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神様の椅子  作者: *amin*
三章
30/64

30 崩壊は近づいて来る

今日も女王様のイヴさんとお話しだ。国宝石の謎を解き明かす為に。俺がイヴさんの国宝石を読みあげて一緒に考えなきゃ。

そんでその後、一緒にお菓子を食べるんだ。

ニコニコ笑ってるイヴさんはとっても楽しそうで、俺も嬉しくなっちゃう。



30 崩壊は近づいて来る



「ルーシェル君、文字は読めた?」

「待ってね。今から紙に書くから」


イヴさんの持ってる国宝石は俺が持ってる緑の国宝石よりもいっぱい色んな事が書かれてた。だから訳すのにも時間がかかっちゃった。

何とか読み終えて、皆に見てもらうべく内容を書き上げていく俺の横にメリッサさんが紅茶を置いた。

今更だけどイヴさんとメリッサさんは姉妹の様に仲がいい。元々2人は幼馴染らしい。メリッサさんは貴族の娘みたいだけど、こんなお世話係みたいなことして平気なのかな?それを聞いたとき、メリッサさんは笑って頷いた。元々世話好きなんだって。


そんでメリッサさんには2人の弟がいる。双子の兄弟でヨルンとネルンって名前の。2人もここに足を運んでて、俺少しだけ仲良くなったんだ。この間、一緒に遊んだんだよ。

同じ位の年の友達っていなかったからすごく楽しかった!ダフネ早く帰ってこないかな。ダフネにお話ししたいこと一杯あるのに。字を書く練習もう少しすればよかったなぁ。イヴさんの字に比べたらすっごく汚いや。でも読めればいいよね。

出来上がった文章をイヴさんに見せて、出された紅茶とお菓子を食べた。イヴさんは俺が書いた文章を読み上げる。


「青と緑は2つで世界を癒し続けた。そして青と緑が揃いし時、赤への道が開かれる。グルネス諸島に捧げられし色は持ち主を選ぶ。これって……どう言う事なんだろう」

「でもグルネス諸島って、確かマクラウド領土内にある聖地でしょ?」


イヴさんが首をかしげて、メリッサさんも俺が書いた文章を覗き込んで首をひねった。じゃあグルネス諸島に何かがあるのは間違いないんだよね。そこに行かなきゃいけないんだ。

残りの国宝石に書かれてある情報を紙に書き込んでイヴさん達に渡した。


「青は全てを愛し包み込む。青の祭壇は百合の丘に隠された。青が導かれし時、緑も導かれる。緑の祭壇は血で染め上がった暁の大地に死者と共に眠る」

「じゃあイヴが国宝石を受け継いだ時に緑の国宝石の在り処が導かれるって事?」

「多分、国宝石は連動してるんだと思う。1人が国宝石を継承しても誰かが止められるように、封印をかけても誰かが、それを破った際の……」


なんだか難しくてよく分からないけど、繋がってるって事だけは分かった。

イヴさんの国宝石の次は俺の緑の国宝石。俺、あの日以来ずっと考えてた。国宝石の呪い、寿命が縮まってしまう呪い。すごく怖かったけど、でも俺は国宝石を継承したい。

パパとママ達を助けられる手立てはそれしかない。俺がもっと力があったら皆ついてきてくれる。ダフネだって守れる。


「進展はあったのか?」


ジェレミーさんが部屋を訪ねてきた。イヴさんはジェレミーさんに俺が書いた紙を手渡した。

ジェレミーさんはそれを読んで顔を顰める。


「グルネス諸島……そこに何かしらがあるのは分かったが、流石にマクラウドの領土内、近づけないな。それに青の国宝石の後に緑が導かれる。そして緑と青の後に赤が導かれる……どう言う事だ」

「多分、国宝石は連動してるの。誰か1人が力を持った時、止められるように」

「……心当たりはあるが矛盾もある。赤は既に継承されてる。なぜ青と緑の後に赤が導かれる」

「赤は継承されてる?じゃあ東天では国宝石はもう継承されてるの?」


あ、そっか。イヴさんはエデンでの話を知らないんだった。俺も話してないし忘れてたや。

ジェレミーさんも伝えてない。首をかしげたイヴさんにジェレミーさんは1から説明をした。案の定イヴさんは驚いた表情を浮かべ、メリッサさんは座りこんでしまった。


「じゃ、じゃあ英雄ダレンが生きてるって、事……?」

「そう。彼は未だに実質東天を率いているリーダーらしい。東天は秘密主義だから俺も今まで知らなかったよ」


イヴさんは驚いて固まってる。そうだよね、俺だって良く分からなかったけど、すごくびっくりする事なんだって思った。

何百年も昔の英雄が今も生きてるんだ。その人がいてくれたら、きっと皆付いて行くと思うのに。

でもジェレミーさんも国民にすっごく信頼されてる。きっと大丈夫。いいなぁ、俺もこんな風になれるのかな。クラウシェルならなれるかな?あ、でも駄目だ。クラウシェルは剣持てないもんね。頭はすっごくいいんだけど。

そんなクラウシェルが俺を助けてくれる為に命をかけてくれた。いっつも俺を馬鹿にしてたけど、助けてくれた。クラウシェルとミッシェルを今度は俺が助けなきゃ。


俺は国宝石を継がなきゃいけない。寿命が短くなるなんて考えてる場合じゃない。

守ってくれてるダフネや皆に恩返ししなきゃ。パパとママを助けなきゃ。


「ダレンさんに会えないかな。ダレンさんならゲーティアの場所、知ってるはずだよ」

「東天が今の体制を変えてくれない限りは国内に入る事も許されないだろうな。東天は観光も一切受け入れない」


完全な鎖国体制だ。どうしたらダレンさんに会えるのかな?俺はゲーティアを見つける為にダレンさんに会いたい。青と緑の国宝石を手に入れても黒と紫、赤の国宝石が無いとゲーティアは手に入れられない。

でももしかしたら緑と青の国宝石に書かれてるグルネス諸島にゲーティアが隠されてるのかもしれない。

でもどうやって探していいか分からない。


「ジェレミー、この国宝石はグルネス諸島って書かれてあるけど」

「おそらくそこにゲーティアの手掛かりがあるんだろうな。もしかしたら青と緑の国宝石でゲーティアの隠し場所、黒と紫の国宝石にゲーティアの探し方を書いてるのかもしれない。そして赤が全てを繋ぎ合わせる……」

「じゃあジェレミーの予想だと、やっぱりダレンさんに会わないとどうしようもないのね」


メリッサさんとジェレミーさんが話している間、俺とイヴさんは国宝石をただ眺めていた。

こんなガラス玉の様な物が宝の地図なんて……


「おいジェレミー!来い、やべぇ事になってっぞ!」

「どうした」

「いいから来い!」


慌ててるのは第4軍団の団長グレインさんだ。慌てているグレインさんを見て、ジェレミーさんの表情が変わる。

ジェレミーさんはイヴさんと俺、メリッサさんに謝りを入れて、グレインさんの後をついて行ってしまった。

残された俺達によぎったものは不安。グレインさんがあんなに慌ててるのはなんで?

イヴさんも不安を隠しきれてない。メリッサさんに視線を向けている。


「メリッサ、今国はどうなってるの?教えて」

「ごめんねイヴ、あたしも詳しい事は知らない。本当よ」

「……そっか。ごめんなさい」

「イヴ……」


メリッサさんが震えているイヴさんを抱きしめてあやしているのを、俺は何もできずに見てるしかできない。

ダフネ早く帰ってきて。

やっぱりダフネがいないと怖い。何をしてても怖い。

ダフネとライナお姉ちゃんが側にいないと、途端に一人ぼっちに感じてしまう。

早く、早く……


-ジェレミーside―――――

グレインはかなり慌てているようだった。イヴがいるからなのか、その場で理由を教えようとはしない。家を出て、人が通っていない場所をあえて選んで歩いている。本当に一体何があったんだ?


「どうしたんだグレイン、何を慌ててるんだ?」

「ローレンツが密使文書を発見した。議員の処刑で事なきを得るつもりだが、彼らはイヴをバルディナに売り渡す気だ。国宝石と一緒にね」


驚きは来ない。それよりもやっぱりそうか、という感覚だった。元々議会は怪しいと睨んでいたから。でもローレンツによってそれが表面に浮き彫りになった、それだけだ。


「やっぱりそうか……」

「それだけじゃないんだよ。彼らの中にエデンの人間が紛れ込んでいる。正確にはエデンを出て行ったはみ出し者だが、彼らは転移魔法のスペシャリストらしい」

「……」

「ローレンツは事をでかくしたくないらしいから、一部の議員にしか伝えないみたいだけど、このままじゃ不味い気がする。何とかして手を打たなければならない」


エデンの奴らまでも手懐けて、そこまでしてイヴをバルディナに売りたいのか……それならば確かに何か手を打たなければならないが、問題は誰がこんな事をしたかだ。

ローレンツが事をでかくしたくないと言うからには、それなりに議会では地位の高い奴なんだろう。でもそれは予想外の人物だった。


「議員は誰だ」

「リューツ議員だ。若手の筆頭だよ」

「リューツ?マジで言ってんのかよ……」

「あぁ、女王に対する不信感は若手の議員を中心に広まってる。仕方ないよな、女王が姿を出さなくなったのは8年前だ。若手の議員達にとっては女王の姿を見た事ない奴が多いからな」


そうか、クーデターからもう8年も経ったんだな……あれ以来イヴはあの場所に幽閉され一歩も外に出ていない。

鉄の女王等という名まで付けられて、女王の姿を見た事の無い奴も大勢いるはずだ。リューツ議員もその1人なんだろう。彼は5年前に30歳で議員になった。女王を幽閉した後だからな。

でも若手の筆頭であるリューツ議員が裏切ったとなると、国内は荒れる。ローレンツも城内の人間だけで広まるのは押さえたいんだろう。


「青の国宝石は民衆を魅了する力……その状態で不満が広まってるなら女王の精神が今は不安定だからだろうな。国宝石の力も弱まっているのかもしれない。女王自身が議員に対して不信感を募らせている。なんとかしなければ、イヴの精神が崩壊したらファライアンでまたクーデターが起こるぞ」

「こんな事言いたくはないが、不安は民衆にまで広がってる。俺達騎士団と議員が対立してるって。またパルチナの情報操作じゃないかって噂まで出てパルチナに対する嫌悪感も膨れ上がってる。このままじゃファライアンは内部から崩壊する」


過去のクーデターの傷跡がまだ完全に取り除けていない今、国民の嫌悪感はパルチナまで行っている様だ。元々ファライアンはパルチナとクーデターの件以来、国民感情はいいとは言えない。

だが、今回の件でパルチナは関係ない。それでも色々情報が飛び交った結果、国民感情によってパルチナまで飛び火している様だ。だからと言って真実を知らせたら議会に対する不満がマックスに行くだろう。裏切っている議員は一部だ。彼らのせいで他を巻き込むのは気が引ける。


「ここで俺達が表立った処刑に出れば、賛同する市民と俺達を非難する市民にわかれるだろうな」

「そんな事言ってる場合か。奴のあれは反逆行為だ。証拠を見せれば市民も黙る」

「100%の人間を信じさせる事はできない。小さな綻びは大きな枷になって俺達に返ってくる」

「じゃあお前はどうしたいんだよ!?わからないよ!俺にはお前がリューツを庇ってるように見える!」


大きな声に驚いて目が丸くなった。グレインは焦っているんだ、今の状況が過去のクーデターを思い出させて。また俺達騎士団が国民を弾圧してしまうかもしれない事を恐れてる。

でもグレインの目が殺気だっているのを感じて後ずさりした。もしかしてこいつは……最悪の事態を望んでる?ファライアンの崩壊を早まらせる事態を……


「俺はそんなつもりじゃ……」

「何が違うんだ!言っとくがあいつの処刑は絶対に行う!議員達にもそれ相応の対応はとってもらう!あいつの仲間は全部皆殺しだ!」

「グレイン……」

「元から評議会の奴らは信用できなかったが、今回の件ではっきり分かった。俺達騎士団が国を動かすしかない!評議会の奴らは全て追放すべきなんだよ!」


なぜ今まで気付かなかった?

少しずつ騎士団は女王に魅了されていっていることに……女王に騎士団は愛された。そしてその影響が少しずつ出始めていることに。

その目に宿っているのは狂気か、忠誠か。

女王の為、国の為と言いながら他を弾圧する。その姿はかつての騎士団を彷彿させた。


狂って行く。この国も、何もかも……



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