を細め横にポスンと座りこんで目を瞑った。本当に人間の言葉が分かるんだな、賢い鳥だ。
皆が寝静まった中では火のパチパチと言う音以外は何も聞こえない。辺りは真っ暗で、自分たち以外の動く物体は見えない。
番をしながらぼんやりと考えた。シースクエア……船の間から一瞬だけ見えたけど、街の人間の活気はなかった。疲れた様な頬がこけた奴も大勢いたし、子供たちを1人として見つけることができなかった。奴隷政策のせいで子どもを取られた奴らだって中にはいるはずだ。貿易の規制だってされてるし、十分に飯は食えてるのだろうか。
シースクエアはまだ貿易の最大都市なだけマシだ。ビアナからの圧力のおかげで、こんな状況でもまだ他の村よりかは規制は緩い。ここ以外の村はもっと酷いんだ。俺を助けてくれたせいで、故郷サラディスは一番奴隷政策が酷くなりそうだ。そう思うと泣きそうになった。
頼らなければ良かった、そう感じた。
皆を助け出せるのはいつになるんだろう。城の情報は全く手に入らない。セラ達が生きているのかすら俺は知らない、何も知らない。
幼いルーシェルに緑を継承させて、クラウシェルとミッシェルは捕えられて、俺は一体何をしてるんだろう、何の役に立ってるんだろう。せめて俺が緑を継承出来たら……
そうしたらルーシェルを安全な場所に避難させとけられるのに。緑を継承してしまったらルーシェルは戦争に駆り出される。あんなに幼いのに人殺しの世界に強制的に行かされるんだ。
「不安ですか?」
不意に声が聞こえ、顔を上げたらクレアが起き上がってこっちを見ていた。
寝てなかったのか?それとも今起きたのか?
クレアは音を立てずに立ち上がり、俺の隣に腰を下ろした。その表情は無表情で読みづらい。なんだかクレアはセラに似ている。
「不安、だな。国宝石なんて継承していい事なんて1つも無い。なんであんた達はルーシェルを主として認めた」
「私が認めたのではありません。国宝石が認めたのです。彼の意志を国宝石が見定めた」
「寿命が縮まるってどのくらいなんだ?」
「使い様によってです。緑に依存し、力を使いすぎた場合は最終的に20も行かずに命を落とすでしょう。600年前の戦争の英雄で緑を継承したリジアは21で継承し、28で他界しています」
「そんな……」
「だから貴方が王子を守ってください。王子に緑を多用させない様に。王子を狙う全てを貴方が断ち切るのです」
クレアは強い口調で告げた。俺がルーシェルに緑を使いすぎない様にしなきゃいけないんだ。
それは理解できた。
でもどうしてクレアはここまでルーシェルに協力するんだろうか。エデンはファライアンには戦争の際しか協力しないはずだ。
ルーシェルの我侭みたいな事に協力するなんて……
「あんたはルーシェルの事をどう思ってる?」
「……次の英雄、だと思っています。ダレンを世界に再び連れ出せるのは彼しかいません」
「ダレンをルーシェルが?」
「アルトラントの英雄リジアはダレンの恋人。アルトラント陥落にダレンは心を痛めているでしょう。しかし世界に絶望したダレンの心は今は凍りついている。彼の心を再び人間の物にする為に王子が必要です」
「ルーシェルはリジアの子孫なのか?」
「直属ではないでしょうが、そうなのでしょうね。ダレンは未だに目をそむけている。神様の椅子を手に入れた彼は、その椅子に縋る訳でもなく、ただそこから世界を見つめているだけ」
ずっと思ってたけど、神様の椅子って何なんだ?エデンの村長もダレンは神様の椅子から世界を見ていると言っていた。クレアも同じ事を言っている。
「なぁ、神様の椅子って何なんだ?」
「……ダレンは英雄、言ってみれば神の様な存在だった。私利私欲なく皆の平和の為だけに戦い続け、その結果手に入れた物が神様の椅子だった。彼の言う事を全ての者が聞く……ですが英雄は次第に時が過ぎ、神のように名だけを残して忘れ去られる」
神様の椅子って言うのは、英雄の立場の事を皮肉めかして言っているだけにすぎなかったようだ。神様の椅子に座ったダレンは神のように崇められた。いるようでいない存在のように……そう言いたかったんだな……
「それとダフネ様、ルーシェル王子の友人にはお気を付け下さい」
急なクレアの言葉に目を見開く。ルーシェルの友人ってライって奴の事か?
ルーシェルが自慢げに話してた。何でも知ってる頭のいい友達だって。早くメリッサの双子の弟のヨルンとネルンに紹介したいって意気込んでたから。
確かファライアンのバーカー地方出身の子だって言ってたよな。
「ライって奴の事か?バーカー地方出身の子って聞いたけど」
「……あの少年の出身はバーカー地方ではないでしょうね。偽りを言っている可能性が高いです」
「なんで……」
「彼の行動や言動から推測しているだけなので、確実な情報とは言えませんが」
マジかよ……でも城の中に来てたんだ。それなりに身分の高い奴だろう。
だとしても嘘をつくなんて……
「それに彼からは少し不思議な感じがしました」
「不思議?」
「私達に敢えて偽名を名乗ったり、幼いながら馬の扱いも心得ている……ファライアンの首都からエデンまでたった2人で来たと言うのにも驚きましたが、私の転移魔法についての知識も持っていました。ライと言う名は偽名の可能性もあります」
「偽名……何で使う必要があるんだ」
「分かりません。ですが本人は恐らくいくつかの状況に合わせて偽名を使っている節があります。本名を晒せない立場の人間なのかもしれません」
本名を晒せないって言われたら重罪人か王族、貴族ぐらいしかいない。
でも身分を隠すにしてもルーシェルと同い年の幼い子供がする事なのか?クレアが嘘を言っている感じは無い。だとしたらライって奴は何者なんだ?
もしかしてファライアンの人間じゃない可能性だってあるっつったら、バルディナか?パルチナなのか?スパイ活動でもやってるのか?
クレアはそれだけ告げて、頭を下げて再び自分が寝るスペースに戻って行った。考える事が出来てしまったお陰で眠気が覚めてしまった。
いいんだか悪いんだかだな……
――――――――――――――――――――――――――――――
ライナと見張りを交代しながら、その日の夜を明かし、日が登り始めた時間にルーシェルとクレアを起こして4人で再び歩き始める。
眠くて歩こうとしないルーシェルを抱き上げて黙々と歩く。
一向に景色は変わらなかったが、そんな事を3日近く繰り返していると、目の前に森が見えてきた。あれがそうなのかもしれない。
森の前に辿り着いたけど、どうやって暁の大地に向かえばいいんだ?
その時、ルーシェルが手に持っていた国宝石が輝きだした。国宝石の光はまっすぐ森の中を指している。
「光に添えって事なのかい?怪しいが行ってみるしかないね」
「そう、だな」
ルーシェルが息を飲んだのを感じる。俺達は頷き合って森の中に足を踏み入れた。
深い森の中は小動物や草食動物たちの隠れ家になっている。鳥や小さな動物たちが突然の侵入者に慌てて逃げて行く。
それに興奮するルーシェルに苦笑いをして真っ直ぐ進んで行く事5時間。目の前が少しずつ開けてきた。
その先には木が全く生い茂らない乾燥地帯があった。
「ここが……暁の大地」
地面は少し赤みがかった茶色をしており、乾燥している為かパラパラしている。
その中央に神殿の様な物が建っている。
入ろうとした俺達にクレアが立ちふさがった。
「どうしたんだ?」
「警告しておきます。この先には緑の祭壇があります。しかし簡単には継承出来ないはずです、中がどうなっているか分かりません。ご注意ください」
国宝石を守る獣でもいるってのか?まぁありそうな話だけどな。
それに合意して神殿の中に入る。中は広い空洞の部屋で、奥に祭壇が置かれていた。祭壇には読めない文字が刻まれているが、ルーシェルがいるからそこは問題ない。
「国宝石を捧げ誓え、我が命を捧げて継承者とならん」
ルーシェルが俺達に振り返る。この祭壇に国宝石を埋め込んで誓いの言葉を言えば継承出来るんだ。
頷いたのを見て、ルーシェルが宝石を祭壇の中央のくぼみにはめる。国宝石が緑色に輝き、神殿がゴゴゴと音を立てる。
慌てて後ろを振り返ったけど扉は閉められていない。万が一の時は逃げられそうだ。
ルーシェルが俺達の所に下がって、息を飲む。そして声を出した。
「我が命を捧げて継承者とならん」
その瞬間、祭壇から光が溢れかえった。その光は俺達を飲みこみ、眩しさに目も開けられない。
とりあえずルーシェルを手元に引き寄せ、光が止むのを待つ。
“なぁ、本当に継承するつもりなのか?”
声が聞こえて光が小さくなっていく。恐る恐る目を開けて前を見たら透明な姿になったルーシェルがいた。
驚いて手元を見たら、ちゃんと俺の腕の中にルーシェルはいる。ルーシェル自身も自分そっくりの物体に驚いているようだった。
「クレア、これはどう言う事だい?」
「国宝石を守る意思、とでも言っておきましょうか。どうやら彼に認められなければ無理の様ですね」
“何百年ぶりかな。俺の所に来たって事はゲーティアを探そうとする奴がいるってことだ”
見た目はルーシェルだけど話し方は少しだけガサツで俺に近い感じがする。ルーシェルの姿を借りた何かなんだろうな。
でもこんな魔法みたいな事……これもエデンの仕業なんだろうか。
ルーシェルは国宝石を握りしめて頷く。その姿を見てもう1人のルーシェルは目を細めた。
“お前みたいなガキが俺を継承しようなんておこがましいんだよ。ダレンは許可をしたのか?”
「俺が自分で決めたんだ。大切な人を守る為に俺は戦いたい」
“そう言う綺麗事をどいつも最初は言うんだよ。その意志が黒く染まってくから戦争は無くならない。お前はちゃんとした使い道を知ってんだろうな”
「できるよ。家族と大切な人達を救えたら……」
“……自分の大切な人を救う為に、他の奴らの死を望むって訳か”
ルーシェルが固まる。なんて事言うんだよこいつは!
国宝石の意志?みたいな奴はケタケタ笑ってるけど、こっちは笑いごとなんかじゃないんだ!ふざけるな!
「でもバルディナはアルトラントを侵略したんだ!俺、アルトラントの皆を救わなきゃ!」
“お前が余計な正義感出して戦争起こす方が死人が出る。大人しくしときゃ、奴隷になったとしても死人は出やしねぇわな”
「それは……」
黙ってしまったルーシェル。確かに言われた通りかもしれない。
でも俺達はお前みたいに何百年も生きている訳じゃない。そんな理屈で納得なんかできない。
「でも俺……それでも行かなきゃ」
“なぜだ?大人しくしておくのが最良の道だろう”
「約束したんだ。クラウシェルと……絶対に助けるって。クラウシェルは命を賭けて俺を守ってくれた。今度は俺がクラウシェルとミッシェルを守らなきゃ!」
“……ふん、綺麗事だな。まぁいい、好きにしな。遂に俺で最後か……”
最後?他にもこんな奴がいるって事なのか?
でもクレアに聞いても、祭壇に他の奴がいる気配はないって言ってる。最後って何なんだ?
“他の国宝石の祭壇にも俺の様な宝石の意志が存在する。俺達は継承者が現れる間は消滅して、再び魔法が祭壇に捧げられた際に復活する。残りの祭壇の意志は消えた。最後が俺だったって事だ”
「じゃあ他の国宝石はもう継承されてるの?」
“あぁ、赤は600年前、黒は30年前、青は8年前、紫は5年前にな。遂にゲーティアが復活する準備が整った”
ゲーティアが現れる。ばるでぃあが血眼になって探している禁断の魔術書。
600年前の世界大戦を勝利に導いた魔術書が……
「どう言う事だ?」
“継承者達が現れた事でゲーティアは封印を解かれた。そしてそれを手に入れた時にお前達継承者にかけられた魔法の一部を吸収し手に入れた者に渡す。そいつが次の英雄だ”
「ば、場所は!?どうやったら探せる!?」
“そんなの言うかよばーか。じゃあな”
国宝石の意志は透けていなくなり、一筋の光がルーシェルの心臓を貫く様に中に入って行った。
怪我は無い様だけど……でもこれでルーシェルは緑の継承者になった。俺が支えなければルーシェルは寿命をすり減らす。
俺がルーシェルの盾にならなければ。
「さて、今から歩いたら余裕でシースクエアに帰れるね。どうする?」
「どうするって帰るに決まってんだろ」
「俺、アレキサンドリアに行きたい」
ルーシェルの言葉に全員が固まった。意味を分かってるのか?
「王子様、それは危険だよ。言ってみりゃ敵の巣窟だ。バルディナ皇帝イマニュエル・ネイサンやジュダス・ネイサン、マライア・ネイサンもアレキサンドリアに駐屯する。見つかったら笑い話にならない」
「それでも行きたいんだ」
ルーシェルは強く言うけど賛成はできない。でもテコでもここから動かなさそうだ。
その時、黙っていたクレアが口を開いた。
「私はお供しましょう」
「クレア」
「私の転移魔法があれば、いざという時に役に立ちます。私の力をお使いください」
確かにクレアがいたら逃げ切れるかもしれないけど……転移魔法の連続使用は駄目って言ってたし距離の問題もあるって……無理をさせる事になるかもしれない。
でももしかしたら、僅かな可能性だけどミッシェルとクラウシェルを助けられるかもしれない。クレアさえいれば……
セラ達の様子も確認したい。生きてるのかどうかを。
もう意見を言う奴はいない。
あと3日後には国王と后の処刑のはずだ。それまでに間に合うかは分からないけど行くしかない。
アレキサンドリア付近には行った事があるらしく、近くの村になら転移魔法を使えるとクレアは言った。連続使用は控えてほしいけど、仕方ない。
ミッシェルとクラウシェルはライナの話しでは軟禁状態。こんな言い方悪いけど、国王と后の処刑の時は外に出してもらえるはずだ。
その時に……駄目もとだとは分かってる。少しの隙があれば……
次に向かう場所はアルトラント王都アレキサンドリア。
何が待っていようとも、逃げる事なんてできない。