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神様の椅子  作者: *amin*
一章
4/64

4 ミッシェルとかくれんぼ

「ミッシェルあいつ嫌い!ルーシェルもそう思うでしょ?」

「俺は遊んでくれるからダフネ好きだよぉ~」

「僕も嫌いではないな。好きでもないが」


最近クラウシェルの御世話係いじめがピタッと止まった。

ルーシェルは素でうるさいから今でもダフネを困らせてるみたいだけど、クラウシェルは今まで意図的に相手をいじめてきた。

使用人のほとんどがクラウシェルの嫌味に耐えれなくて止めるのだ。

でもそのクラウシェルが今回の御世話係は気に入ってる。なんで!?



4 ミッシェルとかくれんぼ



「クラウシェルまでどうしたの?あいつが他の御世話係より優秀なの!?」

「少なくとも今までの世話係は剣を使えなかった。そこだけ見れば優秀だ。僕をお前と言ったり敬語を使わないのは気に食わないが」

「ダフネ肩車して走ってくれるんだよ~すっごく高いんだよ」

「うるせぇルーシェル!黙ってろ!」

「うああぁぁぁああん!ミッシェル怖いよぉ゛~~!!」

「ルーシェルに当たるなよ」


クラウシェルに注意されて舌打ちした。

なんな訳?御世話係とかいらないし。御世話係のせいで時間は拘束されるし、あいつは口うるさいし礼儀もなってないし、クラウシェルもルーシェルもあいつの何がいいのかさっぱり分からない。

こうなったら試してやろうじゃない。

あいつが私の御世話係に相応しいのかどうかを!


―――――――――――――――――――――――――――――――――――

「ダフネ、これは命令よ。今日は私の買い物に付き合いなさい」


仁王立ちして上から言ってやれば、ダフネは嫌そうな顔をする。

御世話係の癖に何よその顔は!?元から格好良くないんだから更に不細工な顔するんじゃないわよ!


「勝手に外行って大丈夫なのか?1国の姫様が」

「そんなの私には関係がないわ!周りが気になるのならあんたが周囲に許可をとりなさい!」

「ぐっ!こいつ……」


誰がこいつよ!あんたにこいつ呼ばわりされたくないわ!

粗を探して解雇に持ち込んでやらなきゃ……御世話係なんていらない。私は好きにやる!

ダフネは困ったように辺りを見渡していると、私達の近くに城のコックが通りかかった。

おかっぱ頭のこの女は何回か私達に夕飯を持ってきたから、顔は覚えてる。

名前は知る必要がないから覚えてないんだけどね。


「あ、サヤカ!なんか俺ミッシェルの買い物付き合わなくちゃなんなくてさ、セラに言っといてくんないかな」

「えぇ?それはいいけど大丈夫なの?1国の姫様を軽々城の外に出しちゃいけないでしょ」


これだから嫌なんだ。

私だって城の外を好きに歩き回ったって罰は当たらない。姫様だからって何で自分の国を歩いたらいけないの?

城なんてもう遊びつくして今更おもしろい物なんて存在しないのに!

でもダフネは分かってくれない。やっぱりその程度の御世話係なんだ。


「あーやっぱそうか。ミッシェル、今日は無理だな。今日セラに聞いて交渉してくるよ」

「……んの役立たず!!」


ダフネの足を思いっきり蹴れば、ダフネの痛がる声が聞こえて、それを背中に受け止めながら走って逃げた。

ダフネの怒声が聞こえたけど、そんなの無視。役に立たないあんたが悪い。


「くっそ!あのじゃじゃ馬め!」

「あんた姫様によくそんな口きけるねぇ。あたしだったら無理だわ」

「いや、あのコラッドに消臭剤ぶっかけてるあんたの方が強いと思うよ」

「……」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――

実は知ってる。この城には穴があるって。

王族が逃げる様の通路から外に出られるんだよね。パパに教えてもらった誰も知らない通路、抜け道の鍵も鍵職人にこっそり作ってもらってるから持ってるし。

実際ここから何度か外に出た事があった。

ダフネに連れて行かせるつもりだったから、外行きの格好をしてたし今の私は完全に街の人間なんだ。

まぁこの高貴なオーラは隠せないけど、まさか姫が1人で城下町に行くと思われないから怪しまれない。

もう沢山だ!私は私の好きにする!!


―ダフネside――――――

「ミッシェルがいない?」

「はい、ダフネはご存じないですか?夕食の時間になられても戻ってこられないので……」

「国王と后は知ってるのか?」

「いえ、お二人とも会議中なので夕食は王子と姫だけで取られる予定です。城の中ならば国王に言う必要もありませんし……ミッシェル様がいなくなるのは良くあることですので」


ミッシェルの奴どこ行ったんだ?

とりあえず探してみるか。城の中なら色んな奴に聞けばいいしな。

セラも一緒に行くと言ったので、俺とセラは二手に分かれて城内の者に聞いて回る事にした。


「え?姫、見てないな」

「見てないのか」


食堂には来てないみたいだ。コラッドもサヤカも知らないって言ってる。

イワコフも見てないって言ってたし、ミカエリスも知らないって言ってた。そして相変わらず喧嘩売ってくるミカエリスを沈めてきた。

他にも使用人にも聞いて回ったけど見てないって言うし、兵舎の方にはいくらミッシェルでも入ったら駄目だから行ってないだろうし、一体どこにいるんだ?


「ダフネ!」

「あ、セラ!ヤコブリーナスにジェイクリーナスも!」


城の半分を回ったのか、セラがヤコブリーナスとジェイクリーナスを連れて食堂に走ってきた。

ヤコブリーナスはかなり息切れしてるけど大丈夫か……?


「見つかりましたか?」

「いや、聞いて回ったけど誰も見てないって」

「こちらも目撃情報がありませんでした」


どこにいるんだよミッシェルの奴は!

焦っている俺にサヤカが顔を真っ青にさせてポツリと呟いた。


「ねぇダフネ、まさか姫様外出たんじゃ……」

「え」

「だって今日外出たいって言ってたじゃん。わざわざドレスから普通の服に着替えてさ、行けないってダフネが言ったらキレてたし……まさか」


そのまさかであってほしくない。

コラッドも流石の事態に顔を青くさせているし、セラも眉を動かしている。ジェイクリーナスも口を開けてあんぐりしてるし、ヤコブリーナスなんかポックリ逝きそうなくらいヤバそうな顔してる。

でももしかしたらそうかもしれない。

まずい!探さなきゃ!


「俺、マリアとミリアに聞いてみる!」

「私も行きます!」

「お、俺も行くぞ!姫様がいなくなったってなったら打ち首覚悟だ~~!」

「縁起でもない事を言うな馬鹿もんが!」


「コラッド、あたしらどうするんだい?」

「まぁ世話係に任せよう。まだ決まった訳じゃねぇ、俺達が首突っ込む訳にもいかねぇよ。とりあえず食いに来てる奴らの飯を作ってからだ」

「あいよ。まずあんたは手を洗えよ」


4人でバタバタ廊下を走り回ってる俺達を皆が驚いて視線を送ってる。

でもそんな事を気にしてる余裕はない。今この状況はすごくヤバい。

もしミッシェルが外に出てて、本当に何かあったら、俺はジェイクリーナスが言った通り、打ち首は確実だ。

そんな事どうでもいい。いつもの我侭と思ってた。

でも連れていってやれば良かった!ミッシェルはまだ幼いんだ。城に閉じ込められて外に出られないなんて不満なのは当たり前だ。

もっと真面目に話を聞いてやればよかった!

後悔しても仕方ない。今はミッシェルを探さないといけない。


「そう言えばヤコブリーナス達はいいのか?俺達に付き合って」

「わしら庭師は夜になったら仕事は無いからの!それよりも早く探さんと!」

「そうだよな!おーいマリア!ミリアー!」


見えてきた2人の少女門番にありったけの声で叫ぶと、聞こえたのか振り返った2人は全速力で走ってくる俺達に悲鳴を上げた。

逃げようとした2人を捕まえて、話を聞こうとしたけど、流石に息切れして上手く話せない。


「あの、さ!姫見なかった、か!?」

「姫?ミッシェル様?マリア見た?」

「いやー見てない」


見てない?でも城の中はくまなく探したんだ。

色んな奴に聞いて目撃情報すらない。外に出たとしか考えられない。

矛盾だらけの状態に全員の焦りが更に加速していく。


「ダフネ、どうすんのさ」

「……俺は外に探しに行ってみる。お前らはもう1回城探してくれ!」


そのまま走って城の外に出た俺に、マリアとミリアが状況を良く分かってないのか、のん気な言葉を投げかけて来る。


「門は21時には閉めるわよー」

「野宿になる前に帰りなさいよー」


―ミッシェルside―――――

今日もよく遊んだな。そろそろ夕飯の時間だから家に帰ろう。

そう思ってポッケに入れたはずのカギを探したけど、鍵がない事に気付いた。


「あれ?あれあれ!?」


どこに入れたっけ!?カバンの中も探したけどない。ポッケもひっくり返したけどない。

顔の熱が引いて行く。このまま真っ直ぐ門から帰ったら抜け出した事がばれる。そしたらパパにすごく怒られるし、もっと見張りが厳しくなる。

どうしよう探さなきゃ!でもどこに落としたのかも分からない。

あれは城の内部に繋がってる鍵なのに!誰かに拾われたらどうしよう!


「う、うぅ……」


目に涙が溜まっていく。

誰も助けてくれない。1人で来たから。我侭な事したから天罰が下ったんだ。どうしよう、どう帰ろう。

助けてくれる人を思い出そうとしても浮かんでくるのは生意気な御世話係だけ。

1人で暗い中、鍵を探すのも怖いし、このまま真っ直ぐ帰るのも怖い。


「うあぁあああん!ダフネ――――!!」


思い切り御世話係の名前を呼んで泣いた。

周りの人が「どうしたの?」って声をかけてくれたけど、それすらも無視して泣いた。

だって私はお姫様だからバレたら駄目だもん。他の人に助けを求めれるはずないよ。

次第に泣いてる私の周りに人が集まり、いつのまにか人だかりが出来ていた。


―ダフネside―――――

どこにいるんだミッシェルは……

城下町の人通りが多い市場の方に足を運ぶ。市場は夜市をやっており、夜なのに人は結構多い。

人混みをかき分けて周りを見ながら進んでいくと、人垣が出来ていた。

その中央からは泣いている女の子の声が聞こえる。しかも時々自分の名前が聞こえる気がする。

耳をすまして聴くと、間違いない。この声はミッシェルの物だ。やっぱり外に出てたんだな!

怒りよりも見つかった方の安心の方が大きくて、俺は人垣の中に飛び込んだ。


「見つけたぞ!我侭娘が」


頭上から言ってやれば、ミッシェルが真っ赤になった目で俺を見上げてきた。

何で泣いてたのかは知らないけど、俺を見て安心したのか、更に泣き出して俺にしがみついてきた。


「遅い!もっと早く来てよ!」

「無茶言うなよ。抜け出したくせに」


泣き続けるミッシェルを抱き上げて城に向かって歩いて行く。

城下町の人ははぐれた迷子の子だと思ってたらしく、俺がミッシェルを抱き上げた瞬間、安心して、人垣は徐々になくなって行った。

そのまま2人で城に向かって歩いてる間、ミッシェルとの会話は無い。

でもポツリと小さい声でミッシェルが呟いた。


「……パパに言う?」

「ん?」

「この事。勝手に抜け出した事」

「言わないよ。大事になる前に見つかったんだから」


俺も甘いのかな。でもミッシェルの気持ちが分かるから言うのは可哀そうになった。

こんなに泣くんだ。反省はしてるんだろう。


「俺こそごめんな。お前中々外出れないんだな。気づいてやれなくてごめん」

「ダフネ?」

「今度はちゃんと許可とって、クラウシェルとルーシェル連れて皆で遊び行こうな」

「……ん」


でもミッシェルの話を聞いて、結局もんから戻る事を余儀なくされた俺は仕方なく門から戻ることにした。

その後、門から戻った俺をマリアとミリアが驚いて焦ってたけど、ミッシェルが抜け道のカギを持ってるって発言が波乱を呼んだ。

結局国王にばれてミッシェルは大目玉をくらった。てか国王がミッシェルを抱きしめて放さなかったらしい。

ミッシェルが全て悪かったからという理由で俺への御咎めは無し。助かった……

1時間後、顔に髭の後をくっきりつけたミッシェルをクラウシェルが爆笑して殴られていた。

しかも失くした鍵は財布の中に入ってたと言うオチだ。でもまぁミッシェルも反省してたし、俺が怒る事は無いけどね。

ホッと胸を撫で下ろしたセラ達にミッシェルは頭を上げて、ご飯を食べに向かった。


「ダフネ」

「ん?」

「合格にしてあげる。私の御世話係として」

「なんじゃそりゃ」

「ふふふ」


ミッシェルが俺の手をとって軽く走り出したからこけそうになったけど、慌てて後をついて行った。

良く分からないけど、ミッシェルが幸せそうだからいいか。


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