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神様の椅子  作者: *amin*
四章
37/64

37 大使到着

「おっエデュサ間にあったな。片づけは部下にやらせて早く来い!」


ファライアンに戻った俺達を待ってたのは黒髪の青年の姿だった。船をゲートに入れて、まだ荷物すら降ろしてないのに、無責任な事を言ってくる青年をアルシェラは軽く睨みつけた。



37 大使到着



「なんなのハーヴェイ騒々しいわね。あんたこの状況見ても分からないの?」

「んな事知るかよ。それよりエデンとヴァシュタンから使者がきた。議員も参加するし、俺達騎士団の団長は全員参加だ。1人でも抜けてると不味い」

「何時から?」

「夕方からだ。一応軍服新しいの着とけよ、血がついてたら洒落になんねぇぞ」

「分かってるわよ」


そうか、ヴァシュタンとエデンから使者が来たのか。

正式な使者が来たってことはファライアンとエデンとヴァシュタンが協力するって事を世界にアピールすることになるのと同じだ。

その情報は勿論バルディナやパルチナ、東天にも届くだろう。

俺も参加していいと言われて、ファライアンの軍服に着替えてくるよう言われた。なんだかファライアンに服従した気分だが、まぁ形上はそうなるんだろうな。

軍服に袖を通し、キチッと襟元を直した後、俺は女王の間に向かって足を運ばせた。



「何よ……肝心の女王がいないじゃない……最低ね、どうしようもないわ」

「ファライアンの最高権力者はどうした。この歓迎は余りにも無礼な気がするが?」


女王の間には既に通された2人の男女が顔をしかめていた。

片方はエルネスティだ。どうやらヴァシュタンの駐屯大使はエルネスティに決まったようだ。隣のいかにもダルそうなオーラを醸し出してる女がアルシェラって奴かな?エデンの駐屯大使だよな。

2人とも女王の間に通されたのに、肝心の女王がいないことに眉をしかめている。確かにこの歓迎は異例だ。でも事情が事情だ。女王が出せるわけがない。

俺は騎士団団長達が立っている場所に移動し、エデュサの横に足を運んだ。


「やっぱり納得いかなさそうだな」

「まぁ歓迎されてると言えないからね……気持ちは分かるけど、あの状態の女王を出すわけには行かない。それに……」


エデュサがちらりと視線をよこした先には数人の代表議員の姿があった。

確かに議員の前に女王は出せないよな。議員全てって訳じゃないはずだろうけど、議員の中には女王を売ろうって考えてる奴もいるんだ。大事は取っておくべきだろう。

ルーシェルは大丈夫だろうか?結局まだ会えずじまいだけど……

議員の眼が光る中、代表議員とジェレミーが協定書を渡し、アルシェラとエルネスティがそれにサインをする。

あっさりと終わったけど、これで協定は結ばれたんだ。ひとまず安心と言うべきなのか?

でもアルシェラが周囲に視線を送った後、代表議員とジェレミーを険しい表情で見据えた。


「女王は結局姿を現さないの?国と国との協定よ。使者が相手国まで来てるんだから姿を現すのが礼儀のはずだけどね。オルヴァー、ファライアンの礼節はこんな物なの?」

「今は女王を出せる状況じゃない。口が過ぎるぞアルシェラ」


オルヴァーが睨みつければ、アルシェラは不愉快そうに鼻を鳴らしてそっぽを向いた。

その姿を議員達は歯がゆそうにし、ジェレミー達に憎しみの篭った視線を向けている。

居心地が悪いのか、エルネスティは肩をすくめて、早速部屋を要求してきた。そして俺に案内しろとまで言ってくる。

ローレンツに部屋の場所を教えられて、エルネスティと一緒に部屋を出て行く。

やっと開放された気まずい空気からエスネスティは一息ついた。


「おっかねぇ国だなファライアンは……」

「今は色々やばいことが重なってるんだよ」

「例えば?」

「どこで誰が聞いてるか分からない。今は明言は避けとくよ」

「そうか……しかしとんでもない所に来ちまったな。こんな事ならイースとジェシカにやらせれば良かったよ」


まぁエルネスティの気持ちも分かる。戦争の危機が迫ってる状況で同盟国がギスギスしてたんじゃな……どうやってファライアンをまとめていけばいいんだよ……


「ダフネ、この間の話、調べたか?」

「え?あ、いや……色々忙しくて」


そうだ、思い出した。ヴァシュタンにランドルフとレオンと向かった日、エルネスティとクラーリアに呼び止められて話を聞いたんだ。

エルネスティ達から調べて欲しいって言われてた事を、まだ全然調べてなかった。

忙しくてそれ所じゃなかったからな。

俺の返事に項垂れたエルネスティはガシガシと頭を掻いた。見た目が恐いオーラを放ってるこいつが不機嫌そうな顔をしただけで、結構恐い。


「そうか、まぁいいさ。自分の足でここまで来たんだ。自分自身で調べるか」

「マクラウドの話だよな」

「あぁ、マクラウドの王子がファライアンに紛れ込んでるって話を聞いてな。少し気になってたんだよ」


マクラウドから侵入者か。でも今のファライアンだったら侵入者なんかゴロゴロいるように感じる。

議員や騎士団が手引きすれば、国に侵入するのなんて容易いんだから。

はぁ……祖国奪還とゲーティアを探す手立てを見つけられないまま、ややこしい事にばっか巻き込まれてるよなぁ。

でもマクラウドの人間が紛れてるってなったらスパイなのか?マクラウドはパルチナ領土内の国。下手な行動してパルチナの目に付くことだけは避けたいはずだ。


「お前さ、まだゲーティア探そうとしてんのか?」


エルネスティの急な問いかけに肩が跳ねた。いきなり聞いてくるもんなんだからさぁ。

とりあえず部屋まで案内して中に通して鍵をかける。やっと安心して話せる気がするな。


「探すよ。アルトラントを救うためにはそれしかない」

「ゲーティア探さなくともファライアンが味方についてくれたんだ。いい線行くんじゃないのか?」

「俺もそう思ってたけど……今のファライアンは内紛寸前だ。とても戦争できる状況じゃない。それにバルディナ自体が国宝石を解読してゲーティアを手に入れようとしてる。それを阻止しなきゃ」

「はぁ……あるかどうかも分かんねぇ宝に読解できない文字が書かれた宝石……そんなもんの為に膨大な金かけんだよなぁ。金の使い道間違ってるぜ」


エルネスティの言葉にハッとした。確かにゲーティアの存在だけを信じてたけど、本当に存在するのか?数百年前の書物なんてとっくに風化して読めなくなってるんじゃないのか?

そもそも国宝石自体本当にゲーティアの隠し場所を指してるのか?ルーシェルは本当に読み手なのか?

考え出したら嫌なほうにしか思考が行かない。考えないようにしないと頭がやられそうだ。

とりあえずエルネスティに部屋を使ってくれ、とだけ伝えて部屋を出ようとドアに手をかけた。


「信用すんなよ他人なんかを。勿論俺も含めてだ」

「え?」

「ヴァシュタンは平気で裏切るぜ。生き残る為ならな。仲良く共倒れなんて考え、俺達には存在しねぇんだからよ」


エルネスティの言葉に何も返せなかった。国を潰さない為にはヴァシュタンは平気でファライアンも裏切る。そう忠告したんだろう。

正直言ってありがた迷惑だ。今の状態で更に考えさせるような事言わないでくれ。そうでなくとも、今の状態が良くなくて考えることが山積みだってのに。

部屋を出て、何となく議員達と騎士団がにらみ合う部屋に戻りたくなかったから、これを機にルーシェルに会いに行こうと思い、女王の部屋に足を運ばせた。


誰も見られてないことを自分なりに確認して箱庭の中に入る。扉をノックしたら人のいい笑みでメリッサが出てきて中に入れてくれた。

でも今回の件で懲りたんだろう。メリッサの表情は暗い。


「イヴさんはどうなんだ?」

「落ち込んでる。なんであんな事言ったんだろうって……押さえが聞かないって誰でもあるはずなのにね」


そう言って目を伏せるメリッサは手につけているミサンガをいじる。

あれ?そんな物つけてたっけか?しかもこれと似たのを見たことある気がする。結構最近。


「メリッサ、そんなのつけてたか?」

「え?あぁ、これはランドルフのだよ。この間くれたんだよ」


そう言って笑うメリッサは少しだけ嬉しそうだ。この2人は知らなかったけど、もしかしてそうなんだろうか。

メリッサは結構おてんばだけど一応貴族の娘らしい。地方貴族みたいだけど……幼い頃からランドルフとは交流があってもおかしくないからな。

メリッサに案内されてルーシェルとイヴさんがいる部屋に向かう。でも部屋の中にいるのはルーシェルだけだった。


「あ、ダフネだぁ!ライナお姉ちゃんは大丈夫だった?ダフネは怪我しなかった!?」


俺を視界に捕らえるや否や、飛び込んできたルーシェルを抱き上げて無事をアピールする。

俺の反応に安心したルーシェルはへにゃりと笑って、俺に擦り寄ってきた。フワフワの髪の毛が首に当たってくすぐったい。


「ダフネ、あのね国宝石ね、ちゃんと訳せたんだよ」

「国宝石を?」

「うん、なんかよく俺には分からなかったんだけどーイヴさんやメリッサお姉ちゃんが分かるから2人に聞いて」

「イヴさんはいないのか?」

「寝込んじゃった。話しかけても返事あんましてくれないんだ……」


俯いてしまったルーシェルをメリッサが慰めた。

やっぱりあの件はイヴさんの心を大きく傷つけてしまったようだ。それも仕方ないだろうな……イヴさんの問題は俺には解決できない。俺なんかよりもメリッサやジェレミー達の方が適任だろう。

ソファに腰掛けて国宝石に事をメリッサに聞くと、お茶を入れて話をすると言って奥に引っ込んでしまった。

隣に座ったルーシェルの頭を撫でて、俺はすぐに待っているであろう国宝石の内容を聞くことに集中した。



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